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「もう!オスカーあなたったら一体何をやっているの!」
その日の晩、オスカーのマンションを訪れたアンジェリークは、オスカーを激しく叱責した。
オスカーはそのあいだずっと頭をたれ落ち込んでいた。「すまない。俺はどうかしているんだ。お嬢ちゃんのこととなると我を忘れてしまう。一時だって離れていたなくて、気が狂いそうなんだ。」
オスカーの心の叫びにアンジェリークは苦笑して、そしてオスカーの頭抱きしめた。
「何をそんなに不安がるのオスカー。私にはあなただけだって言ってるのに。私だってあなたといつまでも一緒にいたいし、キスもしたいし、あなたに…その…抱かれたいわ。でもそれであなたが他のことができなくなっちゃうのなら、私はあなたのそばにちゃいけないのかもしれない。」
突然の衝撃的な発言にオスカーは真っ青になってうろたえた。
そんな様子にアンジェリークは優しく微笑むと、「でも、そんなこと私だって出来ないわ。あなたなしじゃあもう生きられないもの。」
と翡翠の瞳を揺らめかせていった。
オスカーは思いっきり彼女を抱きしめて口づけた。「アンジェ、俺と結婚しよう。いや、結婚してくれないか。俺は君を俺だけのものだとすべての人に認めさせたんだ。そうじゃなきゃ俺は…俺は気が狂ってしまう。君を愛してるんだ。」
アンジェリークはオスカーのプロポーズを聞いてクスッと笑った。
「もっとロマンチックなプロポーズを期待していたけれど、オスカーらしいプロポーズもなかなかね。」
「じゃあ、OKかい?」
「もちろんよ。断る理由なんて思いつかないわ。」天にものぼる気持ちとはこのことか。
そんな気分のオスカーは、また力強くアンジェリークを抱きしめた。
昨日まで落ち込んだ気分はどこへやら、オスカーは久しぶりに晴ればれとした気持ちで一杯だった。
今日は会長も旅行から帰ってくるから、アンジェリークも社長秘書から解放されているはずだ。
そんなこんなでオスカーは久しぶりに仕事に没頭していた。
だがそこへ会長からので呼び出しを受けた。
きっとアンジェリークが婚約のことを言ってくれたのだと思い、お祝いの言葉でもいただけるのかとルンルン気分で会長室に赴いた。「オスカー参りました。」
「入りなさい。」ちょっと低いトーンの声で答えが返ってきて、オスカーは少し不思議に思った。
中に入ると、ロザリアがデスクの向こうからオスカーをにらみつけていた。「会長、お呼びと伺いましたが、何かご用でしたでしょうか。」
頭を垂れて挨拶するオスカーに、会長の冷たい視線が突き刺さった。
「オスカー。あなたアンジェと婚約したそうね。」
ロザリアの言葉にオスカーはとろけるような笑顔を向けた。
「はい。昨日承諾をもらいました。」
片方の眉をつり上げてロザリアはオスカーをにらむと、
「まさかあなたアンジェをやめさせようとは思っていないでしょうね。」
「はあ?といいますと?」
「だから、アンジェはこのまま私の秘書として会社にいってもらおうと言っているのよ。」
「……。」オスカーは鳩が豆鉄砲をくらったように目を見開いた。
オスカーは会社にアンジェリークを止めようと思っていなかった。
自分だけのアンジェリークにしたいオスカーとしては、男がうじゃうじゃいる会社に通わせるのは避けたいところだ。
是非ともアンジェリークには、自分の妻として専業主婦になってほしいと思っていたのだった。「どうなの!もちろん会社を辞めさせたりしないわよね。オスカー。」
ロザリアの命令調の言葉にオスカーは蛇に睨まれた蛙のように冷や汗を垂らしてだまりこくった。
「結婚は仕方がないから認めるけど、退職は認めないわよ!それだけは覚えておいてねオスカー。」
そう言い放つと、ロザリアはオスカーにこの部屋から下がるように手で合図した。
オスカーはまた頭を垂れて礼をとると、急いで会長室を出ていった。
アンジェリークは、オスカーがだまりこくっているのがどうしてなのかわからずに当惑していた。
「ねえ。どうしたのオスカー。今日のあなた変よ。」
そう言って声をかけたアンジェリークのほうに、オスカーが何か切なそうな瞳を向けた。
「お嬢ちゃんは俺と仕事のどっちが大切なんだ?」
「え?どういうこと?」首をかしげるアンジェリークにオスカーはうつむいてぼそぼそと語りだした。
「今日、会長に呼ばれたんだ。君との結婚は認めるけれど辞職は許さないって。」
「え?ロザリアがそんなことを?」アンジェリークは目を見開く。
その反応にオスカーは驚き、「君の意思じゃないのか?」
「え。違わよ、私はどちらでもいいの。お仕事はそれなりに楽しいし、つづけてもいいと思ってはいるけれど、それはオスカーがよければの話よ。オスカーはどうしたいの?」翡翠の瞳をきらきらさせて、オスカーの顔をのぞきこむアンジェリークの仕草はオスカーをとろかせる。
なんて彼女は魅力的なんだろう。
オスカーの頭の中はついぼーっとなってしまって、アンジェリークの望みなら何でもかなえてあげたくなってしまう。「君が望むなら、君の好きなようにすればいいよ。」
うっとりとアンジェリークを見つめながら、つい心にもないようなことを言ってしまった。
アンジェリークはぱっと顔をかがやかせ、オスカーの首に抱きついた。「ありがとうオスカー!あなたって本当に優しいのね。愛してるわ。」
アンジェリークにそう言われてはオスカーはもうドロドロのとろとろになってしまうしかなかった。
甘くくちづけて、彼女抱きしめる。
その夜のアンジェリークはいつにも増してオスカーを喜ばせたことはいうまでもなかった。
それからもオスカーの妄想のために、オスカーの敵意の瞳を向けられる男性陣には災難なことだったが、そのたびに彼の最愛の恋人が彼をたしなめ、そして慰めてオスカーを操る度に彼はハラハラドキドキした生活に幸せを感じるのだった。
そんな彼をやはりアンジェリークはいとおしと思ってしまうのだった。
END
「オフィスラブ」はいかがでしたでしょうか。
壊れたオスカー様はなかなかかわいいやつです。
あまり長編にはなりませんでしたが、これぐらいで許してください。
けっこう評判のよいエロエロ君ですが、今回はどうでしょうか?
このオスカーも気に入ってくださるとうれしいです。
それではまた次の連載まで・・・。