ある日の情景
ゴゥンゴゥン…と聞きなれた機会音と日の光に目が覚めた。
「んっ…」
小さく伸びをすると隣で小さく身じろぐ気配を感じ視線を落とす。
「あ、そっか……僕たちハンガーで寝ちゃったんだ。」
ちょっぴり苦笑すると普段見られないようなあどけない顔で寝ている舞を見てぽややんと微笑む。
右手の多目的結晶を見て時間を確認した。
(授業まではまだ時間があるし、もう少し寝かせてあげようかな…)
確か寝たのもすでに夜の空に明かりが差して来た時間帯だったと速水は思い起こす。
体中を支配する重い疲れのせいかすぐに起き上がるのも億劫でそのまま舞を見つめていた。
そっと髪を撫でる。
意外と柔らかな髪が指に絡まり、撫でられて気持ちいいのか口元に小さく笑みを浮かべるのを見て
心の中が暖かな物に満たされていくのを感じた。
(…だから今度こそ無くさない……僕たちで世界を救うんだ…舞……)
「必ず…生き延びてやる……」
決意を秘めた声音で小さく呟くと舞が口を開いた。
「大丈夫だ…我らがいる限りこの戦いは負けぬ。」
ゆっくりと上体を起こす舞にちょっぴり照れたように微笑む。
「ひどいや、いつから起きてたのさ」
速水がそう言うと、困ったような怒ったような顔をして速水を睨み付け、
「…知らぬ、そもそもお前が妙な…事をしているせいで起きれなかったのではないかっ」
拗ねた様に赤くなり視線を逸らす舞にきょとん、として速水は首をかしげた。
「妙なことって…」
「知らぬ、知らぬッ!!か、髪を撫でるなど……そのような事…他の者に見られたらどうするつもりだ…」
「大丈夫だよ、こんな早朝にハンガーに来るような人いるわけないよ。」
ぽややんと笑いかける速水に視線を戻すとそれでも目尻を紅く染めたまま勢い良く立ち上がると
「顔を洗ってくる!!」
と、ドスドスと音を立てながらハンガーの階段を下りていった。
「あー…もっと優しく降りないと階段壊れちゃうよ?」
「知らぬ!!」
一瞬本気でこのぼろぼろの階段を心配して声をかけると更に怒ったような声が返ってきて速見は肩を竦めた。
暗いハンガーの中に白く浮かび上がる士魂号を見上げた。
僕は…僕らは…この永遠に終わらない戦いを今度こそ終わらせなくちゃいけない…
「その為に、君たちにも力を貸してもらうよ」
蒼い目を細めそっと白い機体を撫でるとそれに反応するようにゴゥン…と機械音が大きくなる。
外からざわめきが聴こえてきた。
「あ…もうそんな時間っ?」
慌てて多目的結晶を見やると制服を羽織り外に駆け出す。
朝日が眩しく瞳に突き刺さり、目の前に手をかざしながら薄く目を開けると白い世界の中に舞が悠然と立っていた。
「遅いぞ、厚志。」
いつも通りぶっきらぼうに言い放つ舞にぽややんと微笑む。
「あはは、ごめんね。ちょっと考え事をしてたら、ね…」
最後に僅かに表情を曇らせる速見を見て、舞をゆっくりと口を開く。
「考えることなど無意味だ。そのようなことをする暇があるのならば行動に移すがいい厚志。
結果の出ない努力など無だ。
覚えておくがいい、厚志…」
そういうとくるりと踵を返し校舎へと歩いていく。
「ま、待ってよっ」
慌てて舞を追いかける。
もうすでに生徒の姿はまばらであと少しでHRが始まってしまうような時刻だった。
…空を不意に見上げる
…空は幻獣さえも遠ざけるほどの澄んだ青さを湛えていた。