15

オスカーの呼びかけにアンジェリークの胸は高鳴った。
愛しい人が自分を助けにまた来てくれるなんて。
リュミエールに襲われたときも、そして王に囚われた今も、この人は来てくれる。
やはりオスカーこそが運命の人なのだ。
アンジェリークの瞳がうれしさのために涙で曇る。

「アンジェリークさあおいで受け止めてあげるよ。」
「はい!」

明るく返事をしてバルコニーの手すりに足をかけようとしたときアンジェリークは突然腕を掴まれた。
驚いて振り向くとそこには嫉妬に燃えるジュリアスの顔があった。

「陛下!」

アンジェリークの恐怖に打ち震えた表情にもジュリアスの気持ちをさかなでる物があった。

「おまえをあの者にやるわけにはいかん。」
「陛下。行かせてください。私はオスカーを愛しているのです。」

ジュリアスの眉が上がる。
どうしてこれほどまでに自分はこの娘に惹かれているのだろう。
自分ではなく他の男を思うこの娘を何故こんなに欲しいのか。
美しいだけならいくらでもいる。
別にこの娘でなくてもよさそうなものなのに。
最初に見たとき、そのエメラルドの瞳に惹かれた。
だがまだその時は好感を持つ程度だったかもしれない。
次に見たときはそう忘れもしない、王宮の中庭でオスカーと抱き合う姿だった。
その時、ジュリアスの中で何かが音を立てる様に崩れた気がした。
ジュリアスの中でアンジェリークはまるで天使の様に清純な聖なるものだった。
その神聖な天使が、オスカーと言う女を見れば口説くようなプレイボーイによって地に落とされた気がした。
どうしてもジュリアスにはアンジェリークが俗世のものとは考えられなかった。
だが今は同じ地に落とすのならば、自らの手で、と思うようになっていた。
オスカーに劣っているとは考えたくは無い。
それがジュリアスの心をかたくなにしている真の理由なのかもしれなかった。

「余はオスカーよりも劣るとおまえは言うのかアンジェリーク。」

思わず口走ってしまった言葉にジュリアスは驚いた。
アンジェリークはジュリアスを見つめ首を横に振った。

「陛下は劣ってなどおりません。恋とは不思議なもの。私の目にはオスカーだけが映っているのです。他の人は目に入らない。それが恋なのだと思います。もし私がオスカー以外の人に恋をしていたらやはりその方以外は目に入らないのでしょう。でも私はオスカーに恋をしてしまった。だから行かせてください。私の幸せはオスカーと共にあることなのです。」

アンジェリークのその美しい瞳が優しくゆれた。
やはり彼女は聖なる天使。
ジュリアスの心はその優しい微笑みに癒される思いがした。

「陛下さようなら。陛下の上に幸せが降りてくることを願っています。」

そう言うとジュリアスが恋焦がれたエメラルドの瞳の天使は軽やかにその身をバルコニーから躍らせた。
階下のオスカーに抱かれうれしそうに走り去るアンジェリークの姿をジュリアスはただ呆然と眺めていた。

「お兄様?」

いつの間にきていたのかロザリアがジュリアスを気遣って依りそう。
ジュリアスは寂しそうな瞳をバルコニーの外に向けていたがやがて自嘲気味に笑った。

「初恋は実らぬとはよく言ったものよ。私の天使はやはりカゴの中では生きられぬのだな。私はとんだ愚か者だな。」
「いいえお兄様。お兄様は恋をされてまた一つ賢王への道を築く力を得られたのですもの。その経験を生かされませ。」

ロザリアは愛しい兄をしっかりと抱きしめた。

 

王宮を出たオスカーとアンジェリークはもう互い以外は何も要らなかった。

「アンジェリーク何処までも付いてきてくれるかい。」
「あなたのいるところでしか私はもう生きることは出来ません。私をもう放さないで、何処までも付いていくわ。」

二人は手と手を取り合う様に姿を消した。
何処に行ってしまったのかは誰にもわからなかった。

 

その後ジュリアスはフレイアスもアメジスも罰することなくまたもとの厳格な賢王に戻っていった。
そしてフェリシア王国はいつもの日常に戻っていったのだった。
だがあの美しき恋人達を忘れてしまう者は無かったと言うことだ。

 

END

 

終わった〜。
でもなんだか力尽きてしまったようなラストで、本当に申し訳無いです。
私の才能の無さをまたまた実感してしまいました。
今回はいろんな構想を練りすぎてまとめ切れなかった感があります。
どうしたらもっとドラマティックな創作が書けるようになるかなァ?
は〜あぁ才能が欲しい!
では次回作で会いましょう。

 

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