『 魔法少女アイ2SS  凡人対超人対異邦人 』



窓の外には青い空。
快晴薫風言う事なしの爽やかな夏。
部屋には愛しい彼女の香り、身分は気楽な大学生。
平和な日々を噛み締めて。

 岡島秋俊は、昨年の同じ頃とはまさに天と地ほども異なる幸せな8月を迎えている、はずであった。
・・・いや。事実そうだったのだ、つい昨日までは。

 メグ姉ちゃんを管理人に迎え、なんだかんだで結局同じ大学を選んだ紫や、一足二足先に社会人の道を
選んだ宮広が入れ替わり立ち代り構ってきて、なぜか意味無く戻ってきたリンに食費を圧迫され・・・いや、
それは取合えず置いといて。

 4年前から繋がっていた絆の人。加賀野愛ことアイと、いわゆる幸せな同居生活って奴を始めたのが数ヵ月前。
まさに、漫画にでも出てくるような男の至福を味わっていた秋俊だった。

 そんな、平和な日常が続いたある日のこと。
 大学も夏期休暇に入り、既に10時を回ったこの時間までのんびりと朝寝を楽しんでいた秋俊のまどろみを突き破り、
ドアを蹴倒すようにリンが部屋の中へ飛び込んできたところから、全ては始まった。

「アイーーーーーーーーーーーーッ!・・・て、この馬鹿いつまで寝転がってんのよ不良学生っ!アンタみたいな
若者の怠惰と自堕落が世界の明日を暗くして、ひいては猪口才なゆらぎなんかの温床になんのよっ!あ、そんな
ことよりアイどこよ、アイ!」
 寝ぼけまなこをこすりこすり起き上がった秋俊の大脳に10%も保存されないような、マシンガンの如き悪態を
並べつつ、きょろきょろと辺りを見回すリン。
「・・・っせえな朝っぱらから、何なんだよ一体全体・・・」
「だーーーっ、るっさい!アンタに用は無いのよ、アイはどこいっちゃったって訳、こんなときにっ!」
「たった今起きたばっかりの俺が知るかよ、そんなこと!」
「だぁらっしゃい!だったら黙ってろっての!あーあ、そのザマ紫や美景に一目見せてやりたいもんね。
つーかアイもアイだわ、こんなスットコドッコイ放置してたらどこまでねじくれるか判ったもんじゃないんだから、
曲がりなりにも恋人なら恋人らしく、ちゃんと生活の一つも管理しとけっつーの!・・・でぇ?そのアイはいないと。
チッ、使えないなぁ。ほんじゃ、こんな寝太郎の魔窟に長居は無用だわ、メグ姉さまにでも相談してみるか・・・
じゃね!」

 疾風のように現れて、嵐のように言葉の暴風を撒き散らすや、ふたたび風に乗って消えていくリン。呆然とした
まま一人取り残された秋俊だったが、さすがにいまさら、ましてこの時間から2度寝する気にはならなかった。

「・・・なんだったんだ、今の・・・」

 訳も判らず叩き起こされた不快感と、わんわんと耳に残るわめき声の余韻を洗い流すように、冷たい水で顔を
洗い流すことにする。

 ・・・ぬるかった。

 半日使われていない、夏場のアパートの水道水を甘く見ていたことに後悔しつつ、まだ寝惚けていた頭を数回
タオルで拭う。2、3度ぶんぶんと頭を振りまわすと、ようやく五感が働き始めた。

(そういや、リンがアイに用ってのは何だったんだ?俺をスルーしてメグ姉ちゃんに相談ってことは・・・)

 まさか、またゆらぎだの妖獣だの、「その手の問題」でも起きたというのだろうか。1度出たら50年は出ないと
いうのがゆらぎの発生則らしいが、秋俊の乏しい経験に限れば1匹見たら50匹は出てくる、ゴキブリ並の大量
発生をするのが奴らの常であった。異界の記録でもレアな部類に属するアクシデントに立て続けに遭遇して、
尚且つ生き残っているというのは、運が良いのか悪いのか。

(けど、それにしては危機感、って風でも無かったよなあ。ま、アイツに限って弱音を見せたりするはずも無い
だろうけど)

 先ほどまでのリンの様子を思い返してみる。と、そうこうしている内に、玄関のドアが静かに開く音がした。
「ただいま・・・。・・・あ。秋俊、起きてたんだ」

 落ちついた、それでいて優しさの混じった声。振り向くまでも無く判る、アイの声だった。

「お帰り。・・・どこ行ってたんだ?なんか、リンがついさっき探してたぜ?」
「うん。ちょっとそこまで・・・お昼買ってきたよ。・・・リン、どうしたんだろう」
「おう」
 自分にとっては朝飯なのだが、アイのぶら下げていたコンビニの袋を受け取り、ごそごそと中身をあらためる。
「お、ミネラルウォーター」
 眠気覚ましに丁度良く冷えたペットボトルを取り出すと、”新発売”と書かれたタグを破り捨て、さっさと口を
開ける。喉から胃の腑へ落ちていく、冷たい感覚がなにより心地よい。

