恋は突然に

 

「レディー、私と一曲踊っていただけませんか?」

俺がこのパーティーに出席したのは偶然だった。
たまたま、この主星政府主催のパーティーに出席するはずだったジュリアス様の代理だったんだから。
ジュリア様は突然、辺境惑星の光のサクリアの暴走を抑えるために、執務から離れられ無くなったんだ。
だから急遽、俺が代理としてやってきたってわけだ。
そのパーティーでいつものように俺は、一人の金髪美人に声をかけたんだ。

 

振り向いた彼女を見て、俺は心臓が止まるかと思った。
柔らかな金の髪をアップにして、瞳はまるで翡翠のように美しい緑色で、白磁器を思わせるようなすべやかな白い肌に真っ赤なルージュが、妖艶な雰囲気を醸し出している。
そのまるでマシュマロのように軟らかそうな美しい胸の谷間がまぶしい、大きく胸の開いた官能的なドレスを身にまとったまさに俺の理想の女性だった。
固まる俺に彼女はとろけるような微笑みを見せた。

「レディーって呼んでくださるのね。オスカー様。」
「え?どこかでお会いしましたか?レディー。」

彼女はくすくすと笑った。
こんなに美人で、俺好みの女性を俺が忘れるはずなどないはずなのに……。
俺にはやっぱり彼女が誰なのかわからなかった。
ただあまりの美しさに俺が見とれていて気がつかなかっただけかもしれないが。
彼女はまだ気がつかない俺に、ちょっぴりすねたような表情を見せて、(それもまた俺の心臓鷲ずかみだ。)

「もうお嬢ちゃんって言われなくなって喜んでいいのかしら?」
「…?!…ア・アンジェリーク?」

俺は端から見たらまぬけな顔をしていただろうと思われるくらい驚いた。
彼女はどう見ても、25・6歳くらいに見える。

「お久しぶりですね。もう8年ぶりかしら?あら?ごめんなさい、聖地では1年くらいしか経っていないのかしら?」

彼女の美しい瞳に引きこまれながら、俺は女王候補だったあのかわいらしい少女思い出していた。

 

アンジェリークは飛空都市で開かれた女王試験に敗れ、現女王である、ロザリアのたっての希望を断って聖地を後にして主星の彼女の家に戻っていった。
女王はいたく哀しみ、今でも女王の執務室には当時女王とともに撮ったアンジェリークの写真が飾られている。
俺にとって女王候補のアンジェリークは、ただのかわいいお嬢ちゃんだった。
よく、くるくる変わる表情をした、明るくドジな普通の女の子。
それが大方の守護聖たちの彼女の印象だっただろう。
まあ、年少組の3人はそんなアンジェリークに夢中だったが。
それがどうだ。
今、目の前にいる彼女は、まさしく大人の女。
洗練された仕草と、スタイル。
誰もを魅了してやまない、たぐいまれなる美貌。
その輝く美しい笑顔は、どんな男であろうとすぐさま彼女の前にひざまずくだろう。
その表情さえも、妖艶さを漂わせて男たちの心を落ち着かせなくしている。

「さなぎが蝶に変わるとはこのことかと思うほど、素敵なレディーになったんだな。」

俺は思わず感嘆の声をあげずにはいられなかった。

「私、もう25歳よ。いつまでも少女ではいられないわ。」

彼女のその言葉は、俺と彼女が過ごしてきた時間の違いを如実に表していた。
彼女が25歳ということは、あのかわいいかった妹のような少女が、いつの間にか自分よりも年上の姉になっていたということだ。
確かに彼女は、経験を積んだ大人の女性に変わっていた。
そのことがことさら、俺の心を落ち着かないものにしているのだった。
そう、俺はアンジェリークに恋してしまったのだ。