哀しい夢

 

私は夢を見る。
それはかなわぬはかない夢。
バルコニーの下で愛しい人が私を呼ぶ。

「アンジェリーク!」
「さあ迎えにきた。俺と一緒に逃げよう!」

ああ!なんてあまやかな誘い。
彼についていこう!彼しか私にはいない。
そうよアンジェ行くのよ!自分に言い聞かせて私は叫ぶ。

「オスカー!私を受け止めて!」

私はバルコニーから身を乗り出す。そして愛しい彼の胸へ。
私たちは熱い抱擁を交わしくちづける。
彼のたくましい腕に抱かれ私の心は歓喜に震える。

「さあ行こう!君と永遠の地へ。」
「オスカー。」

私の夢はいつもここで終わり。ありえないはかない夢。
私はくるはずの無い彼を待ちつづけるこのバルコニーで。



不意に背後から声がかかった。

「陛下。また何を憂いておいでなのですか?」
「いいえ。何でも無いのよロザリア。心配しないで。」

彼女はほんとに心配そうだ。私が壊れはじめているのがわかるのかしら?
私はあの日から壊れ始めているのだ。あの忘れられない運命の日から。
バルコニーの下にあの人がやってきた日から。

今でも記憶は鮮明だわ。
あの人の表情さえもこんなにもはっきりしている。
哀しそうに微笑んだあの顔を忘れることはできない。

「アンジェリーク!俺と一緒に逃げてくれ!」

彼の、オスカーの叫びに私は答えられなかった。
宇宙を捨てていくことが私にはできなかった。
私はバカだ!彼はサクリアの枯渇のためにもうこの聖地にいることがかなわないというのに!
ああ!なぜ私は彼を選ばなかったのだろう。
彼のいない世界など何の意味も無いというのに!

彼はこんなバカな私を許してくれた。
私のことをこんなに愛してくれたのは彼だけだ。

「さよならアンジェ。宇宙を選んだ君を誇りに思うよ。永遠に君を愛しているよ。」

最後の言葉だけが私の中でいつまでもいつまでもこだまする。
愛しい人よ。あなたのいない世界はまるで死んだようです。

私は哀しい夢を見つづける。この命が尽きるまで。



                END