 リンが再び飛び込んできたのはその直後だった。
「あ、見つけた!どこ行ってたのよアイ・・・ま、いいや。あのさ、アンタに聞きたかったことがあるんだけど。
美景の電話番号って知ってる?」
「宮広美景?」
 それまで穏やかだったアイの表情に、さっときつい色が差す。昔から、どうもアイと宮広とは犬猿の仲だ。
幾つか理由はあるのだが。
「なんだよ、宮広の電話番号だったら俺に聞くほうが早いじゃねーかよ」
 アホかこいつは。走ってからものを考えるような奴だから、物事の繋がりを無視して無駄な手間を踏むんだ。
 そんな思いに捕われながら、いささか乱暴な口調になる秋俊。
「美景がアンタに教える訳ないでしょ、ただの人間なんだから」
「ただの人間?」

 あっ、と、リンが思いっきりしまった、という表情をする。アイが、呆れた、という表情を隠さずそんなリンを
眺める。

「・・・おい」
「・・・」

「・・・ただの・・・人間、って、おい・・・一体、どういうことだよリン!それ・・」
 不意打ちを食らったような気分だった。急速に胸の内に不安感が膨れ上がって来る。夏場の只中だって言うのに
腹に入ってくる空気がやけに冷たく感じる。・・・なんで・・・冷や汗・・・?

「おい、リン!」
「・・・」
「秋俊・・・」
「あ・・・アイ?アイは知ってたのか?何なんだ、どういうことだよ?全部終わったんだろ?そりゃ、ゆらぎってのは
必ずどこかで生まれるもんなんだろうけど・・・宮広は、アイツはもう何の関係も無いんだろ?違うのかよ??」
 思わず強く、アイの肩を掴んでしまった。痛そうな顔を見せたその仕草に、慌てて反射的に手を離す。
「秋俊、落ち着いて聞いて。・・・宮広美景は・・・」
 
 その時、唐突に背後で声がした。

「−必要無いわ。・・・岡島君には、私から話す」
「!?」
「美景?」
「宮広っ・・・!?」

 3人が3人とも、言い合わせたように振りかえった。秋俊の視線の先に立っていたのは・・・申し訳なさそうに眉を
ひそめて自分を見つめる、かつての級友宮広美景と、その後ろに寄り添うメグ。

「・・・ずっと、黙っててごめんね、岡島君」
「あ?」
 唐突に切り出した宮広に、訳が判らず間抜けな声を返してしまう。が、間抜けな表情と声とは裏腹に、その宮広の姿を
見た瞬間、張り詰めた何かが自分の胸に広がっていくのを秋俊は感じていた。
「・・・どういう・・・?」
「・・・私、まだ・・・・・・・・・なの」
「?」
 よく聞き取れなかった。だが、何を言おうとしていたのかが、記憶の底から一気に呼び起こされる。
−寝て居ろ俺の記憶!終わった、もう終わったんだぞ!!
が、口は勝手に次を促していた。

「な・・・んだって・・・?」
「その・・・わたし、まだ・・・ゆらぎ、なの」

 本当に。本当に申し訳なさそうに、顔をうつぶせたまま、ぼそぼそと呟くように漏らす宮広。だがその小さな声は、
ぶん殴られたほどの衝撃で秋俊の脳を揺らした。その揺れが収まる前に、リンが申し訳なさげに宮広に向き直る。
「・・・ごめん、アイが悪いんだ、アイがきちんと美景の電話番号知ってれば、こんなことには」
「・・・それは筋違いだと思う。そもそもリンが忘れたりするのがいけない」
「ぬぁんですってぇ!?」
「まあまあアイちゃんもリンちゃんも。秋俊ちゃんに隠したまんまにしよう、って決めたのは私なんだから、このメグ
お姉さんが悪いってことで丸く収めて♪・・・で、美景ちゃんもそんな暗い顔しないしない、秋俊ちゃんはそんなの
気にしないって、大丈夫」

 なんだか良く判らないが、自分を放置して勝手に話が進んでいることと、そして・・・

「・・・宮広が・・・ゆらぎ・・・?」

 半ば呆然と、そして半ば判っていたような声で、秋俊はもう1度反芻してみる。
 ・・・1年前。
 いや、正確には4年前から1年前までの3年間。「あの事件」からこっち、宮広美景は「ゆらぎ」だった。それは
昨年の騒ぎの際に彼女自身の口から聞いたし、実際にゆらぎとしての宮広とも秋俊は対峙している。3年の間、
まったく人間と変わらぬ生活を過ごしてきたことを考えれば、宮広は曲がりなりにも、人外の身である自分を
きちんと制御して来れた訳で、いまさら彼女がゆらぎであることを警戒するとか、危険視するであるとか、そういう
心配は無いといえば言える。

 ・・・しかし。

「そ・・・それは去年、もう解決したんじゃなかったのかよ!?だからアイ達は『向こう』の問題を解決しに、帰ること
が出来たんじゃなかったのかよ?ゆらぎって・・・ゆらぎってそんな・・・」
「や・・・やっぱり嫌だよね、こんな化け物・・・」
「ち・・ち・・・違っ、そ、そうじゃないっ!え・・・えっと・・・」

