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オスカーは久しぶりの自分の棲家でアンジェリークの事を考えていた。
彼女は何故かオスカーの心にわだかまりのような何かすっきりとしない思いを抱かせる。
それがただ単に自分になびかない女への好奇心なのかどうか今のオスカーにはわからなかった。
とにかく彼女に興味をひかれている事だけは間違いないようだった。
そんなことをつらつらと考えていたオスカーの元へ最も見たくないものがやってきた。
それはサラマンダーの壷だった。

「炎の精霊よ。忘れたわけではあるまいがおまえがそうしていられるのは彼女に振られるまでだ。彼女の心をつかみおまえが彼女との本当の愛を手に入れれなければ即私の中におまえは再び封印されるのだ。忘れるな。」

サラマンダーの壷は赤く炎のような光を発しながらオスカーに忠告してきた。
オスカーは苦々しく思いながらもサラマンダーの壷の忠告を聞くしか手立てが無かった。

 

翌日もオスカーは春の花園にやってきた。
アンジェリークを探すと今度は隠れることなくこちらを見つめるアンジェリークが目に入った。
オスカーはアンジェリークが逃げないのは、自分に会いたかったからかもしれないなどと都合の言いように解釈して微笑んだ。
目の前までアンジェリークに近づいても彼女は逃げなかった。
やはり彼女も他の女と変わりないのかと思い始めたときアンジェリークがオスカーを見つめながら目を哀しそうに潤ませているのに気がついた。

「やあ!お嬢ちゃん。どうした今日は逃げないのか?」

軽くアンジェリークに声をかけてみたが彼女の悲しげな表情は変わり無かった。
アンジェリークはオスカーを見つめたままで何か思いつめたように口を開いた。

「ごめんなさい。私あなたに嘘をついてしまったみたい。」

なんのことかさっぱりわからないオスカーは首をかしげながら彼女に問い返した。

「一体なんの話だ?」
「本当の愛が素敵だって話よ。」

彼女は伏し目がちに下を向いてオスカーの方を見た。

「じゃあなんだったって言うんだ?本当の愛って奴はさ。」

好奇心に駆られてオスカーがたずねるとアンジェリークはまた哀しげに呟くように答えた。

「本当の愛は苦しいものだわ。」
「苦しい?なぜ?」
「だって苦しいんだもの!」

アンジェリークのすねたような台詞にオスカーは彼女が何か悩んでいるのがわかった。

「何を悩んでるんだ?言ってみろよ。」

オスカーのやさしげな言葉に一瞬躊躇しながらもアンジェリークは口を開いた。

「私どうも失恋しちゃったみたい。まだ告白もしてなかったのに・・・。」

アンジェリークのその返答にオスカーはあきれていた。
告白もしてない相手に本当の愛なるものを感じてオスカーに意見していたとは。
額に手をやりながらオスカーはアンジェリークに毒づいた。

「あのなぁ、お嬢ちゃん。恋愛をしてたんじゃなくてただ片思いだけしてたんだろ?そんなので本当の愛なんてわかるわけ無いじゃないか。」

その言葉に今度はアンジェリークが文句を言った。

「そんなこと無いわ!だって私本当にあの方のことが好きなんですもの。」
「だから片思いなんて本当の愛じゃないんだろ?」
「片思いでも相手のことを本当に思いやれたら本当の愛だと思うわ!」

アンジェリークの表情からはさっきの哀しげな瞳は消え、その代わりに真剣にオスカーに抗議する興奮気味の彼女がいた。
そんなに真剣に思っている相手の事を考えるとオスカーはなんだか腹ただしくなってきた。
自分を見ても頬を赤らめることもしないくせにどこの誰だかわからない男のことは目を潤ませるように語っている。
アンジェリークが思っている男はどんな奴なのだろう。
さぞかしいい男に違いない。
そんな考えがオスカーの頭の中で膨らんでいった。

 

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