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その後、アンジェリークはダンスを三曲ほどクラヴィス、ルヴァ、そしてオリヴィエと踊った。
その間ずっとオリヴィエに言われたことを考えていたオスカーはすっかり出遅れた形になっていた。
そしてやっと考えるのをやめてアンジェリークをダンスに誘おうと立ちあがった。
オリヴィエとダンスが終わった挨拶を交わしているアンジェリークに近づくとオスカーは極上の笑みを浮かべるとアンジェリークをダンスに誘った。「お嬢ちゃん。今度は俺と踊ってくれないか。」
「ごめんなさいオスカー様。ちょっと疲れてしまったので休ませてもらえませんか。」アンジェリークのその答えにオスカーはがっくりと肩を落とした。
踊り疲れたアンジェリークはテーブルについて一息ついた。
そこにルヴァとリュミエールがやってきて、ルヴァは軽い飲み物をアンジェリークに差し出した。「疲れたでしょう。飲み物でもどうぞ。」
「ありがとうございますルヴァ様。ちょうど喉が乾いていたの、うれしいわ。」アンジェリークは嬉しそうにグラスを受け取ると一口飲んだ。
「アンジェリーク疲れた時には音楽などいかがですか?私がハープを演奏しましょうか?」
リュミエールはそう言って持っていたハープを爪弾き始めた。
アンジェリークはうっとりとした表情でリュミエールのハープの音に耳を傾けた。
そのころオスカーはことごとく先手を打たれ、アンジェリークに近づくチャンスさえ与えられないことにいらだちを募らせていた。
事によるとさっきのオリヴィエの話は本当のことなのかもしれないと思い始めていた。
守護聖全員が自分をアンジェリークに近づけさせないようにしむけている、そうとしか考えられなかった。
だがなぜ?
オスカーには他の守護聖たちにそこまで嫌われるようなことをした覚えがまったくなかった。
後考えられることはアンジェリーク自身がオスカーを避けようと守護聖たちにオスカーが近づかないように頼んでいるとしか考えられなかった。
そう考えるとなんだか絶望的な気持ちになってきた。
一体自分はどうしてそんなにアンジェリークに嫌われてしまったのかそんな思いがオスカーの頭の中でぐるぐると回り始めた。
オスカーの気持ちはどんどん負の螺旋階段を転げ落ちてすでにどん底に辿り着いてしまった。
「ねえねえ、オスカー様なんだか縦線背負っているよ。ちょっとやりすぎちゃったかなぁ?」
マルセルはそっとランディに耳うちした。
ランディは横目でオスカーの方見るとちょっと気の毒に思った。「そうだよなぁちょっとやりすぎかなぁオスカー様かわいそうだよなぁ。」
ランディのその言葉を受けてゼフェルはいきり立つ様に言い放った。
「そんなことねぇよ。だってこのままいくとおっさん一人がいい思いすることになるんだぜ。それでもいいのかよ!」
「そりゃあ嫌だけどさあ何にも守護聖全員でオスカー様一人をいじめることないじゃないか。」
「おうおう!優等生な答えだよなおまえはよう!俺はいやだぜ、アンジェリークをこのまますんなりおっさんに渡しちまうのはさあ。これくらい我慢してもらおうぜ、いいじゃないかアンジェが手に入るのなら安いもんさ。」ゼフェルは憮然とした表情でランディをにらみつけた。
仕方ないなぁとランディは肩をすくめゼフェルの主張を受け入れた。
一人落ち込むオスカーのもとにまたしてもオリヴィエが現れくすくすと笑いながらオスカーをからかった。
「やあねえなに一人暗くなってんのよう。」
「さっきからうるさい奴だ。放っといてくれ。」すっかりアンジェリークに嫌われたと思い込んでいるオスカーはふてくされたようにオリヴィエを見つめた。
「あらあら、一体何を考えちゃったのかしらね。まあ諦めるって言うならそれもいいんじゃない。」
オリヴィエの言葉にオスカーはいきり立った。
「冗談じゃない!誰が諦めるか!俺は絶対お嬢ちゃんを手に入れてやる!」
「上等じゃない!欲しかったら奪ってみなさいよ。私たち全員がお相手するわよ。」オスカーはすべての守護聖を押し退けたってアンジェリークを口説き落とそうと決意を新たに立ちあがった。
オリヴィエはそんなオスカーをニヤニヤと面白そうに眺めていた。
決意を固めたオスカーはまっすぐにアンジェリークに向かって進んでいった。
そしてリュミエールのハープの音にうっとりと耳を傾けるアンジェリークの手を強引に引っ張ると「すまないアンジェリーク、俺といっしょに来てくれ。」
といってアンジェリークをバルコニーにつれ出した。