 平穏に慣れた頭に、いきなり叩き込まれた事実を受け止めきれず惑乱する秋俊と、ますます萎縮する宮広。
この2人では話が進まないと判断したのか、さっとメグが割り込んだ。
「うーんとね、うまい例えが見つからないんだけど、ワクチン・・・というか、毒を持って毒を制する、というか」

 良く理解出来ないぐらい混乱していた頭だったが、メグの話を要約するとこういうことだ。
 宮広という人間は、どうも「ゆらぎ」の弱い芽を呼びこみやすい体質らしい。その原因が当人の精神的問題・・・とは、
敢えてメグは口にしなかったが。で、例え取り除いたり、封印したりしたところで、いずれ又新しい「ゆらぎの赤ちゃん」
を呼び入れてしまうのが目に見えているので、今現在自分で制御出来ている力を、敢えて封印せずに置いているらしい。
誇ることでも、自慢することでもないにせよ、彼女に眠るゆらぎの力は忌まわしい蟲毒を生き残ったほど強い。おいそれと
そこらのゆらぎに憑かれることもないだろう。

 そして。その代わりと言っては何だが、わざわざメグやリンまでがこちらの世界に戻ってきているのは、その宮広の
いわば経過監視役、といったところの役割だということ。そして又同時にそれは、ある意味で、宮広を囮にする一面も
あった。昨年の事件で、製薬会社アルケーによって蒔かれたゆらぎの種は半端な数ではない。一万を越す人間を動員した
イベント・・・蟲毒のために、ほとんどのゆらぎが「回収」されたとは言え、その手を逃れた連中がどれだけいるかは
掴めていない。それらの調査と「後始末」も、彼女達の派遣理由の一つだった。
 リンがアイに聞こうとしていた電話番号というのは、だから「そのこと」専用の携帯電話の番号だったのだ。

「・・・だって、ね。ゆらぎの基になる弱い心なんて、本当は誰だって持ってるものだもの。自分で認めているか、忘れよう
としているかは別として、ね」
 そう最後に呟いたメグの相貌に、一瞬寂しげな表情が浮かんだが、秋俊は敢えて見なかったことにする。それより。

「でも、それじゃああんまりじゃないかよっ!宮広が・・・宮広が、何だってそこまで背負わなきゃいけないんだ!そりゃ、
そりゃあ無関係じゃないかも知れない・・・けど、けどそれじゃっ・・・一生宮広は、こんなクソくだらない荷物なんかを
背負ってかなきゃいけないのかよっ!」
「秋俊・・・」
 アイが、気遣わしげな視線で秋俊の顔を見つめる。

「良いの、岡島君」
「宮広・・・!ぐぶれぁっ?!」
「ったくこの馬鹿!だーかーらー、この天才魔法少女のリン様までわざわざこんな魔窟に舞い戻って、さっさと残りの
ゆらぎ共を片付けに来てやってんじゃないのっ!一人だけ自分勝手にテンパッた面すんのも大概にしとけっつーの!!」
 ゲシッとリンの飛び蹴りが、秋俊の腹にめり込んでいた。
「・・・ぐぅっ・・・うぐ、て、てんめぇ・・・い、今の空きっ腹にズシリと・・・」
「大の男が可憐で華奢な美少女にちょっと突かれたぐらいでガタガタ抜かすな!」
「秋俊、大丈夫?」
「お、岡島君大丈夫!?」

 腹をさすりさすり、片手の指でぐっとOKマークを出す岡島秋俊、漢でござる。

「だいたいねぇ、そんなこと聞いたぐらいで取り乱すような情けないアンタだからこそ、これまで教えなかったんじゃない!
ハッ!それを何よ、自分が無為無力なのを誤魔化したくて逆ギレ?甘えんのもホントいい加減にしなさいよ、去年から全然
中身が入れ替わってないんだから・・・頼られたきゃそれなりの分別見せてみろ、ええ?岡島秋俊2浪の大学1年生っ!」
「ぐっ」
 相変わらず冴え渡るリンの毒舌。どうやら漢への道はまだ遠かったらしい。

「んふふっ、でも、秋俊ちゃんのそーゆーところが、アイちゃんや美景ちゃんが着地出来る優しさになってるんだから。
私は好きよ?そういう甘い秋俊ちゃん♪」
 不意にふわりとメグに抱きすくめられる秋俊。いきなり引き寄せられて足がもつれ、白く柔らかく、豊かな胸の谷間にぽふと、
顔がうずまる・・・
「うぉう!?」
「メグ姉様っ!」
「おっとっと、ごめんごめん♪」
(わざとだ。メグ姉様、絶対わざとだ)
 ひったくるように腕を取って、メグの胸から秋俊を奪い返すアイ。吃とした視線を受け流すように、いたずらっ子の
ように笑っているメグ。


「・・・大体、事情は判った・・・。けど、ホントに危ない真似は止せよ、宮広・・・。どうなったって良いとか、全部一人で
被ろうとか、そんな馬鹿なこと絶対考えんなよ?」
「岡島君・・・うん、判ってる」
「ハハン♪このリン様が、天才少女とその名も高きこのリン様がついていて、そんなこと間違ったって・・・」
「はいはいリンちゃんもそれぐらいにして。今日美景ちゃんがここに来たのは、そんなこと話すためだけじゃないでしょう?」
「あ、そーだったそーだった!美景、えっとさ」
「うん」

