3
運命の恋人に逃げられてしまったオスカーは今、頭を抱えていた。
(彼女は一体誰だ?)
自分を解放してくれた純潔の乙女と本当の愛を見つけなければ、オスカーはまたもやサラマンダーの壷の中に閉じ込められてしまうのだ。
それだけはなんとしても避けなければならないとオスカーは考えていた。
だがその純潔の乙女を取り逃がしてしまった今となっては、どうしたらいいのかわからなかった。
とりあえずこの泉から離れなければ、リュミエールが戻ってくるだけだ。
彼とだけは顔を合わせたくなかった。
泉でオスカーを解き放ってしまったアンジェリークは慌てふためいた様子で自分の棲家でもある花園を目指してひたすら走っていた。
途中で仲良しの緑の精霊マルセルとぶつかりそうになった。「何?なんでそんなに急いでるのさアンジェ?」
怪訝な面持ちでマルセルは尋ねた。
だが今まで走ってきたアンジェリークには息があがってしまって答えることができない。
しかたなくマルセルは彼女の息が整うのを待ことにした。「ご・ごめんねマルセル。でも大変なことしちゃったみたいなの私。」
彼女は今にも泣きだしてしまいそうな声でマルセルにしがみついてきた。
マルセルはドジな彼女のことをよく知っていたので、彼女を抱きとめながらいつものことだというような顔をしてため息をついた。「で何したのさ今度は。」
「あ・あのね泉にあった変な壷の栓を抜いたら変な人が出てきちゃったの!」
「?」マルセルにはアンジェリークの言わんとすることがさっぱりわからなかった。
「変な人ってどうゆう人さ。」
「うんとねぇ。髪が赤かったかなぁ。それでね、は・裸だったのよ!」マルセルはなんとなくわかりかけてきた。
(アンジェが壷から出したっていうのはきっとうわさに聞いた女ったらしの精霊じゃないのかな?)
(だとしたら大変だ僕達のアンジェがうわさに高い炎の精霊の次の獲物ってことじゃないか)マルセルはかなり前に仲間の鋼の精霊ゼフェルから女ぐせの悪さのせいで大神に壷に閉じ込められた炎の精霊の話を聞いたことがあった。
「バッカだよなぁ。おっさんもドジを踏んだもんだぜ。大神の秘密の恋人だともっぱらのうわさの純潔の女神に手を出すなんてさぁ。」
ゼフェルはたしかそんなことを言っていたと、マルセルは思い出していた。
(とにかくここはアンジェをその女ぐせの悪い炎の精霊から守らなくては。)「アンジェ。とにかくここは危険だから花園へ帰ろう。」
そう言うか言わないかの内にマルセルはアンジェリークの手を引いて花園へ向かって歩き出した。
危険だといわれてアンジェリークは怯えだした。(ああ、やっぱりあの壷は悪魔か何かが閉じ込められてたんだわ。)
そんな想像をめぐらせてアンジェリークはおとなしくマルセルの後をついていった。
その頃なんにも知らないオスカーは今だ目にやきついて離れない美しき恋人アンジェリークを探していた。
とにかく彼女は自分のこの姿に驚いたようだったのでまずは服を調達せねばならなかった。
そこでオスカーは心当たりのあった精霊をたずねることにした。
色とりどりの美しい鳥が集うその森は夢の精霊の棲家だった。「おーい。極楽鳥居るか?」
その声に夢の精霊は本当に極楽鳥のように現れた。
「あーらオスカーじゃないの?お久しぶり!」
「おう!元気そうだなオリヴィエ!」
「あんたいつ出てきたのよ。それにしてもひどいかっこうね。」
「はは。今出てきたばかりだからな。それでおまえに服を見繕ってもらいたくて来たのさ。」オリヴィエはあごに指をあてがいながらジロジロとオスカーを眺めた。
「ま!いいでしょ。素敵な服を着せてあ・げ・る!」
そう言うが早いかオスカーを引っ張って自分の屋敷に引っ張り込んだ。
そしていろんな服を着せては脱がせ、着せては脱がせしてやっと気に入る服をオスカーに着せることができた。
こうしてオスカーはオリヴィエのおかげでまともな格好を手に入れた。
オスカーはこれで自分の手腕で純潔の乙女など必ずおとしてみせるという自信にあふれかえった。
だが彼女が誰だかわからなければ意味が無い。「極楽鳥。おまえリュミエールの泉にやってきそうな金の髪に緑の瞳の娘を知らないか?」
「あらリュミちゃんの泉ぃ?そうね清い場所が好きな精霊なんて春か秋の精霊ぐらいよねぇあの辺じゃあ。そんでもって金の髪に緑の瞳なら春の精霊アンジェリークしか居ないわねぇ。」アンジェリークの名を聞いたとたんオスカーは純潔の女神の親友だといわれている乙女のうわさを思い出した。
確か彼女は春の精霊で、リュミエールの泉の近くの春の花園にすんでいると聞いていた。
オスカーはオリヴィエに礼を言うと急いで春の花園を目指した。