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それからの毎日はアンジェリークにとって心休まる日がまったくなかった。
教室ではランディが、保健室ではオスカーが、執拗にアンジェリークを狙っていた。「どうしてこうなっちゃったのかしら。」
アンジェリークは女子トイレで溜息とともに呟いた。
「そんなのあんたがどちらか選んじゃえばいいのよ。」
隣でリップクリームを塗りながら、親友のロザリアがいった。
「選ぶ?」
「そうよ。どっちが好きなのアンジェ?」
「どっち?そ・そうねえ。」
「あー!イライラするわねぇ。あんたさあ敵をいっぱい作っちゃってるだから、オスカー先生か、ランディか早く決めちゃいないよ。」
「う・う〜ん。」鏡を前に真剣に悩むアンジェリークを見て、お手上げ、といったふうにロザリアはため息をついた。
「あんたさぁ。じゃあどっちがいなくなったら寂しいか考えてみなさいよ。」
そうアドバイスをすると、ロザリアは手をひらひらさせてトイレを出ていった。
「どっちがいなくなたら?」
ロザリアが言ったことをもう一度口にだしてみた。
アンジェリークはランディがいなくなったら、そりゃあ小さい頃から兄弟同様に育っていたので寂しいと思うと思ったが、オスカーが自分の目の前から消えてしまったら。
オスカーはいつもいつも自分が恥ずかしくて気を失ってしまうようなことを言ったり、したりするけれど、そのたびに胸のドキドキが高まっていくのがわかった。
そんな彼がいなくなったら、自分の今の生活は平安になるかもしれないけれど、それはどんなに寂しいだろう。「やっぱり私はオスカー先生の刺激が快感になってしまっているのかしら。」
思わず顔がほてってくるのがわかる。
安心と刺激、どちらを選ぶかと言われれば、アンジェリークは思わず刺激を選んでしまいそうでちょっぴり怖かったけれど、なんだかオスカーという刺激だったらそれもいいかもしれないと思った。
その日の放課後。
保健室に足を運んだアンジェリークを、極上の笑みでオスカーは迎えた。「やあ。お嬢ちゃん。当番以外の日にこの保健室を訪ねてくれるとは、さては俺に惚れたかな。」
いつもの台詞に今日のアンジェリークは、顔を赤らめながらもコクリとうなずいた。
そのアンジェリークの無言の返答に、オスカーは思わず顔が真っ赤になった。
感激のあまり、ふるふると震えて真っ赤になっているオスカーの様子が、あまりにもかわいらしく思えてアンジェリークはとろけるような微笑みを見せた。「辛抱たまらん!お嬢ちゃん!」
オスカーはハートが体中から飛び出しているかのような表情でアンジェリークを抱きしめてそのやわらかな金髪にほおずりした。
オスカーに抱きしめられてドキドキが激しくなったアンジェリークは今度は思い切ってオスカーの背に手を回して抱きついた。「ああ!お嬢ちゃん。俺がどんなにうれしいがわかるかい?このときをどれほど夢見ただろうか。愛しているよ俺のアンジェリーク。」
そう言うとアンジェリークの顎に手をかけて上向かせ、その桜色に輝く可愛らし唇に口づけた。
徐々に深く激しくなるくちづけに、アンジェリークは腰が砕け、焦り力が入らず、へなへなと床にずり落ちかけた。
オスカーがそれをしっかり抱き抱えてアンジェリークをキスから開放すると、「本当にお嬢ちゃんは可愛い。今すぐにも食べちゃいたいくらいだ。」
と耳元にささやいた。
アンジェリークは顔から火を吹くかのごとく顔を赤らめて、頭をふるふると横に振ると、「私、刺激的なオスカー先生が大好き。でも今はこれ以上の刺激に絶えられそうにないの。だから少しずつにしてくださいね。」
と上目使いでオスカーを覗きこみ、お願いした。
その愛らしさにオスカーの心臓は爆発寸前。「お嬢ちゃんのお願いなら聞かないわけにはいかないな。」
そう言ってからアンジェリークを抱きしめると、
「でも、もう少しこうしていような。」
といって彼女を抱き抱えた。
「オスカー先生。大好きよ。」
アンジェリークはそう言ってオスカーの頬にキスをした。
オスカーは顔を真っ赤にして照れ笑いを浮かべたのだった。
こうしてアンジェリークの刺激的な学校生活は、アンジェリークの愛らしい仕草や、瞳に忙殺されっぱなしのオスカーの刺激的学校生活になったのだった。
ランディがそれから毎日泣き暮らしたのは言うまでもない。
ご愁傷様……。
END
悪乗りの創作「保健室はドキドキ」はいかがでしたか。
いつもかっこいいオスカー様を書いてるんだけど、今回のオスカーは子供の様にカッコ悪いです。
それでもまあまあ楽しんで書けました。
シリアス物が多い中コメディ物は初めてで、要領が得ませんが、そこは温かい心でよんでね。
それでは次回の連載までお楽しみに!