 事態の根本的な説明にずいぶんと回り道してしまったが、ようやく本題に入るらしい。

「・・・アベルカイン・・・だったっけ。あれ・・・当然製造中止に、なってるんだよね?」
 
 リンが唐突に切り出した薬品名は、秋俊の中では紫に繋がっていた。
 恐れ多くも、聖書に書かれた双子の兄弟の名をゆらぎ化促進剤に冠するという不敵な真似をしたのは、かつて宮広の叔父、
鵜飼らによって進行していた忌まわしいプロジェクト。何も関係の無かったはずの紫がその犠牲となり、一生消えない傷を
負った契機となった薬。忌まわしい思い出をしかし、紫も秋俊も敢えて記憶の内に残し続けて、生きている。

「も、勿論。鵜飼の叔父さんが亡くなってすぐ、部門は壊滅したし、関わっていた施設も、道具も、残らず破棄したわ」
「・・・美景が言ってること、嘘じゃないと思う。・・・けど・・・ここんとこ私、暇だったからちょっと街の調査してて、
 嫌な結果が浮かんで来たのよ」
「嫌な結果?」
 何時の間にか、アイも話題の輪の中に入っていた。やはりアイの本質は魔法戦士なんだと、こう言う時、秋俊はしみじみと
思う。
「・・・ここんとこ、ほんの2、3日ぐらい前からかな。初期型のゆらぎを数回見かけた」
「?!」
「どいつもこいつも、発症にもしばらくかかりそうな感じだったし、まだまだ弱い不完全な奴だったから、その場でちゃちゃっと
根っこからぶっこ抜いて始末したんだけどさ。まあ、そういうレベルの奴は『ゆらぎ』に成りきれずに消えちゃう方がほとんど
だし、たまたまかな、とも思ってたんだけど・・・」
「何かあったの?」
「まだ偶然かも知れないんだけどね。そいつら皆、共通点があったのよ」
「共通点?」
「うん。『デボラ』って銘柄の、最近売り出したばっかのミネラルウォーター、知ってる?アタシ結構TV見てるんだけどCMじゃ
1度も見たことないんだよね」
「地域限定販売ってことかも知れないわね。そういえば私も見たかも」
 メグが相槌を打つように呟く。
「それが・・・」

「ほとんどの奴が、空になったそのペットボトル持ってたわ。1人持ってないのもいたけど、多分飲み終えて捨てたんじゃないかな」
「まさか・・・それが?!」
「まだわかんないけど・・・」

 どうやら又厄介なことが持ちあがりかけているらしい。そう思いつつ、秋俊はふと、頭の中に何か引っ掛かっているのを感じた。
何だ?俺、何か忘れているんじゃないか・・・?

 ドクン

 あれ・・・?なんだ・・・?
 不意に、心臓の音が高鳴った気がした。いや、脈が少し速くなってきたか?一体何だってんだ・・・

「どうしたのよ秋俊、ぼーっとしちゃってさ」
「あ、いやリン、何でも・・・」
 ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・
「ほら、折角アイが弁当買ってきてくれたんなら、さっさと食べちゃいなさいよ。あ、メロンパンある?あたしもらい♪」
「無いけど」
「あー?ちょっとアイ、あんたねぇ、アンタには気遣いってもんがないのぉ!?」
 今度はアイに噛みつくリン。
「リン・・・うるせぇ・・・」
 目の前がくらくらする・・・?

 と。
 ふと、視界の隅に、今の今まで綺麗に忘れていたものが映った。
 ついさっき、帰ってきたばかりのアイから受け取った、

「・・・・・・リン」
「あん?」
「・・・・・・おまえが言ってた例のドリンクって・・・・・・まさか・・・・・・・・・・・・これ、か?」
 ひょい、っと手を伸ばして、空になったペットボトルを握ろうとした・・・秋俊の目の前で、実際にペットボトルをくしゃと
握りつぶしたのは。



「あ・・・秋俊・・・?!」
「お・・・岡島君っ!」
「秋俊ちゃん!?」
「秋俊っ!?・・・・・・このバカっ!!ドジ、間抜け!!いつもいつもトロいくせに、なんでこんな時だけ情報より早く
 動いてんのよぉ!!」

 4人の悲鳴と怒号が交錯する中で。

 岡島秋俊の腕は、肘の先から幾条もの縄を束ねたような、分厚い触手の波へと変わっていた。

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「とーーーにーーーかーーーくーーーっ!アンタと美景はここから一歩も外出禁止!良いわね!!」
「俺、ゆらぎになるような大きな欲望なんて抱えてたっけなあ?」
「ハン!どーせこのリン様とメグ姉様とアイ辺りでハーレム作りたいなーとか、そーゆーふしだらなこと妄想してたんでしょ!
これだから男って奴はっ!!」
「ま、待て、アイとメグ姉ちゃんはともかくお前にそんな感情を持つことは有り得ない」
「こんのぉぉぉぉっ!丁度良いわ、なまった身体ほぐすのに取合えずアンタから叩っ斬ってやる!」
「おいっ!」

