……すぐには殺さない。


ボーン・コレクター






◆ 評点――――★★★★

◆ リンカーン・ライム…………デンゼル・ワシントン
◆ アメリア・ドナヒー…………アンジェリーナ・ジョリー
◆ セルマ…………………………クイーン・ラティファ
◆ ハワード………………………マイケル・ルーカー




≪ あらすじ ≫

NY市警のリンカーン・ライム(デンゼル・ワシントン)は、かつて全米でも随一の 犯罪学者だった。 ……だが職務遂行中の不慮の事故によって、致命的な負傷を負い、 以後は手足の自由を奪われてしまう。
動かせるのは、肩から上と、左手の人さし指のみ。 時折起こる自律神経の発作に 苦しまされ、植物状態になる前に安楽死をと考える日々。
一方、パトロール警官アメリア・ドナヒーは、やるせない日々の中で、充実を知らぬ 生活を送っていた。 暗い過去が、彼女の心をいまだに縛っている。
そして無線連絡により急行した犯罪現場で、彼女は無残な変死体と、奇妙な犯人の メッセージに遭遇する。

この奇怪な事件は、リンカーン・ライムのもとに持ち込まれる。 明晰な頭脳を駆使する彼の指揮下、現場鑑識の才があると見込まれたアメリアは、 四肢の動かぬ彼に代わって、現場の検分を行うことに。

次々に犯行を重ね、そのたびに警察に向けて 難解なメッセージを残す犯人。
一人、また一人、犯人のコレクションが増えていくのを、ライムとアメリアは協力 して追い詰めようとする……。




1回目はレンタルビデオだったのですが、おもしろかったので自腹を切って中古 ビデオでゲットしました。 再度観たら、また別の楽しみが♪ 内容の濃い作品です。

実はあの、読んでいると手首が疲れてくるほど分厚い本で、内容はすでに読んでは いたのですが、それでも楽しめました。 小説と映像との、表現の長所の差が、 うまく活かされていると思います。
小説は想像力を刺激する文章で攻め、映画では音楽と映像の巧みな切り替えで、 こちらを引きずり込んできます。 どちらも、パワーのある作品です。


わたし好みのサスペンスフルな展開を語ろうとするとネタばれになりそうなので、 他の観点から攻めてみます。

話の展開もうまいんですが、なにより粋なのは、ライムとアメリアを巡る、温かな 人間関係ではないかと思います。
ライムとアメリアの関係も、もちろんきれいな雰囲気なのですが。 脇役さんたち が、いい味出していると思います。 ライムを信頼している、人の好い刑事さん& 鑑識班のみなさん。 ライムの介護を担当する、気のきくセルマ。

『主役が魅力的な話は、それだけでおもしろい』と、どこかで聞いたのですが…… 脇役好きのわたしとしては、脇役さんの魅力は重要ポイントです。
やはり外国映画の常として、ちょっと洒落のきいた会話が、殺伐としそうな空気を 和ませています。 そして相変わらず、伏線の張りかたも巧みです。

『ER』とかを観ていても思うんですが、やはり会話のおもしろさを、作品の重要 ポイントにしてしまう傾向があるようです、わたし……。 別にギャグギャグである 必要もないのですが、深みのあるやりとりが好きなので。


犯行現場の雰囲気が、暗くてやばそうで、素敵ですな(おい)。
あの暗がりになにかいそう……という雰囲気が、なんともはや。 うちのホラー嫌い の妹は、『怖いからいや』と、あまり観たがりませんが。
それにしても、廃工場とか無人街とかが多いですね、アメリカって…………国土が 広いから、わざわざ使わなくなった建物を壊す必要がないそうなんですが……それ にしたって、犯罪の温床になり得ますよあれは。

あ、死体の造りかたがうまかったですね。 ……って、正真正銘、死体らしい生の 死体というのは、一体しか出ませんでしたが。 ライムやアメリアの回想を過ぎる 白黒映像中の死体が、とても死体っぽいです。 もしかしたら本物かもしれません ……とか脅してみたり。

冒頭から見せつけられる、犯人の精神的な暗黒が、そこここに救いようのない陰を 潜ませています。 意外っちゃ意外な犯人でした。 全然犯人ぽくないので眼中外に していた人(以下自主規制)。




ちょっとネタばれです。 要注意。

作品中で出てきた、挿絵付き犯罪実録『BONE COLLECTOR』という本 ……読みたい! 作品用に創られたものとわかっていても、本気で読みたくなり ました。 いまなら原書でもOKです。 原書だって、結構根性で読めます。



◆ 原作…………ジェフリー・ディーヴァー(文藝春秋刊)
◆ 監督…………フィリップ・ノイス(『今そこにある危機』)