広島旅行記1―尾道

 というわけで前書きは派手に無視して早速広島県の瀬戸内海沿いを鉄路ひた走った旅行記録第一弾、尾道編をお届けする。

 山陽新幹線福山駅にて山陽本線に乗り換え、電車に揺られること30分で到着したのが尾道市。ここでの目標は熱血下士官兵戦争映画「男たちの大和」(感想は日記過去ログにて)の撮影用に建造された1/1大和ロケセットである。このセットは尾道市街の対岸、日立造船所向島西工場(3年前に操業停止している)にあり、JR尾道駅前の瀬戸内海に面した広場からもその姿を見ることができる。

 会場と市街地は海で隔てられているため、会場のある向島へは駅前にある渡舟を利用してわたることになる(歩行者専用と乗用車ごと乗船可能なものの二系統がある)。歩行者専用の渡舟は90人乗りのはしけ舟で、驚いたことに二隻がフル稼働でピストン輸送を行っていた。同乗した人のほとんどが『大和』目的の観光客で地元民(何の遠慮もなしにスクーターのエンジンを吹かしながら乗り込んでくる)と見られる人は数名程度だったから、期間限定の臨時増強体制なのかもしれない。とりあえず渡し舟は会場の沖合いを通過するため、『大和』のセットを船上から遠望することができた。
[海上より遠望]

 はしけ舟を降りると、すぐ目の前が会場入り口になっている。セットがある場所は入り口からやや距離が離れており、入り口からセットまでは無料のシャトルバスで移動することができる。出し物が出し物だけに年配客向けの配慮なのだろう。自分が到着した時は開園直後だったので待ち時間無しで乗ることができたが、帰り際にはシャトルバスを待つ長蛇の列ができていた。なお公式HPには会場の徒歩移動不可と書かれているが、何故か実際には歩行者用通路があったりする(しかし歩行者用通路を進んでいくと途中で進入禁止のロープが貼ってあった。みんな跨いで通っていたので気にせず強行突破してしまったが・・・)。

 移動シーンが長くなったがここでやっと入場となる。入場して最初に見ることになるのがこの艦首方向。セットの横では「菊の御紋章が見えるのはこの場所からですよー」と解説のおじさんが声を張り上げているが、それにしてもこのセットは上甲板レベルから上しか作っていない(映画ではそこから下は全部CG合成)ため、艦首を見てもどうもしっくり来ないのは自分だけだろうか。
[微妙に違和感ありげな艦首部]

 艦首部を回り終えると次はいよいよ最上甲板に上ることになる。入場位置は丁度艦橋の左舷側あたり(映画の大和乗艦シーンとほぼ同じ位置から入場という心憎い演出)で、入るとすぐ三連装25mm機銃のレプリカがお出迎えしてくれる。しかしこの機銃座の操作方法を考えてみると、対空射撃の命中率が数万分の一であるという事実が文句なく納得できるというものである。劇中にて機銃掃射してくるF6Fを落としまくっていた中村獅童達は凄いとしか言いようがない。ちなみに映画の資料によると稼動できる機銃座と高角砲は一基ずつのみ製作され、残りは全部レプリカであるとのことだ。
[軽トラックの荷台に乗るかな?というくらいの大きさの三連装機銃座]

 機銃座から視線を上げるとその先にあるのは第二砲塔、後述するがこのセットで唯一の『まともな』砲塔である。サイズ的には「二階建て」という言い方が一番しっくりくる表現か。口をぽかんと開けて見上げるほどではないが、旋回砲塔であることを考えれば異様に大きいことには違いない。
[第二砲塔]

 続いて艦首からの風景。なお艦首部の床は鉄板張りではなく、滑り止めのゴム張りだった。まあ安全面を考えるとその方が望ましいのだろう。それはともかく前方からの眺めは予算不足で砲身のない第一砲塔や同じく省略されている艦橋のおかげで異様な雰囲気になってしまっている。しかもこの第一砲塔、妙だと思ったらなんと砲塔左側が省略されているのがご確認いただけるだろうか。まあ映画セットなのだから仕方がないといえばそれまでのだが・・・。なお省略された左側から砲塔下部を覗き込んでみると内側の張りぼて部分が赤裸々に観察できたりする。
[第一砲塔。いろんな意味でこれは酷い]

 気を取り直して15.5センチ副砲。前に第二砲塔があるせいで心配したくなるほど高い位置に置かれている。そのせいで第二砲塔の砲身よりもよほど「見上げている」感が強い。しかし一応1万トン級の巡洋艦であれば主役を張れるこいつだが、目の前に46センチ砲塔が鎮座しているせいでやたらと影が薄い。本物の大和だと更に後ろに艦橋がそびえているわけで、往時の乗艦者にとっての前部副砲の印象は更に薄いものだったのではないだろうか。
[前部副砲。まさに脇役と言った空気が漂う]

 ここで再び三連装25mm機銃座。後ろから見ると実機にも通じる照準装置のダメっぽさがひしひしと感じられる。ちなみに映画セットは外見だけなので給弾機構のような細かい部分は作られておらず、それっぽいカラクリすら省略されている。
[家に帰って資料と見比べてはじめて判るレプリカっぷり]

 この後左舷側の機銃・高角砲群の横を抜けると、そこで艦上見学コースは終点となる。セットは艦前半から後楼あたりまでの全長170メートル分しか作られておらず、その先は瀬戸内の海面が広がるのみである。なおセットから降りた先には映画撮影に使用した小物の展示コーナーの置かれた建物があり、巨大な飯炊き釜や劇中で作られたヒロインの似顔絵などが展示されていた。
[艦橋と煙突は脳内補完するしかない]

オマケ

 ロケセットの横にあった二万トン級ドック。全長180m、全幅33m、深さ10m。乾ドックなど普段一般人が立ち入れるような場所でもないわけで、物珍しかったためついでに写真に収めておいた。この造船所は3年前に既に操業を停止しており、現在は放置に近い状態のようだ。もともと大正期に設営されて拡充を繰り返しながら運用されてきたドックだけに、そこかしこに錆が浮いているわ底部にススキが生えているわで廃墟萌えには溜まらない雰囲気を帯びていた。
[2万トン級ドック跡]
[ドック底に生えるススキが廃墟萌えにはたまらない]