 ゆらぎになっちまったとは言え、そもそも自分が何をしたかったのか判っていない俺には宮広以上に危険な理由が無く、
それが不幸中の幸いだった。ともかく待った無しだということでメグ姉ちゃんとリンの2人はメーカー工場へ調査へ飛び、
アイは取合えず、この困ったゆらぎ2匹・・・一応宮広の人権を尊重して2人と呼ぶべきか・・・の監視と世話を兼ねて
残ることになった。
 そもそも、俺がこんな身体になっちまった原因である買い物をしてきたアイは、心から申し訳なさそうな顔で俺の手を
見つめてる。俺の顔をまともに見れないらしい。・・・そんなこと、気にしなくて良いのに。リンにも散々悪態を吐かれて、
見ているこっちが申し訳無くなってたぐらいだ。
 
「ご、ごめんね秋俊・・・私・・・」
「アイのせいじゃないって、気にすんなよ。俺、まあ何とか身体以外は平気みたいだしさ」
「岡島君、やっぱり強いね。・・・こんな身体になっちゃって、私の時は気が狂いそうになったのに・・・」

 と。そこまでは良かった。
 不意に口を挟んできた宮広に、アイがトゲのある声で反応するまでは。

「悩んだ割には随分あっさり使いこなしてたみたいだけど?」
「加賀野さんみたいな血に餓えた相手が一方的に襲ってくるんですもの。仕方ないじゃない?」
「何・・・?化け物に向かって一々人を襲うまで待ってる間抜けがどこにいる」

 待て。何だかまたぞろ変な空気になっている。

「ま、まてよオイ、2人とも・・・」

 でも、俺の制止なんてもう、2人とも聞いちゃいなかった。俺には間違っても見せない、刺すようなぎらぎらした視線で
宮広を射るアイと、それを受けて冷徹な笑みを返す宮広。

「大体、化け物化け物って随分気にするのね。・・・本当に怯えてるのは自分の方なんでしょう?加賀野愛さん。あなたも私と
同じ。クスッ、岡島君とは寿命も身体も違う、いつ別れても、いつ壊れてもおかしくない関係だから」
「なにぃ!」
「そうよ、ゆらぎが化け物なら、魔法戦士のあなただって十分化け物じゃない。そう認めたくないから必要以上に私を化け物
呼ばわりして、岡島君の心を強引に引き寄せているだけのくせに!」
「ドス黒い本性を隠し続けておいて、よく他人を引き合いに出せるな。私はおまえに気を許してる訳じゃないぞ」
「ドス黒い?・・・そうね。同じ化け物の癖に、ちゃっかり潜り込んでるような人には・・・岡島君のこと、今でも絶対に
 渡したくないって、そう思ってる。・・・フフ、それが怖かったんでしょ?」
「貴様ぁ・・・やっぱり、1度殺してあげる」
「ウフフ、私とやるの?・・・いいわよ、相手してあげる!」
「や・・・止めろよ、2人とも!!」

 −きっと。
 4年前から、ずっと。2人の関係は不完全燃焼のまま、リンやメグ姉ちゃんのおかげで辛うじて発火せずに
済んでいたんだろう。
それに。アイの側には俺がいたから。アイの焦燥を抑えられるだけ、俺との間に絆があったから。
 −今、よりによってその俺が「ゆらぎ」になっちまって。アイに、宮広の言葉を聞き流せるだけの余裕が無くなってる。

「だからって!!」

 制止しようとした俺の声を聞き流して、2人はどちらからともなく裏の駐車場へ飛び降りていた。着地した時にはすでに
アイはいつもの魔法装束、宮広の下半身とそのさらさらした長髪はかつてメディカで見た、青白い大理石みたいな触手の槍へ
変わっている。畜生、ふざけんな!!

 −なんだよ、2人とも。
 
 気付いた時には俺も無意識のうちに、ベランダから外へ、身を翻していた。怪我するかどうかなんて頭から消えていた。
さっきから続いていたもやもやが、一気に形を取る。・・・そうだ、俺は苛立っていたんだ。
ぶつけたくてしょうがないくらい、この2人に怒っていたんだ。

 今しも刃を交えようとしていたところへ、割って入った突然の闖入者に、2人が呆然として俺を見つめる。

「何だよそれっ・・・アイ、おまえそんなに俺の気持ち、信用してないのかよっ!」
「秋俊っ!?」

「宮広も宮広だよ、誰が強いだ?何が化け物だ?・・・こんな、アイやリンがいなきゃ何も出来ない、1人じゃブルっちまうし
2人いりゃ足を引っ張るようなこんな俺が目標だ?」
「岡島君っ・・・」

「こんな情けない奴目標にするぐらいなら、さっさと頼ってくりゃ良いじゃねえかよっ!こんな情けない恥ずかしい奴を
追っかけるぐらい弱っちい、糸みたいな脆い心のくせに、一人で何でもかんでも背負い込みやがって!!・・・そうだよ、
俺は凡人だよ!アイみたいな異界からの異邦人でもなきゃ、宮広みたいに一人で無理が出来る超人でもないっ!!・・・
そんな奴のために、そんなどうでも良い奴のために何2人してバカやってんだよぉぉぉ!!」

