復讐に抱かれて
復讐・・・・。
俺はこの為だけに今、生きていると言っても過言ではないだろう。
そう・・・あのすべてを失ったあの日から、今日までそれを果たす為に俺の人生のすべてを賭けてきたのだ。
あれは一生忘れる事の無い出来事だった。
今から10年前・・・・そうあれは俺がまだ15の夏だった。
熱い夏の太陽が照りつける、眩しいまでのこの季節に悲劇は起こったのだ。
俺の家族は父と母、そしてまだ10歳になったばかりの妹の4人家族。
その日、俺の両親は朝からそう・・・少し変だった。「オスカー、ジュリア。今日は湖にみんなで行かないか?」
いつもの様に家族で朝食を取っていたその席で、父はおもむろにそう口を開いた。
俺達家族は非常に仲が良く、両親は俺達兄妹を連れて、山や海に出かける事はよくある事だった。
その日も俺は、いつもの父の家族サービスなのだろうとそう思っていた。
妹は家族で出かけるのが大好きで、その日も父の提案を無条件で喜んでいた。
もちろん俺も父の提案に異論があったわけじゃない。
母の顔がちょっとその時沈んでいる様に思えたのがちょっと気になっていたが、父の提案にすぐに賛同した。
父はにっこりといつもの様に笑ったが、その笑みは今思うとちょっと哀しそうだったかもしれない。
そうして俺達は父の持つキャンピングカーに乗って、いつもの様に週末を楽しむために出かけたのだった。
父は貿易の会社を経営していて、我が家はまあ裕福な家庭だったと思う。
俺自身、生まれてこの方お金に関する苦労と言うものはした事は無かった。
まあ俺はこの時15歳で、まだジュニアハイスクールに通っていたのだから、使う金などたかが知れていたが、それでも友人達の間では金持ちの部類だったと思う。
家も町の高級住宅街の一角にあったし、学校も私立の有名学校だった。
この時は夏休みの真っ最中で、一般の15歳の少年の様にバイトに行ったり、サマーキャンプに行く事も無かった。
いつも俺達クラスの家庭の少年達は、夏休みを友人宅のホームパーティーや、家族で出かける長期リゾート地への滞在くらいが夏の間の予定なのだ。
ところが、今年は友人宅のホームパーティーには俺は行っていたが、毎年出かけていたリゾートの予定がいつまで経っても父の口から発表される事は無かった。
そんな中で今朝、突然のこの家族イベントを言われて少々戸惑う部分はあったが、父は普段の休日にも良くこのような提案をしていたので、この日も俺は自分の疑問に別段注意を払う事は無かったのだ。
車はいつも週末に家族でよく行くキャンプ地の湖に向かっていた。
道中妹は、楽しそうにおしゃべりをしたり、歌を歌ったりとはしゃいでいた。
俺も妹のはしゃぐ姿につられて道中を楽しく過ごしていたが、両親は何故か少々上の空と行った感じの受け答えだけをして黙っていることが多かった。
キャンプ地に近ずき、山間の切り立った車道の下に青く輝く湖が見え始めた。
車道は山肌に沿ってくねくねと曲がり、車道の山の反対側は切り立った崖になっていて、10mぐらい下に深い水をたたえた湖が広がっていた。
俺は美しく光る水面を見たくて車の窓を開け、夏の太陽に照らされてキラキラと涼しげに光る湖を眩しく見つめたその時だった。「オスカー・・・ジュリア・・・・。すまない・・・。」
父が重い口調でそう言ったかと思ったら、突如父は車のハンドルを大きく切って俺が見つめていた湖に向かって車を躍らせた。
ガードレールをぶち破り、大きな衝撃と共に家族を乗せたキャンピングカーは、真ッ逆さまに湖に飛びこんだ。
さっきまで外を眺めていた窓から大量の水が車中に流れ込み、俺はパニックに陥った。
後ろで、妹のジュリアの甲高い悲鳴が聞こえた。
車は見る見るうちに物凄い勢いで沈んで行く。
父は運転席で、助手席に座る母をしっかりと抱きしめていて、二人はまったく逃げる様子は無かった。
俺は息が苦しくなる中、窓から車の外へと飛び出した。
すぐさま振り返り、ジュリアを助けようとキャンピングカーを見たが、重いキャンピングカーはもの凄い勢いで沈んで行ってすでに俺の位置から遥か下にあった。
沈み行く車の窓に一瞬白い小さな妹の手が見えたが、沈む車の勢いでその姿もすぐに俺の視界から消えて行った。
俺はこの信じられない出来事にすっかり我を忘れていた。
息苦しさから水面に向かったが、途中で息が切れて俺は意識を失ったのだった。
次に俺が目を開いたのは白い病院のベットの上だった。