白雪姫






昔々、あるところに、それはそれは美しいお姫様がおりました。
雪のように白い肌を持ったお姫様は、「白雪姫」という愛称を持ち、人々に愛されており ました。
しかし、王妃は白雪姫の美しさを妬み、暗殺を謀ったのです。
白雪姫は命の危機を感じ、お城を出て七人の小人達と一緒に、森で暮らしておりました。




さて、ここはお城の、王妃とその側近のみの知る、秘密の地下室です。
王妃はそこで、壺に入った妖しげな薬をぐつぐつと煮込んでおりました。
「ふむ、これであとは醤油をさっとかけ、コトコトと煮て出来上がりか……。 うむ、美味そう だ。 意外と簡単だったな」
……って、ロスメスタさん!? なに料理なんてしているんですか!!
ちゃんと毒を作ってくださいよ!! というか、毒はどこにやったんですか!!
「王妃様……? あの、白雪姫を抹殺する薬を作っておられたのでは……?」
そうですよ、ロスメスタ! グイランの言う通りです!!
「薬? ああ、あの緑色の物体か。 不味そうだったし、捨てたぞ」
なにぃ!? 捨てただぁっ!?
あっ、あなたって人は、何ということをするんですか!!
「……まあ、確かに不味そうでしたが……。 まあ、王女がそう判断なされたのなら仕方あり ませんな」
仕方なくなどありません!!
それに、王女でなくて、王妃です!!
グイラン、あなたはロスメスタに甘すぎますよ!!
だいいち、あの壺いっぱいの青汁を買うのに、いくらかかったと思っているんですか!?
せっかくあまりの不味さに死んだって設定だったのにぃ!!



……と、とにかく、ロスメスタは憎き白雪姫を抹殺するべく、毒を作っていたのです。



――――思えば、ロスメスタがここまで白雪姫を憎むのは、これがきっかけでした。
ある日、ロスメスタはいつも通り鏡の精に、こう問い掛けました。
「おお、フェイロン。 今回は鏡の精だったのか」
すると鏡の精はこた……って、ええ!?
ちょっ、ちょっと! そんな世間話なんてしないで下さいよ!!
「ああ、結構面白そうだぜ。 あはは、ロスメスタはまた悪役か!」
「そうなのだ。 何故このぼんくら作者はわたしの良さがわからぬのか」
無視しないで下さい! 今回はちゃんと台本に従うと、約束したではありませんか!
良いですか、ロスメスタさん。 「鏡よ鏡。この世で一番美しいのは誰?」です!!
「となると、白雪姫役はまたパジャになるのか?」
「あはは! それがさあ、パジャが死ぬほど嫌がっちまって、今、王子役だった筈の兄ちゃん と白雪姫役をどっちがやるかって、熾烈な戦いをしているぜ。 しかも方法がジャンケン!!」
「ふむ……、オルジェイ殿の女装もなかなか見ものだな。 しかし、たとえジャンケンに 買っても王子役ではないのか? ……まあ、女装よりはましということなのだろうが」
って、ああ!! なに無視した挙句、序盤からネタバレな会話しているんですか〜!?
「姫、フェイロン殿。お茶を持ってまいりました」
………………。
もう! あんたたちなんて、勝手にしてなさい!!


えっと、とにかく! 世界一の美女の座を奪われ、王妃は白雪姫を殺す決意をしたのです!!