「秋俊、違うっ!!私は秋俊のことっ・・・」
「岡島君ッ!!」

「何だよ、どうせ役に立たねえよ、頼りにならねえよ、俺は!!だったら!そんな情けない奴に構うなよ!目標なんて言うなよ!」

 −違う。俺が一番むかついてたのは2人にじゃない。そんな2人に、分不相応の気持ちを寄せられてる、俺自身にだった。
でも。いまさら止められない。今朝から・・・いや。きっと、もっとずっと前から抱えてた、俺のどうしようもない欲望。
アイと宮広が小競り合いになるたび、胸の奥でちくちくと刺さってきたむずがゆいトゲ。

 2人のことが好きで、好きで。愛しくて愛しくて。でもどうしようもないほどに「憎くて」。・・・その憎たらしい相手は、
本当は間違ってもアイや宮広じゃない、自分自身で。
俺だって、力があれば!

 −力が欲しければ−

 何でも良い。もらってやるっ!

 今はただ。俺の身の内側から出て来た声に、激情を任せた。

 肘から変容していたはずの触手は、いつのまにか肩口まで侵蝕していた。棒立ち状態になっていたアイに、左腕がさっと伸びる。
「あきとっ・・・くっ?!しまっ・・ウギャアアアア!!」
 アイの悲鳴にハッとした。ほとんど虚脱状態で、俺の触手を避けることも忘れてたアイ。その身に一瞬で巻き付いた俺の腕は・・・
「ゲッ!?」
 イバラのようなトゲだらけの鞭だった。ささくれだった俺の心そのまま。
「・・・アイッ!!」
 慌てた俺の心をそのまま写し取るように、触手は瞬時にうねうねと波打つ、柔らかいきし麺のように変容していた。が、ホッと
する間も無く。

「おかじま・・・くんっ・・・」
 右に振り返る。宮広の紅潮した表情。そのまま視線を下に落としていく。冷ややかでしなやかな質感を持ち合わせた、青白く澄んだ
宮広の触手に、俺の右腕が細い麻縄みたいになって巻きついていた。
 あの宮広に。あの白面の清らかな美貌の下に連なった、サファイアとエメラルドで出来たような美しい肢体に、俺が巻き付いている。
・・・一瞬で、理性が白く焼き飛んだ。

 その無機質な美しさを持つ宮広の触手体を、幾重にも巻きつけた右の触手をバネのように伸縮させて揉みしだく。伸ばしては縮め、
伸ばしては縮め、少しだけ力を加えながらしごいていく。
「あ・・・はふぅ、く、くふうっ!お、岡島くっ・・・アウン!」
「宮広っ!」
「あ・・・だ、駄目、そんなっ・・・ことっ・・」
 いやいやと振られる首とは正反対に、宝石のような光沢を放つ彼女の髪が触手となって、俺の触手に自分から絡みついてくる。
外見と異なり、しなやかで柔らかい質感のそれを、俺はためらいなく絡め取った。縄状の触手が、緊縛するように強くしがみつき、
宮広の白く柔らかい触手がわずかにぶるぶると震え出す。
「アッ・・・くぅんっ!・・・は、あふぁっ・・・」

 青白い宮広の肢体に少しづつ緋の色がさしていく。
「あ、んッ・・・くはあっ・・・おかじ・・・岡島君ッ!」
 既に紅潮している美貌がこちらを向く。感じやすい奴だ・・・。
「鵜飼の奴とも、どうせこんな風にやってたんだろ?どうなんだ、答えろよ宮広!」
「そ、そんなこと無いッ・・・おじさん、とは、アハン!」
「信用出来ないな、本音を聞かせてもらう!」
 わざと意地悪げに突き放すと、俺はそのまま触手の動きに集中する。
 枝分かれした腕の一部を、豊満なバストへ這い上がらせた。メグ姉ちゃんに匹敵するほどの双丘。人間の手では収まりきらない
豊かな白い美肉の塊に2、3周とぐろを巻いて、薄桃色に色づいた先端の突起をピンと弾く。同時に彼女の触手を捕らえた「縄」の
腹で、赤みの増してきた細い触手をこするようにして、しごくペースを早めた。
「あぐゥ!!や、あふああああああああっ!だ、あうんっ、く、ひゃああん!」
 びくびくと震えながら、宮広の背中が一瞬ぴんと反り返る。早速だが、軽くイッたのを確認すると、責めを継続しながら今度は
左に視線を戻した。

