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別の部屋で、まんじりともしない雰囲気で見詰め合う二人の男達がいた。
オリヴィエは少々苛立ち気味にオスカーに毒づいた。

「ねえ、あんたさあアンジェのことどう思ってんのよ。まさか遊びのつもりじゃあないわよねえ。」
「遊びじゃない。」
「じゃあ、その胸の中にいるって言う女のことはどうなのよ。」
「彼女には振られた。」
「じゃあ何よ!あんたったら振られた相手をねちねち思ってアンジェを苦しめてるってわけなの!」
「そうなんだろうな。」
「もう何よ!あんたわかってて彼女を苦しめてるってわけなの?」

声を荒げるオリヴィエに向かってオスカーは、返す言葉が浮かんでこなかった。
苦渋を浮かべて黙り込んだオスカーを見て、オリヴィエはあきれ返るような目でオスカーを眺めた。

「俺だって彼女を悲しませたい訳じゃない。」

やっとのことでオスカーは言葉を搾り出した。

「じゃあどう言う訳よ。」
「彼女は傷心を抱えた俺を救ってくれた。まさにその名のとうり俺にとって彼女は天使だった。だから俺も彼女を大切にしたい。そう思ってはいるんだ。でも俺の傷口は時々その血を噴出し俺を苦しめる。それに気ずいた彼女が今度は傷ついてしまったんだ。」

オスカーはオリヴィエの目をまっすぐに見返すことができなかった。
自分自身の情けなさにいらだったが、どうすることもできなかった。

「で、その傷心の相手って誰よ。あんたを振るってんだから相当な女なんでしょ?」

オリヴィエは探るような目で、オスカーを見ていた。

「それは言えない。」

オスカーは、まだ目をそらしたまま苦悩の表情で、あらぬ方向を見つめていた。
そんなオスカーを見ていてオリヴィエはふと何か思い当たったようだった。

「誰なのか、わかっちゃったわ。」

オリヴィエのその言葉に、はじめてオスカーの目がオリヴィエのそれと重なった。

「陛下なのね。あんたロザリア女王が好きなんでしょ?」

確信を持ったようなその言葉にオスカーは動揺した。
そしてそれがオリヴィエの言葉を肯定してしまっていた。

「あんたったらバカね。」

オスカーはまた視線をそらす。
その様子を見てオリヴィエは言葉を続けた。

「あんた、そりゃあ陛下に思いを寄せたって無駄だわ。」
「そんなこと、おまえに言われなくてもわかっている!」

オスカーは吐き捨てるように言った。

「そんな意味じゃないわよ。」
「えっ?」
「あたしさぁ、偶然見ちゃったのよねぇ。まだ陛下が候補生だったころ森の湖でジュリアスに告ってるとこをさぁ。」
「!!」

オスカーはまるで落雷にでもあったかのようにショックを受けた。
ロザリアに思い人がいようとは思いもしなかったのだ。
そしてそれは、自分が尊敬してやまない光の守護聖だという。
オリヴィエはなおも続ける。

「それでねぇ、ジュリアスったらさ。ロザリアに自分のために生きるよりも宇宙の人々のために生きてほしいなぁーんて言うのよ。バッカよねぇー。自分もロザリアのこと好きな癖してさ。でもまっ、そのおかげであたしはアンジェに迫れるってわけよね。」

オリヴィエの告白は、オスカーを打ちのめすには十分だった。
あのジュリアスは、自らの欲よりも宇宙の人々のことを第一に考えた。
そしてこれからも、ずっと彼女を影ながら支えることで、彼なりの愛を示しているのだろう。
そしてそれを知っているからこそ女王は女王らしくあんなにも輝いているに違いなかった。
そんな哀しいまでの美しい愛に比べ、自分はどうだ。
自らの欲を満たしたいがためにあえいでいるだけではないか。
そんな女王に自分が振られるのは当たり前のことだったのだ。
そればかりか、あんなにも優しい天使のようなアンジェリークを自分は傷つけてしまった。
オスカーは自分のおろかさに自笑するしかなかった。

 

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