さて、ところ変わって、ここは白雪姫の暮らす森の中です。
白雪姫が花摘みをしていると、七人の小人たちが、木こりの仕事から帰ってきました。
「ただいま、白雪姫。元気にしてた? ……って、伯父さん!?」
「白雪姫、何事もなかった? ……って、オルジェイ様!!そ、その格好は!?」
小人のユンファとテンシャの問いかけに、白雪姫――――オルジェイは答えました。
「見るな!見るのではない!! どっかいけ〜!!!」
……あ〜あ、もうオルジェイさんったら、ジャンケンに負けたんですから、おとなしく白雪姫 してくださいよ。
それに、美人ではないですか♪ 恥ずかしがんないで大丈夫ですよ♪
「なに、今回は船酔い男じゃなくて、あんたが女装なの!? 男の女装なんて、情けないったら ありゃしないわ!!」
「全くだ。 我も、ソラスだったら許せるが、男の女装なんて吐き気がする」
こ、こら!! ユメもツェーリも、ますますオルジェイさんを追い詰めるようなこと言わないで下さい!!
前回みたいに逃げられたら、どうするんですか!!
「……でも、お兄ちゃん、綺麗よ」
「――――アルマ!? 帰ってきたのか!?」
「ううん。 作者が、『七人も小人がいるのに、人なんて選んでられん!』って言って、無理矢理 出させたの。 馬鹿よねぇ、あたしの口調も知らないくせに」
う、うるさい!!
「……あたしも、頭数そろえるために、前回は見向きもしなかったくせに、今回は呼ばれたの」
「僕もです。 人選にこんな苦労するのなら、最初からこんな劇やらなければ良いという のに」
チェリンカちゃん! そう言わずに!!
アンクも、ぐだぐだ言うでない!! あんたはお姉さま達に受けるんだから、ぴったりなのよ !!
「また騒がしいメンバーがそろっているな……」
オルジェイさん、とにかく、劇を始めてください!!
与えられた仕事はやり通すのがあなたという人でしょう!?
「……仕方ない。――――ええ、なにもなかったわ。心配かけてごめんなさい」
…………気持ちわるっ。
おえ〜、え、えっと、……やっぱこうくそ真面目にらやれても気持ち悪いですね……。
「伯父さん……?」
「オ、オルジェイ様。ちょっと、その女言葉だけはご勘弁を……」
『おえぇ〜』
あ、やっぱみんな気持ち悪そうに……。
「笑うな! 私だって嫌だ!……くそ!あの時パーを出していれば……!」
…………うっへぇ、やっぱ今回も失敗になりそうな予感がひしひしとします…………。



さて、オルジェイがいつも通り、一人で家の前を竹箒で掃いていた時です。
一人の腰の折れ曲がった老婆が、真っ赤なりんごの入った籠をもって、オルジェイの前にやって きました。
老婆は、オルジェイに笑いかけ、
「くくく……。 オ、オルジェイ殿、意外と似合っているではないか!!」
って、爆笑しないで下さい!! 「笑いかけ」ですってば!!
「王女、笑わないで下さい! はっきり言って、本気で恥ずかしいのです!!」
あ、こら、オルジェイさん! だから、王妃ですってば!!
――――とにかく、ロスメスタさん、ちゃんとセリフを言ってくださいよ!! そんな事ばかり していると、次から役さえも与えませんよ!!
「!? ……こほん。のぅ、美しいお嬢さん、りんごはいらんかえ?」
ふうっ。 やっとまともにセリフを言ってくれましたね。
「まあ、美味しそうなりんご……って!?これはなんですか、王女!?」
……へ?何があったのですか??
って、なんですか、その籠の中身は!!
「何か、だと?もちろん、わたし特製の筑前煮だ。 毒を捨ててしまってな。りんごも、フェイ ロンと二人で食べてしまったのだ。 なあ、どうせふりなんだし、筑前煮でも大丈夫だろう」
「大丈夫だろう」じゃないぃぃっ!! ちゃんと毒は作り直せといっといたのに!!
どこの世界に、筑前煮を食べて死ぬ白雪姫がいるというんですか!!
「ほう、王女の手作りですか? 美味そうですな。 どれ……。 あ、美味い」
あ、食べてる……。 しかも、ご丁寧にちゃんと倒れてくれちゃって……。
ったく、完璧に童話の世界から外れているぞ、この話……。 はあ〜。



――――王妃の罠にかかり、死んでしまった白雪姫。七人の小人たちは悲しみ、彼女を埋葬 します。



「ああ、白雪姫。 こんなに若くて美しいのに、死んでしまうなんて。 可哀想に」
「……可哀想」 「せっかく一時的だけど帰ってきてあげたのに……」
ユンファやチェリンカ、アルマが泣きながら白雪姫の棺桶に花を添えます。
……って、アルマさん? 台本と違うんですけどねぇ。
「これが現実でしたら、いくら王女でも許せませんが、まあ、劇ですし、許してあげますわ」
「なによ、別に劇なんだから、こんな奴いくら死んだっていいじゃない!」
ちょっと、テンシャにユメ、話題がそれていますよ?
「確かに、いかに被害者がエンレッド神王家のものとはいえ、毒殺などという卑怯な真似は許せん な」
「まあ、犯人は王妃で間違いないでしょう。 動機は怨恨。本庁の方に連絡をとって、ガイシャ の遺体は鑑識へ……」
って、こらあぁぁっ〜〜! いつから刑事ドラマになったあぁぁっ〜!!
ツェーリとアンク! 特にアンクはふざけるんでない!!
ったく……、馬鹿ばっかだああ〜〜!!