「秋俊っ・・・」
「アイ、放っといて悪かったな。今すぐイかせてやるよ」
「だ、駄目、こんなことっ・・・」
 きし麺状の、白く幅広く薄い俺の左手に拘束されながら、もぞもぞと身体をくねらせるアイ。脱出しようとしているのかも
知れないが、俺にはその仕草がひどく淫靡に映る。なりゆきで、戦闘服のスカートがめくり上がったまま、身体に巻き込むように
触手が張り付いてしまい、その下の黒く薄い布地が露わになっていた。そこへ、左手を少し分岐させ、やや本体より
細くなった幅広触手を潜り込ませた。
「さっきは痛くしてごめんな、すぐ気持ち良くさせてやるから」
「そんなこと無・・・や、やめっ・・・んくっ!?あ、きゃうっ!」
 布地の上から軽く秘部をこすってみる。薄い触手を股布に貼り付けるようにシコシコとこする。
感度の良いアイの身体は、それだけの刺激で敏感に反応した。
「俺のこと、信じられないんだろ?不安なんだろ?・・・だったら、悩まないで済むようにしてやる、気持ち良いことだけしか
考えられなくなるまでこのまま続けてやる、どうせ俺にはそれしか出来ないからな!」
「やめて秋俊っ!ちがう、違うよ、あきとっ・・・あうウゥゥッ、は、ああ、あううっ!」
 身体を包む膜状の腕全体をくねらせ、アイの胸も背中も二の腕もまとめて揉んでやる。宮広やメグ姉ちゃんとは大きさでは比較に
ならないが、ちょうど俺の手にすっぽり包めるぐらいの形良い乳房2つ、まとめてさわさわと、先端の突起が布地でこすれるように
弱めに揉む。
「あ、んんっ、ひゃはぁっ!!や、あ、お、おっぱいっ・・・おっぱい、こすれ、て・・・あうん、や、だめぇ!」
「違わない、違わないよアイ!」
「ふぁぁっ・・・!んく、くあああっ!」
「良いだろ?良いんだろ?なあ、まだ駄目か?なあ、まだ役に立たないか?不安か?」
「あきとしっ、秋俊ぃ!私、そんなこと考え・・・きゃううううっ!」
 不意にアイが高く嬌声を上げた。秘部と後ろを往復していた触手が、うっかり割れ目にめり込んでしまったらしい。
「おっと、ここはまだ早いな。先に何度かイかせて、濡れ濡れにしてから挿れてやるからな」
 早くも既に、割れ目がくっきり見えるぐらい黒い布地が愛液で濡れてきてはいたが、敢えてそんなことを言って焦らすことにする。
「はあ・・・あ、はあ、はあ・・・や、だめぇ、こんなことっ・・・秋俊が、ゆらぎになっちゃう、戻れなくっ・・・」
「良いよ、俺は、俺にはアイしかいないんだぞ?殺せよ、ゆらぎになって、アイをぐちゃぐちゃになるまで犯してやるから、
アイの中俺でいっぱいにしてやるから、そしたら殺せよ!それで良いんだろ?俺を永遠に閉じ込めてくれよ、アイ!!」
「や、やぁぁっ・・・ヒンッ・・・あ、あきとしぃ、ごめ、ごめんねっ・・・わ、私っ・・・」
「なんで詫びるんだよ、そんな必要ねぇよ!」
 
 アイの謝罪の言葉に訳も無くヒートアップした俺の思考は、そのまま激しい責めになって彼女に返った。何も悪くないのに。
責められるべきは情けない俺自身なのに。それなのに理不尽な責めを受けるアイ。でも、その繊細で華奢な身体を弄ぶたびに
邪悪な喜びと破滅的な思考が俺の中で黒く黒く膨れ上がっていく。
 受けとめないでくれ、怒れ、俺は、俺は俺は俺は俺は俺はッ!!

「う、うあああああああああああああああああっ!」
 ひときわ高く艶やかな悲鳴がアイの口から漏れた。無意識の内に、つんつんに固くしこった乳首を摘み上げていた俺の触手に、
ぶるぶると震える彼女の反応が伝わってくる。イったのか。
 本気になれば、幾ら性感責めに弱いアイでも、この程度の拘束と責めぐらいで動きを止められる訳がないのに。愛撫なんて
申し訳無くて言えない、こんな陵辱同然の俺の求めに、アイはわざと身を委ねてくれているんだ。そんな彼女の優しさに、
彼女への申し訳無さに、却って俺の乾きは増していく。

 そして・・・それは、宮広にも同じことだった。

「ひああああッ!岡島くんっ・・岡島君ッ!」
 アイよりも一層官能の誘惑に弱い宮広。多感症だというその身体は、すでに熱を帯び始めていた。遠目には気付かなかったが、
一見して宝石かガラス細工のようにも見える宮広の触手には、ごくごく薄く産毛が生えている。その微細な触感の繊毛が、汗で
じっとり濡れ始めていることを、俺の触手は敏感に伝えてきていた。単調な責めだけでは可哀相だ。

「うふぅっ!?あ、はああああああああああああんッ!」
 いきなりうなじを襲った快感に宮広が仰け反った。どういう訳か知らないし興味も無いが、俺がその気になれば、触手の先が
口のように開き、ふっと息を吹きかけることも、舌を出して舐めることも出来る。紅色に染まっていた彼女の顔が一層濃く上気し、
口からはよだれ混じりの嬌声が漏れ響いた。そこを逃さず責める。冷たい舌で髪の生え際までなぞるように舐めまわし、同時に
小さな産毛を沸き立たせるようにそっと息を吹きかける。
「ふあああん!アん、ひあああああああっ、良い、良い、いいのォっ!だめぇぇっ!んんっ、ん、んあああああっ!」
「宮広、宮広ぉ!」
「岡島君、おかじまくっ・・・ひゃん、ふあんっッ!」

