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女王がサクリアをオスカーの中から取り除いている頃、オスカーは果ても無い夢の中を漂っていた。
夢の世界はなんとも言えない不可思議な世界だった。
ふわふわと漂っていたオスカーの意識に突如はっきりしたヴィジョンが現れた。
それは忘れもしないロザリアの姿だった。
オスカーは突然の愛しい女の出現に動揺した。
そんなオスカーにロザリアは、微笑を浮かべ手を差し伸べた。「さあ、参りましょう。オスカー様。」
ロザリアはオスカーに語り掛ける。
オスカーはそんなロザリアを見つめたまま呆然としていた。「いったいどこへ行くのです?女王。」
オスカーは自分の手を引いてどこかへ誘おうとするロザリアにたずねた。
「まあ!何を言っているのかしら。これから私達の結婚式じゃあありませんか。」
輝くような笑顔でロザリアは答えた。
オスカーはその笑顔のまぶしさと答えに戸惑った。(どうゆうことだ?ロザリアと俺が結婚?)
わけもわからずロザリアに手を引かれていくうちに、いつのまにかそこは結婚式会場だった。
そして二人は純白の衣装をまとい真っ赤なじゅうたんを祭壇に向かって歩いていた。
まだ戸惑いを隠せないオスカーの目に哀しそうにオスカーを見つめるアンジェリークが映った。
その姿を見てしまったオスカーはその歩みを止めた。
不信な面持ちでオスカーをロザリアは見つめた。
オスカーの目線には淡い桜色のドレスに身を包みその美しい瞳に涙を浮かべ参列者の群れの中に立っているアンジェリークに向けられていた。
アンジェリークは今にも壊れてしまいそうな儚さで、哀しげにオスカーに微笑んだ。「結婚おめでとう。オスカー、ロザリアと幸せになってね。」
こらえきれなかった涙がアンジェリークの頬を伝い落ちた。
オスカーの胸は締め付けられ、頭の中はアンジェリークでいっぱいになった。「オスカー様。さあ祭壇へ参りましょう。」
花嫁であるロザリアが、いつもオスカーを魅了してやまなかった美しい笑顔で呼びかけた。
オスカーはロザリアの方を一瞥する。「ロザリアすまない!俺は、俺はアンジェリークをこのまま一人にできないアンジェリークのところへ行かせてくれ!」
オスカーのその言葉に今度はロザリアが哀しみの表情を浮かべた。
「私を愛していたのではなかったのですか?」
ロザリアの憂いを帯びた眼差しにオスカーの心は揺れ動いたが再びアンジェリークの哀しげな微笑を目にしてオスカーの気持ちは固まった。
「すまないロザリア。俺はアンジェリークをこのままにできそうも無い。」
そう言うが早いか、オスカーはロザリアの元を駆け出し、参列者の波を掻き分け一路アンジェリークに向かって走り出していた。
だが何故かアンジェリークの元に一向に手が届かなかった。「アンジェリーク!アンジェすまない。俺は・・・俺は君のことを愛している!」
オスカーは大声で叫んだ。
すると突然目の前が真っ白になり、気がつくとオスカーの腕の中に涙に濡れたアンジェリークがいた。「アンジェ。俺はバカだった。君の優しさに甘えるだけで、君に何もしてやれなかった。すまなかった。今きずいたんだ。君を心から愛していると。」
オスカーが倒れてはや1週間。
病室でアンジェリークは憔悴したままオスカーの傍らに寄り添っていた。
すると突然オスカーの指がピクリと動いた。
微かな動きだったが、アンジェリークの瞳はパッと輝いた。「オスカー?オスカー目をあけて!オスカー!」
アンジェリークはオスカーの手に頬に当て泣きながらオスカーの名前を呼んだ。
「アンジェ・・・。」
小さな声でアンジェリークを呼ぶとオスカーはうっすらとその目をあけた。
アンジェリークは歓喜の声をあげるとオスカーの手を握り締めた。
オスカーは涙でぐしょぐしょになっているアンジェリークを見てその手をアンジェリークの頬に伸ばした。「アンジェ泣くなよ。君は笑顔が素敵なのにそんなに泣いたら台無しだろ?さあ笑ってくれ。」
微笑むオスカーの顔を見てアンジェリークは精一杯の笑顔を見せ、
「オスカーよかった。もしかしたら死んでしまうんじゃないかって本当に心配したのよ。でもよかった。本当によかった。」
そういってオスカーにすがりついた。
そして今度は何度も彼に対して謝った。「ごめんなさい。私のせいであなたをこんな目に会わせてしまって。」
「何を言うんだ。俺の方こそ君を苦しめていたというのに。」オスカーはそう言うとアンジェリークを真剣な眼差しで見つめた。
「アンジェ俺はきずいたんだ。俺が本当に愛していたのは君だ。君なんだ。今まで本当にすまなかった。許してくれ。」
オスカーの突然の言葉にアンジェリークは目をしばたいた。
まだ信じられないような表情の彼女を見てオスカーは続けた。「本当だ信じてくれ、陛下を思っていたのは事実だ。でも今は違う!都合がいいと思うかもしれないがきずいたんだ、俺にとって本当は誰が必要なのかを。」
真剣なオスカーの眼差しにアンジェリークは今度はうれしさで涙を流した。
そしてオスカーはそんなアンジェリークを優しく抱き寄せ、今度は心から彼女を幸せにしたいと思った。
END
長い間ご愛読ありがとうございました。やっと片恋もエンディングを迎えることができました。これも皆様のおかげです。
できましたら感想をお寄せください。楽しみに待っております。