サラマンダーの壷

泉の精霊であるリュミエールは悩んでいた。
どうしても大神の命でこの泉をどうしても空けなければならない。
泉じたいをあけることじたいは何も問題無いのだが、この泉にはあるものが隠してあった。
それはサラマンダーの壷。
この壷にはリュミエールの最も気に入らない精霊が閉じ込められていた。
封印された精霊の名はオスカー。
炎の精霊だ。
彼がなぜこのような壷に封印されたのか。

 


オスカーがまだこの壷に封印されていなかった頃、彼は精霊界一のプレイボーイだった。
彼は女と見れば誰でも口説かずには居られないと言う性癖があった。
その性癖のおかげで、彼は不可侵である純潔の女神にまで手を出し、大神より、

「おまえは真実の愛を知らぬ愚か者だ。
女神に手を出した罰として、おまえがこの壷から出られるのは純潔の乙女がこの栓を抜いたときのみ、
そしてその乙女と真実の愛を手に入れられなければまたこの壷に閉じ込められることとしよう。」

との呪いがかけられたのだった。
そしてオスカーはサラマンダーの壷の住人となったのだった。

 

リュミエールはオスカーを女性を悲しませる悪魔のような輩だと思っていた。
それゆえに大神からこのサラマンダーの壷を預かったとき、絶対乙女の目に触れさせてはならないと自分の住んでいる泉のほとりにある大木のうろに隠したのだった。
その計らいは効を呈して今まで誰一人としてサラマンダーの壷を目にすることは無かった。
しかし、ここに来て大神より日照りで苦しむ町を救うためその町まで行くように申し付かってしまったのだ。
リュミエールはサラマンダーの壷が開封され、オスカーがまた女性を悲しませるのではと気がかりでしょうがなかった。
だが大神の申しつけを無視することもできず仕方なく、数日この泉を空けることにした。

 

オスカーはこの暗い壷の中に閉じ込められてもう何年こうして膝を抱え頭を垂れているのかわからなかった。
自分がしたことの罰だということはわかってはいたが、自分が悪い事をしたとは考えていなかった。
純潔の女神が女であるなら恋をしたっていいんじゃないかと思っていたのだった。
女神の役割のことはまったく気にせずに。
そんなことばかり考えていたのだが、彼とてこの壷にいつまでも居るつもりは無かった。
なんとしても壷から出してくれる純潔の乙女を探さなくてはと思っていた。
だが、あろうことか大神は自分をいつもまるで獣のように見ているリュミエールに、サラマンダーの壷を預けてしまったのだ。
案の定リュミエールは壷に誰も近ずか無いようにしてしまった。
これは非常にまずかった。
だからこのリュミエールの留守はオスカーにとって外に出られる唯一のチャンスかもしれなかった。
だからオスカーは大木のうろの中でただ純潔の乙女が現れてくれることを心から願っていた。

 

オスカーの願いをかなえるためではないだろうがリュミエールが泉を空けて3日目、泉に一人の娘が来た。。
美しい光りを束ねたような金の髪をした娘は、その翡翠のような澄んだ碧の瞳を輝かせこの静かな泉の美しさに見とれていた。
彼女は純潔の女神の親友でもある春の精霊アンジェリークだった。