比翼の鳥

 

赤い炎のような髪を梳くように指を滑らせ、そして彼女はそっとくちづけを落とす。
金の髪の天使は愛しそうに恋人の寝顔に見入っている。
彼の端整な顔立ち、閉じられた瞳の色は心を射抜くようなアイスブルーだ。
穏やかな微笑を浮かべていた彼女の表情が不意に曇る。

「いつまでこの寝顔が見られるのかしら。」

そんなつぶやきがもれる。
そう彼女たちは禁じられた恋人達なのだ。


彼女が女王になったときから、この恋は秘められた恋となったのだ。
女王の恋愛は禁じられている。
ここは聖地。女王はこの宇宙を統べる者。
彼女のサクリアによってこの宇宙は支えられている。
彼女のサクリア次第で天変地異をも引き起こしかねないのだ。
それゆえに女王の恋愛は禁じられている。
宇宙の、いや世界の平安のために。
だが二人は出会いそして恋に落ちた。
たとえ女王になったとしてもこの恋をあきらめることはできなかった。
宇宙を乱すかもしれない。でも・・・。

もう一度彼女は愛しい人の髪を指で梳いた。

「アンジェ。 どうしたんだ?」

彼女の瞳はいつしか涙で濡れていた。
目を覚ました恋人はそんな彼女を優しく抱き寄せた。

「オスカー。愛してるわ。」

二人は硬く抱き合いお互いの体がいっそ溶け合ってしまえばと思った。
明るい日差しが二人の秘密の恋をを白日の元にさらしてしまうまでのほんのひとときの幸福に二人は酔いしれていたかった。

「アンジェ。君だけを君だけを愛している。この愛のためなら破滅してもかまわない。」
「オスカー。私だって同じよ。このまま二人でどこかに消えてしまえたらどんなに幸せかしら。」
「消えてしまえたら・・・。」

二人は互いを見つめた。
逃げることができるのだろうか。
一瞬希望の光を見たかに見えた二人だったがすぐにその一筋の光は途絶えてしまった。
二人は前よりもさらに硬く抱き合った。

「もう夜が明けるわ。オスカー私は大丈夫だから。」

涙を浮かべる彼女にそっとくちづけて彼は身支度をして窓に向かった。

「アンジェ。俺達は比翼の鳥だ。互いが居なければ生きて行けない。」

振り向きざまにそう言うと彼は窓から去っていった。
彼の去ったその部屋はまるで廃墟のような静けさで、彼女の胸を締め付ける。
彼がまた訪れるまで、彼女の哀しみは癒えることは無い。

 

             END