日本猿に寄せる複雑な思い

私が高校生の時の話。

林間学校か何かで、ハイキングがありました。
その山には野生のサルが多数生息しており、それがウリでもあったようなところでした。
山道のいたるところにサルが徘徊しており、通って行く人間達を
虎視眈々というような目で見ておりました。

サルは、私達人間の荷物を狙っているのです。
そういえばハイキングの前に、先生から注意がありました。

「サルに荷物を盗られないように、上着の下に隠して通れ」

しかし私は先生の話などまるで聞いていませんでした。
私というやつは、表面では熱心に耳を傾けている風に装っていても、
実は聴いていないという種類の人間だったのです。
そして私はおろかにも、スーパーのビニール袋のようなものを両手に下げて持つという、
餌食な装いでハイキングに臨んだのです。
友人達はそんな私を見て「やめろ」と止めたようですが、
それも私は聞いていませんでした。(大馬鹿者)

悲劇は起こるべくして起きました。

おろかな私はサルの横をからかいながら通りました。
ふと、片方の荷物が重くなりました。
見ると、荷物にサルがぶら下がっているのです。
回りはびっくり騒然となりました。私はぶら下がっているサルと
しばらくにらみ合いました。
サルとは目を合わせないように注意されていましたが、今この瞬間は
サルと目を合わせるべき時のような気がしました。
勝敗が決する間もなく、突然スーパーのビニールのようなバッグは
持ち手のところから切れてしまいました。サルの体重に耐えきれなかったのです。
山道から、斜面を転がり落ちるサル。
私はそれを変に冷静に眺めていました。
中にあったおやつや、昼の弁当などが次々とたくさんのサル達の
口に運ばれて行きます。
チューインガムを食べるサルを見て、「それは食べちゃあいけないんだけどなぁ」
などといらん心配をしたりもしました。

あらかたサルが去ると(笑)、どこかのクラスの男の人が荷物の
残骸を拾ってくださいました。
私は呆然としていたので、ちゃんと御礼を言ったのかよく覚えていません。
そんなわけで昼頃、目的地の沢にたどり着くと、ふと気付きました。

「あ、弁当ねぇや」

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そんなわけでサルを見るとちょっぴり複雑な気分になってしまいます。
青春時代の切ないお話でした。

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