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もぬけの殻になった塔の部屋の中でルヴァは怒りに震えて立ち尽くしていた。

「許せません・・・・・・。あの男にはそれ相応な罰を与えねばなりませんね。」

暗い怒りの炎をその目に宿し、ルヴァはアンジェリークを取り戻す為にその身を夜目に利く蝙蝠に変えると細い三日月が浮かぶ夜空へとその身を躍らせた。

 

そのころ宿屋に戻ったオスカー一行は各自部屋を取って部屋にこもっていた。

「く・来るなァ〜〜!!」

「まあ!いったい何をそんなに恐れているの猫君。」

にじりにじりと近づくコレットにゼフェルは真剣に恐怖を感じていた。
ゼフェルにとって女とはか弱く、柔らかいものなのだが、目の前にいるコレットは体こそ小柄だがその性格はか弱いには程遠いものだった。
何処までも強引なコレットの求愛にゼフェルはもう半泣きだ。
逃げ惑うゼフェルをまるで獲物を追い詰める様にコレットは襲いかかり無理やりそのくちびるを奪った。

「うぅぅ〜〜〜!!!」

「うふふ・・・・ほんと可愛いわァ〜猫君。照れなくても大丈夫vvv私そっちの方には自信あるから。」

流石オスカーの妹・・・・・・。
青ざめるゼフェルをコレットはさっさとひん剥いて事に及ぼうとしていたのだった。

 

片やエルンストとレイチェル。
二人はお楽しみな2人の兄妹にすっかり忘れ去られ、一緒の部屋でもじもじと真っ赤になって見詰め合っていた。
身分が違うレイチェルにエルンストはその飾らない雰囲気がすっかり気に入ってしまったのだが、手を出せずにおろおろしていた。
レイチェルのほうも、大好きなエルンストとこんなに真近にいられる事ですっかり舞いあがってしまっておろおろしていたのだ。
さっきから2人はお互いを見つめては「あの〜。」「その〜。」と言っているだけでさっぱりその先に進むことが出来ないのだった。

 

そしてオスカーとアンジェリーク・・・・。
アンジェリークはこれから起ころうとしていることが、さっぱりわかっていなかった。
オスカーの方も、初心なアンジェリークに性急なことをしようとは思ってはいないが、それでも、やっと手にいれた愛しい娘を前に、胸の高鳴りを押さえられるものではなかった。

「アンジェリーク・・・・俺は君を見たあの日からもうすっかり君に夢中だ。俺のこの気持ちを受け取ってくれるだろ?」

「?オスカー様。気持ちってどんなことを受け取ればいいのかしら?私何もわからないの・・・。どうすればいいの?」

不思議そうに小首を傾げるその姿もなんとも言えず愛らしいアンジェリークに、オスカーの気持ちは更に高まる。

「さっきしたキスをしてもいいかい?君が好きなんだ。その気持ちを現す行為なんだよ。どう?」

キスのことを言われてアンジェリークは頬を染める。
さっきのキスという行為はことのほか気持ち良いものだったからだ。

「はい・・・オスカー様のキスは私好きです。」

その返事を聞いた途端にオスカーの理性も吹っ飛ぶ。
すばやくアンジェリークを抱き寄せ、その桜色の唇を奪った。
とろけるような快感がアンジェリークを襲う。
思わず甘い吐息がこぼれてくる。
その内にオスカーの手が彼女の胸元に伸び、ドレスの上から優しく愛撫し始めた。
初めての快感にアンジェリークの意識はもうメロメロになってきた。
いったいなにが起こっているのかさえも、もうすでに分からない。
オスカーから与えられる快感の波に飲まれて、もう成すがままだ。
オスカーの方も、我慢してきた欲望にすっかり火がついて、焦らないで行こうという当初の思惑をもうすでにすっかりと忘れ去っていた。
しだいに2人はベットに横たわり、いつしかことに及んでいったのだった。
アンジェリークはそこではじめて愛し合う行為というものを知ったのである。
そしてそれはことのほか彼女にとってはすばらしい体験だったのだった。

 

アンジェリークに連れられて、宿に来たリュミエールは周りの人にその衝撃的な姿を見られるのをいやがって、今エルンストによって、マンとに包まれ、彼の部屋で二人の「あの〜その〜」を聞いていた。
そして心はひたすら、オスカーによって連れて行かれたアンジェリークの身を心配していたのだった。

アンジェリークがこのままオスカーの妃になれば、それはそれで彼女にとっては幸せなことかもしれないが、それによって、自分はきっともう彼女のもとにいることはかなわなくなるだろうと思っていた。
体の無い自分が、将来の王妃のもとにいることは、彼女の評判を貶めることになりはしないかと不安に思っているのである。
だが自分では何もすることが出来ず、彼はそれが歯がゆくて仕方なかった。
だが、アンジェリークのために自分がすべき道はもう彼のなかではほぼ決まっていたのだ。
それは自らの命を絶つという決意だった。
アンジェリークの幸せを見届けた後、それを実行しようと彼は心に誓っていた。

それぞれの思いが錯綜した夜は、こうして更けて行き、ルヴァによる報復の時はまだこの時は誰の元にも訪れていない。
そして朝はやってきた。

 

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