HAPPY BABY

「うあぁ!アンジェ、ヨシュアを頼む!」

夫のオスカーの叫び声で、アンジェリークは急いでやっていた洗濯物のかたずけを放り出して駆けつけた。
オスカーは真っ白の綿シャツの胸の辺りをつまんで、情けなさそうにアンジェリークを見つめた。

「ヨシュアの奴俺におしっこを引っ掛けやがったよ。」

ソファーに座っているオスカーの横には小さな丸い頭を癖のある燃えるような赤い髪に縁取られ、大きな翡翠のような目をくるくるさせてはしゃいでいる赤ん坊がいた。

「まあ。ヨシュア。パパにおしっこ引っ掛けちゃったの?」
「こいつ、絶対俺に挑戦してるんだ!」

母親に抱かれてうれしそうに声を上げる赤ん坊を恨めしそうににらみつけながらオスカーは毒づいた。
そんな様子を楽しそうに見つめながらアンジェリークは微笑んだ。
オスカーはまだぶつぶつ言いながらおしっこで汚れたシャツを脱いでいる。
アンジェリークはその間に赤ん坊のオムツを返る為にベビーベッドに赤ん坊を寝かせた。
ヨシュアはうれしそうに手足をばたつかせ、母親に何を言っているのか解からないがしきりにアウアウと声をあげてはしゃいでいた。
そんな様子を横目で見ながらオスカーはいたずらっぽく赤ん坊に呟いた。

「おい!俺の奥さんを口説くんじゃないぞ!ヨシュア。」
「まあ!オスカーったら。ヨシュアはあなたじゃないんだからそんなことしませんよーだ!ねぇヨシュア。」
「おいおい!それは無いぜアンジェ。俺は君と出会ってからは誰一人口説いてやしないんだから。知ってるくせに意地悪だなァ奥さん?」

くすくすと笑うアンジェリークを後ろから抱きしめながらオスカーが言うとアンジェリークは優しく自分に回された腕に手を重ねた。

「オスカー。私幸せよ。あなたがいて、ヨシュアがいてもう何も望むものなど無いわ。」

幸せそうに目を細めるアンジェリークをオスカーは自分の方に振り向かせて優しくくちづけた。
そんなオスカーに今度はアンジェリークが腕を伸ばしてそのたくましい首筋にまわした。
二人の抱擁は次第に深く熱いくちづけに変わってゆき二人だけの世界に没頭していった。
そんな両親の都合などわかるはずも無いヨシュアは、母親が抱き上げてくれないので次第に不機嫌そうに手足をばたつかせて主張していたが、一向に気づく様子の無い二人に号を煮やして抗議の声を上げた。
ヨシュアの声に我に返ったアンジェリークはオスカーに背を向けて慌てて赤ん坊を抱き上げた。

「ごめんねヨシュア。寂しかったの?」

取り残された格好のオスカーは空になった腕が寂しそうにいままであったはずの形をかたどっていた。

「やるな!ライバル!」

オスカーは今はもうアンジェリークの腕の中で幸せそうに声をあげているヨシュアの鼻先を突っつきながら、恨めしそうに呟いた。
そんな夫の言葉に微笑みながらアンジェリークはそっとオスカーの耳元で慰めるように呟いた。

「続きはあ・と・で。」

真っ赤になってる妻の顔をうれしそうに眺めながらオスカーは笑った。
うれしそうな二人の顔を見てヨシュアも幸せそうな声をしきりに出していた。

「いつまでも続けばいいな。」
「続くさ。俺が君を幸せにしてやるよ。」

これはそんな幸せなある家族の風景。

 

END