熱拳!カンフークラブ


登場門派:長拳(基本功)、八卦掌(?)、鷹爪拳、蟷螂拳、酔拳、地功拳 他

掲載紙:月刊コロコロコミック 1987年?〜
作者:魚戸おさむ
てんとう虫コミックス全三巻


 これは、コロコロコミック連載作品で今は亡きてんとう虫コミックスで単行本化されている。てんとう虫コミックスは現在ほとんどの作品が絶版となっており、噂では作品によってはたいそうなプレミアがついているそうで入手は難しそうである。たとえば「オバケのQ太郎」、これは藤子不二雄作品だと思われているが実は初期のころには石の森章太郎や赤塚フジオ等も執筆参加しており、版権の問題があって過去てんとう虫コミックでしか単行本化されていないのだそうだ。この外にもいろいろ貴重な作品が出ていたが、すべて絶版である。あすかあきおの「ザ・超能力」、作者はわからないが「あほ拳ジャッキー」、「キンタマン」、「名探偵カゲマン」なども復刻を切に願う。「あほ拳ジャッキー」はぜひ”イケてない”中国武術で紹介したいのが、単行本が手に入ることはこれから一生なさそうである。資料無しで文書けるほど鮮明な記憶も持っていない。
<閑話休題>
 で「熱拳カンフークラブ」の話だが、これは中国武術漫画の泰斗「拳児」とほぼ時を同じくしている。内容も中国武術が一般に知られていなかった(今でもあまり知られていないけど)当時にしては、かなり正確に描かれている。残念ながら一巻は所有していないので最初からのあらすじは当時読んだ記憶に頼るしかないが、主人公は北風カン太郎を始めとする五人の小学生で、たしか用務員のおじさんがカンフーの達人で、最初は子供にカンフーを教えることを拒んだけれど、馬歩(中国武術の最も基本的な歩式)で何分だか我慢できたら教えるということでお決まりの特訓をして合格してカンフーを習うことになった・・・といった感じだった気がする。
 二巻では二起脚、前掃腿、後掃腿、基本的な対練(組み手のようなもの)等の基本功(基礎練習)を繰り返し、全国少年中国武術大会に出場するために訓練してゆく。この間北風カン太郎は中国から来た李黒龍少年と交流し、自ら「カマキリ拳」を創造する。だがそれは蟷螂拳といって中国武術に既に存在していた・・・というのだが、このへんがこの作品を「真正中国武術登場作」に入れられなかった要因になっている。北風カン太郎の使うカマキリ拳は既存の門派ではなく、カン太郎が勝手に考えたものなのだ。中国武術は長い歴史(蟷螂拳の出現は比較的遅いけど)の中で進歩してきたのであり、その辺の小学生がちょっとの訓練の中で作り出したものと一緒にされては蟷螂拳の先師もうかばれないであろう。さらにカン太郎が指で李黒龍を突いたとき、李の先生が「秘孔をついた」と言っている。あまり知られていないが「秘孔」という言葉は中国語にも日本語にもない。これは「北斗の拳」の原作者、武論尊が作った言葉なのだ。中国語ではつぼは「穴」といい、つぼをつくことを「点穴」という。中国武術関係の文章で「秘孔」という言葉を使っていたら、まず筆者は中 国武術についてあまり知らないと思っていい。まあ拳児や男組の作者も自分が中国武術に詳しいわけではなくて、原作者に中国武術に詳しい人をつけているのだから、「熱拳カンフークラブ」の作者魚戸おさむが中国武術に詳しくなくても別に悪くはない。巻末に熱拳カンフー道場という中国武術の先生が写真で基本技を紹介するコーナーがあるのだが、作者も先生の隣で構えた写真が出てくる。この構えは見ただけで中国武術を練習したことがないのがわかる。どちらかといえば中国武術と言うよりウルトラマンの構えである。そしてこの作品の最大の問題、それは・・・・面白くないのだ。こればかりは何ともフォローのしようがない。が、細部に問題があるとしても全国の小学生にかなり正確な中国武術を紹介したことは評価に値するのではないか・・・と思う。

追記(’98/10/29)
 三巻に出てくる「地功拳」だが、あまり聞かない門派なので作者の創造かなと思って一応手元の「中国武術大辞典(人民体育出版社)」で調べてみたら、ちゃんとあった。ちょっと引用すると

地功拳  拳種之一。亦称地[走尚]拳、地術犬法、狗拳。参見”地[走尚]拳”、”地術犬法”諸条。

とある。訳すと「拳法の種類の一種で、地[走尚]拳、地術犬法とも呼ばれる。”地[走尚]拳”、”地術犬法”の項を参照。」となろうか。で地[走尚]拳を調べてみると、めんどくさいからもう原文は省くが「滾(転がること)跌(転ぶ、つまづく)を多用するためにこの名がついた。酔拳と同源で酔拳から滾、跌の技法を抜き出したのが地[走尚]拳となったという説がある」とある。つまりぶっちゃけた話やたらと転がりまわる拳法ということですな。コミックに出てくる通りです。魚戸おさむ先生、疑って悪かったです。

(文中敬称略)

 

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