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コレットはオスカーの為にレイチェルの相手のことを調べる為、一生懸命館の中を走り回っていた。
そして廊下を急ぐあまりに注意を怠って、出会い頭に人とぶつかってしりもちを付いた。

「っきゃあ!ご・ごめんなさい!!」

慌てて立ちあがりぶつかった相手を見ると、それはアリオスだった。
コレットの顔が見る見るうちに朱に染まる。

「いや君こそ大丈夫かい?ずいぶん慌てているんだな。」

アリオスは以前レヴィアスに犯されかかった娘であるのに気付かないのか、それとも気付かない振りをしているのか、コレットに特別な言葉を掛けなかった。
それがコレットには少々ありがたくもあり、寂しくもあったが今はただポーっとなりながら何度も頭を下げて謝っていた。

「本当にアリオス様すみませんでした。お怪我などありませんか?」

滑稽なほどパタパタと慌てふためくコレットにアリオスは噴出しそうになった。

「心配しなくても大丈夫だよ。でもこれからは気をつけろよ。」

笑いながらそう言ってアリオスは、片手を上げてコレットの前から去って行った。コレットはと言うとそんなアリオスを熱い視線でいつまでも見つめていた。

 

アンジェリークは、自室のベットで子犬のランディの頭をなでながら一人呟いていた。

「ねえランディ、あなたはどう思う?あの方って本当いい方だと思わない?もちろん最初は怖かったわ・・・。だってそうでしょ?お義姉様があんな男と罪を犯してしまった原因は私にあるんだもの。私にもう少しだけでも強さがあれば、あの方をあんなにも哀しませることもなかったと思うとどうしても震えてしまうの・・・・。駄目よね・・・私。」

小犬はアンジェリークの呟きなどお構いなしで、おなかを見せて甘えている。
アンジェリークもそんな小犬をなでながらの頭の中ではオスカーのことばかり考えていた。

 

暗い部屋の中でレヴィアスは冷めた目つきで闇を見つめていた。
ドアを叩くノックの音がして一人の男が入ってくる。

「レヴィアス様お呼びですか。」
「キーファ・・・わかっているな。」

レヴィアスの言葉にキーファと呼ばれた男は残忍な笑みを浮かべる。

「お任せ下さい・・・・。」

そしてキーファは部屋を一礼して出て行った。
レヴィアスは闇の中で満足げに微笑んだ。

 

翌日オスカーは庭で花を摘むアンジェリークを見つけた。
今日の彼女はバラを片手に微笑んでいた。
昨日感じた時と同じようにオスカーは胸の高鳴りを覚えた。
本当に笑顔は彼女を美しくする。
オスカーは、はやる気持ちを押さえつつ彼女に近寄った。

「麗しのアンジェリーク嬢。バラも君の前では色あせる様だな。」
「オ・オスカー様!」

オスカーの登場にアンジェリークは、つい嬉しさがこみ上げて頬を染めて振り向いた。

「お嬢さん?今日はこの私に森を案内していただけないかな?」

突然のオスカーの申しこみにアンジェリークは一瞬戸惑ったが、すぐに恥ずかしそうにうなずいた。

「この森には結構美しい場所も多いのです。私でよければそちらをご案内致しますわ・・・。」

その返事にオスカーも優しく微笑んだ。
そして二人はオスカーの愛馬に乗って森へ遠乗りに出かけた。
以前森を通った時はその薄暗さが気になったオスカーだったが、今日はなぜか以前のような暗さを感じなかった。
頬を染め微笑むアンジェリークを乗せているせいなのか、今日はなんだか清々しくも感じられた。

「しっかり俺に捕まっているといい。まあ君を落とすようなドジは踏まないだろうがな。」

オスカーの言葉にアンジェリークは遠慮がちにそっとオスカーの胸に寄り添った。
彼女のきらめく美しい髪からはふんわりと花の香りが漂った。
オスカーは抱きしめたい衝動に駆られたが、彼女の臆病さからまた怯えさせはしないかと思い思い留まった。
それは少々オスカーにとっては苦痛なことだったが。
アンジェリークはオスカーの胸に頭を持たせかけ、彼の鼓動を感じていた。
力強い逞しい胸からは規則正し鼓動が聞こえる。
その音はなんとも言えず彼女を暖かい気持ちにさせるのだった。
二人はそうして森の美しい風景を眺めながらしばらく森を散策した。
そしてあの運命の出会いをした泉へとやってきた。
今日は美しく輝く泉は、あの衝撃的な出来事があった場所であるとは感じさせない趣だった。

「俺は最初、君は森の精霊じゃないかと思ったよ。」

オスカーはそっとアンジェリークの肩に手を掛けた。
アンジェリークは驚いた様にオスカーを見つめ瞳をしばたいた。

「でも君が精霊なんかじゃなくてよかった・・・。人間だからこそこうして君に触れることが出来る。」

そしてオスカーはもう片方の手でアンジェリークの頬にそっと触れた。
アンジェリークの体に電流が流れる。
体中に流れるその甘美な刺激は彼女の心をとろかせて行った。
うっとりとその瞳を閉じるアンジェリークにオスカーの顔がゆっくりと近づいた。
その唇と唇が触れるかというその時、二人の前に大勢の男たちが突如現れたのだった。

 

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