知覚過敏なあなたへ

光の守護聖ジュリアスは身だしなみを整えるのが事のほか好きだ。
その流れる金の髪をブラッシングするのも、その真っ白な清潔感あふれる衣装を身につけるのも気に入っていた。
そしてなにより彼が愛していたのは歯磨きだった。

歯磨き・・・・。

その行いをジュリアスが行う時・・・それは彼にとっては至福の時だった。
あの
固めのブラシが、歯や輝くピンク色の歯茎をシャゴシャゴと勢いよく行き来する時の快感。
いろいろな味わいの歯磨き粉も忘れてはならない。
すっきりクールなミント味も捨てがたいが、今ジュリアスのお気に入りはバナナ味だ。先週イチゴ味からこれに切り替えた。
ぶくぶくと出る泡も好き。
鏡に映る口の端から出る泡を見ながら、

「蟹のようで可愛いではないか。」

と頬を染めながら呟くのだ。

 

だがある日、その日はやってきた・・・。
いつものようにジュリアスは清々しい気分で目覚め、まどろみを感じながらも洗面所に向かい目覚めの歯磨きを始めた。

ウッ!

突如襲い来る脳天に突き抜ける痛み。
まさにキーンっといった衝撃的な痛みだ。
この至福のブラッシングになにゆえこのような苦痛が訪れるのか・・・。
もう一度ブラッシングしてみる。

ハウ!!

やはり痛い・・・。
慌てて水を含んでみる。

クッ〜〜〜!!

水さえも凍みる。
もうジュリアスはパニックだった。
ジュリアスはこの至福の歯磨きタイムを今朝はほとんど味わうことなく過ごさねばならなかった。
その為今朝は執務室に行く前に、聖地にある病院の歯科に立ち寄ったのだった。

「ああ、これは知覚過敏ですな。」

医師の言葉にジュリアスは首を傾げた。

「知覚過敏は歯磨きのし過ぎや、磨き方が悪いために歯が、歯ブラシによって削られて虫歯のようになっているんですよ。」
「ではどうすればよいのだ。」
「まずは削られているところを補修しておきますが、今後は歯ブラシを柔らかめのものにして、小刻みに歯磨きをする方法をおすすめします。」

がーん・・・・・・・。

ジュリアスの頭に響く古典的な響き・・・。
固めの歯ブラシでシャゴシャゴ歯磨きする事に至福の喜びを感じていたのに・・・・腰の無い柔らかい毛の歯ブラシで、小刻み!小刻みに磨くだと!そんなの歯磨きじゃない!!
口に出してそう叫びたいのを我慢して、ジュリアスは仕方なく治療を受けると、かなり不本意だが、聖殿の中にある守護聖御用達の購買部に向かい、極細の柔らかめの歯ブラシを購入した。
昼食が済んで、早速あのふにゃふにゃ歯ブラシで、歯磨きしてみる・・・。

シッシッシッ

やわらかなブラシの上にここぞとばかりにバナナ味の歯磨き粉を付け小刻みに磨く。

シッシッシッ

なんだかイラつく・・・。

シッシッシッ

だんだんむかむかしてくる・・・。

シッシッシッ

イライライライラ・・・もうたまらん!!こんなの歯磨きじゃない!!
ジュリアスはやわらかはブラシを天高く放り投げると、いつもの固めのブラシを握り締め、てんこもりのバナナ味の歯磨き粉をつけて、気が狂ったかのように超高速で、歯ブラシをシャゴシャゴと動かし始めた。
口の中が泡でいっぱいになってくる。
超高速のブラッシングのおかげで、泡立ちは最高だ。
クリーミーな泡と、歯ブラシのシャゴシャゴマッサージで、ジュリアスは麻薬に侵された様に気分はトリップ。
泡と涎が口からあふれるのもかまわず歯ブラシを動かしつづける。
思わず気持ちよすぎて笑いも漏れる・・・。

「ウフ、ウフ、ウフ、エヘヘヘヘ・・・・。」

もっと歯ブラシの速度を上げる。

シャゴシャゴシャゴシャゴ・・・・・。

もう夢中!
あんまり夢中になりすぎてつい喉をついてしまった。

オ・オエ〜〜〜〜。

そして正気に返った。
そしてせっかく補修された治療個所はすっかり剥がれ落ちていた。

うおおおおおおお〜〜〜〜!!

知覚過敏・・・ジュリアスの苦悩は続く。

 

END

 

 

「知覚過敏なあなたへ」いかがでしたでしょうか・・・。
危ないジュリアス様で申し訳ありません・・・。
怒る?怒っちゃう?えへ。
しのちゃんおつむの中腐敗が進行してるの許してね?
早いとこシリアスかかなくっちゃと焦ると浮かんでくるのはこんな話ばかりでした・・・・。ごめん。
感想お待ちしてます。えへ。