翌日、アンジェリークは出仕するのがつらかった。
ロザリアの顔を見るのがつらかったのだ。
いったいどんな顔をすればいいというのだろう。
そんな思いで聖殿内を歩く彼女に声がかかった。

「補佐官殿!」

振り向くとそれは王立研究所のエルンストだった。
彼は少々青ざめた表情で近ずいてくる。
そんな彼にただ事ではないと感じたアンジェリークは、いったん自分の思いを押しのけた。

「どうしました、エルンスト。」
「大変です。旧宇宙の崩壊に伴って、新宇宙に影響は出ないと思われていましたが、辺境の惑星WP−104に崩壊の余波のせいで旧宇宙に引き込まれかけています。このままではWP−104周辺の惑星にも影響しそうです。」

アンジェリークは顔を手で覆うようにして驚いた。

「大変だわ!すぐ女王に報告を!」

報告を受けた女王は悩んでいた。
WP−104は辺境の惑星で、女王のサクリアの影響が届きにくい状況になっていた。
直接WP−104に行きサクリアを送りこめば問題無いが、女王が聖地を離れることはできない。

「陛下。私が参ります。」

アンジェリークは女王に申し出た。

「アンジェ。でも、とても危険なのよ。とてもあなたを行かせられないわ。」

女王は金の髪の補佐官をとても愛していた。
ゆえに危険な場所に彼女を送り込むことに躊躇していた。

「ロザリア。お願い!このままではWP−104は旧宇宙に引き込まれて崩壊してしまうわ。それに、WP星系もその影響を免れないのよ。」

彼女はなおも詰め寄る。

「人々を犠牲にはできないわ!行かせて。」

彼女の真剣さに打たれた女王はフーとため息をついた。

「わかったわ、アンジェ。でもあなた一人では行かせられないわ。誰かあなたの補佐をつけますからね。」

女王はこれだけは譲れないという眼差しで彼女を見つめた。
女王の思いやりをうれしく思いながらアンジェリークはうなずいた。

 

アンジェリークはすぐに準備のために退席した。
女王はその後すぐに守護聖全員を召集した。

「事情はもう聞いてるわね。そこで、アンジェリークの補佐としてWP-104に誰か言ってもらわねばなりません。」

そこまで言うと一同の中から一歩歩み出るものがあった。

「あたしが行くわ。」

夢の守護星、オリヴィエは何か決意するような面持ちで女王を見つめた。

「女王、私も参ります。」

今度は赤い髪の炎の守護星、オスカーが歩み出た。

「わかりました。二人に行ってもらいましょう。」

女王は満足げにうなずくと二人を見つめ、

「アンジェを頼みましたよ。彼女に何かあったら許しませんからね。」

と、二人に釘をさすと席を立って退席した。

 

女王が去った後、夢の守護聖と炎の守護聖を残した他のものは謁見の間を去った。
残された二人は互いを見つめた。

「オリヴィエ。なんだって志願した?」

オスカーは夢の守護聖の真意がつかめず彼を眺めた。

「アンジェをほっとけないだけよ。あんたはどうして?」

片方の眉を上げてオリヴィエはオスカーを眺める。

「彼女は俺の恋人だ。当然だろう。」

そんなオスカーの答えにオリヴィエは眉間にしわを寄せる。

「彼女以外の誰かを思ってる奴が言う台詞じゃあないわね。」

その言葉にオスカーの表情は固まった。

「どうして・・・。」
「あら、当たり?アンジェは何もいわなかったけど、泣いてるあの子を見ればそんなとこでしょ。」

オリヴィエの声には刺があった。
オスカーの胸はアンジェリークのことを思うと痛かった。

「とにかく、誰か他の女を好きなあんたにはアンジェを任せられないってことよ!あの子を守るのはあたしだからね!」

オリヴィエはそれだけ言うとオスカーの元を去って部屋を出た。
突然のオリヴィエの宣戦布告にどうしたら良いのかわからなくなってしまったオスカーは、ただ一人呆然と立ち尽くすしかなかった。

 

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