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オスカーがいつもと同じように執務に没頭していると、小さな音でドアがノックされた。

「どうぞ。」

オスカーは書類から顔を上げることなく返事をした。
するとドアがゆっくり開き、誰かが部屋に入ってきた気配がした。

「オスカー様。」

鈴を鳴らすような可愛らし声にオスカーは慌てて顔をあげた。
そこには以前のアンジェリークとはまったく異なる可憐な少女が立っていた。
オスカーはあまりのことに声を失って呆然と彼女を見つめた。

「あのぅ、育成のお願いに参りました。」

おずおずと言葉をつづるアンジェリークの姿をオスカーは凝視したまま何かにとりつかれたような声で答えた。

「わかった。でどれくらい力を送ればいいんだ?」

彼女はなかなかオスカーと視線を合わせられないらしく、何度も目を伏せた。
その仕草がなんとも言えず、彼女の長いまつ毛が揺れる度にオスカーの心臓は早鐘を打った。

「たくさんお願いします。」

アンジェリークはそう言うと、まだ夢の中にいるようなオスカーに頭を下げて部屋を退出していった。

 

オスカーは自分が今見たアンジェリークの姿が信じられないような気がしていた。
ただ元気がいいだけだった彼女は、ここ一カ月ぐらいの間にどうしてあんなに変わってしまったのか。
今の彼女はオスカーが知っていた子供ではなく、まるでさなぎから抜け出した可憐な蝶を思わせた。
だが、いったい彼女をこれほど美しく変えてしまったのは何だったのだろう。
そう思ってオスカーは、はたと気がついた。
そうだ、オリヴィエが言っていたではないか。
アンジェリークは誰の色にも染まるのだと。
では誰の色に染められて、あれほど魅力的な少女に生まれ変わったのだろう。
そう考えるとオスカーはなぜか悔しさを隠せなかった。
あれほど魅力的な色に染められるのなら、自分の理想の色に染めたならどれほど魅力的な女性に変わるのだろうか。
オスカーはすっかりアンジェリークのとりこになっていた。

 

「アンジェ。まだやるの?」

オリヴィエがテーブルにひじをついてアンジェリークを眺めた。
アンジェリークは一生懸命鏡に向かってメイクの練習をしている。

「だってオスカー様の好みのタイプって大人っぽい女の人なんでしょ?だったらもっと努力しなくちゃ。守護聖の皆様にいろいろまた教えて頂かなくちゃいけないわ。だから、オリヴィエ様。メイクの仕方これからも教えてくださいね。」

オリヴィエのほうに振り向きながらウィンクを飛ばすアンジェリークにオリヴィエは思わず噴き出して笑った。

「もうあんたには負けちゃうわ。オスカーもあんたが自分の色に染まっているなんて気づいちゃいないだろうね。きっと今頃バラの花束なんて用意しちゃってあんたの部屋に向かっているかもよ?」
「だったらいいんだけど。」

アンジェリークはクスッと笑って肩をつぼめた。

 

そしてオスカーは、オリヴィエの言うとおり大きな花束を抱えてアンジェリークの部屋の前で、彼女の帰りをドキドキしながら待っていたのだった。

 

END

 

「君に気づいたら」はいかがでしたでしょうか。
この作品はいつもオスカーを溺愛しているしのちゃんがアンジェの視点に立って考えた意欲作!(おいおい!)
ちょっぴり冷たかったオスカー様がアンジェにメロメロになる過程が楽しかったです。
頑張るアンジェもとても気に入っています。
今までに書いた作品の中で一、二位を争うくらい気に入っています。(そんなに大したものないけど)
ちょっと短いけれどこれはこれでよかったと思っています。
自画自賛のこの作品の感想をよせていただけたらありがたいです。
それでは次回作をお楽しみに!
PS、次回作は学園物。エロエロ学校医オスカー様と保健委員アンジェのお話です。

 

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