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アンジェリークがジュリアスと恋仲になったとみんなの間でうわさになっていたのだが、アンジェリークにはこれら恋仲であるのかよくわからないでいた。
アンジェリークは確かにジュリアスを好きで恋している、それは間違いのない事実だったがジュリアスはどうなのであろうか。
ジュリアスに告白したとき、ジュリアスは言った。

「女王候補として、まずはその責務を果たせ。ロザリアがこのまま女王の器であれば、おまえは補佐官として聖地に残り、私の妻として迎えよう。だが、ロザリアが女王の器にあらず、おまえが女王の器であったならばおまえは女王になるがよい。」

彼の返事はアンジェリークの望んだものではなかったが、今ひとときでも彼の近くにいられるのなら、彼の恋人と呼ばれるのなら、彼のその答えを受け入れようと思った。
こうしてアンジェリークは愛するジュリアスの傍にいることを許されたのだった。
そしてジュリアスの傍にいることは、アンジェリークが女王候補として全力を尽くさねばならないということだった。
ジュリアスは、ジュリアスのそばにいたいからといって責務を放棄してわざとロザリアに負けるというようなことを許すはずがなかった。
そのために気持ちとは裏腹に女王になるための努力をしなくてはならなかった。
それはアンジェリークにとってはとても辛いことだったが、ジュリアスに嫌われるよりはましだと思っていた。

 

ジュリアスにとってこの世で1番大切な事とは、それは自分の責務である光の守護聖として、守護聖の首座として女王陛下にお使えすることだった。
アンジェリークが自分に告白してきたとき、ジュリアスは正直、彼女の気持ちを受け止めるだけの自信はなかった。
確かに彼女は魅力的だし、恋人にして何の不満もなかったが、いかんせ彼女は女王候補なのだ。
女王陛下に忠誠を捧げる自分としては、女王の器であるかもしれない彼女を自分だけのものにすることにかなりの抵抗があったのだ。
そして今、アンジェリークの話でオスカーの様子が気になっていた。

 

オスカー。
ジュリアスが最も信頼をおく炎の守護聖。
そのオスカーが、自分の話題で話しに詰まるなどということがあるだろうか。
オスカーはたぶん守護聖の中で最も自分のことを知っている者であるはずだ。
私生活の場でも何度となくともに過ごした。
それだけに心にひっかかるものがある。

「何を悩んでいるのだ。」

つい口をついた言葉にアンジェリークがはじけるように声を上げた。

「あ、いやおまえのことではない。」

ジュリアスはそう言うとまた思考の淵に戻っていった。

 

こうしていつまで一緒にいられるのだろう。
あの方の気持ちは計り知れない。
私の思いは本当に届いているのだろうか。

 

アンジェリークの不安はこの頃さらに深まっていた。
なぜなら、女王試験が大詰めを迎えその結果、ロザリアとの差はほとんどなく、若干アンジェリークが先行していたからだ。
このままロザリアとの差がつまらなければ、アンジェリークはジュリアと別れなければならない。
それが最初からの約束なのだから仕方がないと言ってしまえば終わりなのだが、アンジェリークにはいまひとつ納得がいかなかった。
なぜなら、ジュリアスがもし本当に自分のことを好きでいてくれて、愛しているのなら、なぜ自分を女王に推すのだろう。
それはすなわち、自分を愛していないからなのだろうか。
そんな考えが浮かんでは消え、また浮かぶといった具合にアンジェリークの心をかき乱していた。
自分を見てほしい、女王候補としての自分などではなく、一人の女としての自分を。
そんな思いが女王試験が進むにつれて強くなっていく。
もう叫び出しそうなくらいになっているのに、ジュリアスに嫌われたくなくてその思いを飲み込んでしまう。
そんなアンジェリークの思いが、やがて彼女の表情から徐々に笑顔を失わせていた。

 

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