そんな時、白馬に乗った一人の貴公子がやってきました。
彼の名はパジャ。 隣国の王子で、オルジェイを愛していました。
「王子様! 白雪姫が大変です!!」
小人たちは、パジャにオルジェイの訃報を伝えます。
話を聞いたとたん、パジャの顔色が変わり、オルジェイの棺桶へと走り寄りました。
小人たちがそんなパジャの様子を痛々しげに見ていると、
「はっはっはっ。 オルジェイのやつ、女装にあっているじゃないか! うくくくく…………」
という、パジャの悲痛な叫びが……、って、またあなたは!!
パジャさん、あなたときたら、いつも台本に逆らって! 今回は前回よりはまともでしょうが !!
――――ああ、もう、言いそうにないですね!
えっと……、パジャは「おお、私の愛しいオルジェイ。 なんという姿になってしまったのです !!」と嘆き悲しみました。 そして、オルジェイの冷たい頬をそっと撫で、「ああっ、でも、 しかし! あなたはまるで、生きているように美しい」といい、口付けを交わしました。
……って、ホラ!! 見せ場なんですから、こんくらいちゃんとやって下さい!!
「口付け!? ふざけるな!!」
なんですってぇ!? しょうがない!
小人たち! パジャに力付くでも良いからオルジェイと口付けさせたら、次ではセリフをぐんと 増やすわよ!!
『!!!???』
…………おお、効果抜群。
パジャもあとちょっとで落城だな♪
「うああぁぁっ! や、やめろぉ〜!!」
うんうん、あとちょっと♪
……って、ぎゃああ〜!!
い、今のは一体……? あ、なんか皆も倒れている……!?
「あ〜な〜た〜た〜ちぃ〜!!」
あれ、テンシャ……? なにメラメラと怒りに燃えて……?
「事もあろうに、オルジェイ様に男と口付けさせるという悪巧みに荷担するなんて! 許さない、 絶対に許さない!! 罪の深さを思い知りなさい!! 風よ! オルジェイ様以外全て切り裂いて しまいなさい!!」
えっ!? ちょっ、ちょっと、テンシャ!? 落ち着いて!!
ああ! カマイタチが迫ってくるぅ〜!!
ざしゅっ!! ぎゃああああ〜!!
……や、やっぱり今回もダメだった…………。
ごふっ。


「た、助かった……。 テンシャ、すまなかった……」
「そんな、オルジェイ様、当然の事ですわ」
あ……、しかもオルジェイさんとテンシャ、またいいムード作ってるし…………。



ああ! もういいや!
ということで、白雪姫は生き返りましたが、王子と結婚しませんでし た!!
めでたくなしめでたくなし!!
以上、完!



ったく、ああ、えらい目にあった。 ……って、オルジェイさんとパジャさん? 何二人で 仲良さそうに握手を交わしているんですか?
『……知りたいか?』
ぞくっ。
い、いえいえ!! いいです、結構です!!
「まあ、そういうな……」
「私と、パジャ。 今回の事には二人一致した意見をもってな……。 協定を結んだのだ」
どんな? ……って、いえ! やっぱいいです!!
では、さようならっ!!!
ぐぁしぃっ!!
こ、この異様にでかい効果音は……?
ああ、やっぱ何か掴まれているぅっ!!
「そう急ぐな……」
「協定の内容を教えてやろう……」
ひ、ひいぃ〜!!
『お前を殺す協定だあ〜〜!!!』
ごづっ! くごがぁっ!ばぎぃ!ぶすぶすぶすっ!!
「ふうっ、すっきりしたな」
「全くだ。 いい汗をかいた」
『はっはっはっ』


舞台には前回同様、血まみれになった、ボロ雑巾のような無謀にて命知らずな作者のみが 残った。
ハゲワシが作者の死体をついばみにやってくる。 作者は動かない。
作者の生死は定かでない…………。






< END >




今回の名科白。
ツェーリさん「ソラスだったら許せるが」(女装が)
…………個人的には、あの筋骨隆々なお体で 愛くるしいドレスはまとって欲しくないんです が……。

最後のオルジェイ様ステキ(笑)。 やっぱりあの錫杖は、専用武器だったんですね!(違ー!) 今回は災難でしたが、やっぱり最後にはおいしい思いをしているぶん、たぶんパジャよりは ハッピーであらせられることでしょう(ホントか?)。

あすか様、死なないでくださーい(笑)。
ああ、今度のストーリーは、『美女と野獣』なんてどうです?(提案すな)


――――JUELS