 宮広が求めてくれば求めてくるほどに、俺の心は焼けていく。少し乱暴に、胸を責めていた触手を強く絞め上げた。でも、
たわわに実った2つの胸が充血していく痛みさえ、宮広には快感として伝わっていく。
「ああ・・・・ぅあああああああああああっ!」
「感じてるのか?宮広、感じてるのか?」
「いい、いいよぉッ・・・!かんじ、感じ、て・・・はんっ!」
 感情の高ぶりに追随するように、宮広の髪が踊っていた。幾房にも別れて跳ねあがる、触手と化した髪の毛の一つを空中で
捕らえて、梳くように表面を引っ掻く。
「ああああああああっ!」
 びくびくと跳ねて逃げ出そうとする触手をもう1度引き寄せて、今度は裏表両面から引っ掻く。更に余っている触手を使って、
生え際近くから一気にこすり下ろした。
「ふあ。ひああああああああああああああああああああーーーーー!!」

 まるで神経を直接弄ったみたいな効果だった。大きく目を見開いた宮広の身体が激しく痙攣しながら海老反りになる。
それが数秒続いた後で、首ががくりと落ちた。まともな声にならず、呻き声しか漏れて来ないところを見ると、少し刺激が
強かったらしい。
 まだイった余韻が残っているらしい宮広は放置して、またアイに顔を向けた。

「く・・・ん・・・」
 ようやくさっきの快感から抜け出したらしい、ちょうど良い。
「アイ、待たせたな。今度はちゃんと挿れてイかせてやるからな」
「あ・・・秋俊っ?!」
「その前に最後の準備運動な?」
 言うが早いか、俺の求めに応じるように、肩口から新たな触手が伸びた。先端に触手のふさがついたような、小さな箒にも似た
形のそれが、アイの耳たぶを包むようにくすぐる。
「アンッ・・・く、あきと、ひあああああっ!」
 そういやリンは、耳でイったことがあったっけ。一瞬アイも同じようにしてやろうかと思ったが、あの時のリンのつらそうな顔が
なぜか浮かんで、耳の奥まで突っ込むのは止めにした。代わりに、アイは両耳とうなじを同時にさわさわと弄ってやる。
「あ、ン、はうっ!かあああああっ!」
 さっきから俺の触手が分泌し続けている粘液は、確認しちゃいないが多分媚薬みたいなものなんだろう。アイの全身を濡れ濡れと
包んで、触手との間に粘ついた糸を引いている。アイのほっそりした二の腕や、うなじをこするたびに、そこに生えた白い産毛を
捕らえて官能の刺激を与えるのに一役買っていた。
「・・・そろそろいいかな?」
 もう下布があっても無くても変わらないぐらいに、アイの割れ目からはしとどなく愛液が溢れ出し、地面に落ちたそれが小さな
水たまりを作っている。もったいないので幅広触手で包むように下布を揉みながら、それをアイに見えるよう目の前まで持っていった。
「ほら、こんなに濡れてるじゃないか、アイ」
「う・・・あああっ・・・だ、めぇ・・・らめぇ・・・」
「気持ち良くよがってるくせに、駄目だのなんだの口ばっか強がんなよ。どーせ・・・どうせ俺なんか!」
 目の前で触手を開いて見せると、愛液がきらきらと輝きながら粘っこく糸を引いた。
「こんなにたっぷり出してるくせに・・・」
「そ・・・れは、ハア、ハあ・・・あ、秋俊・・・だから・・・ッか、感じちゃうのぅっ・・・」
 息も上がり、喘ぎ声交じりのアイの声は、何とか呟いているに近い弱弱しい声音になっていた。そんな様子に止めをさすように、
わき腹から胸にかけてを触手の波で激しく揉む。揉む。揉みしだく。
「フッ・・・ふああああああ、いやあああああっ!!!!おかしく、おかしっ・・・や、まっしろに・・・あああああ!!」
「なっちまえ!」
 小ぶりで形の良い乳房を丸ごと揉みつつ、乳頭の部分だけ繊毛の生えた触手で丁寧にこすり、つまみ、弾く。
「ふあんっ!ひ、んんぐっ、かはああああっ!っくぅ・・・あ、だ、駄目、なにか、なにか来る・・・来ちゃう・・・だめだめだめ、
ふぁっ・・・あき、と・・・あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」
 悲鳴を飲み込み飲み込み、俺の責めを耐えようとしていたアイの身体が、電撃でも食らったみたいに痙攣した。じゅわっと音がする
ほどの激しい勢いで、下布から愛液が溢れ落ちていく。
「あ・・・・・あ・・・・・・・」
「イったな、アイ」
「・・・あ・・・」
 放心したように空ろな視線しか返すことの出来ないアイ。その瞳から理性の灯はとっくに失せ、淫蕩におぼれた潤んだ眼差しが
俺に投げかけられる。
「・・・はぁ・・・ぁ・・・ハッ・・・」
「じゃ、そろそろ本番だな」
「・・?・・・っあ!だ、あうううううううう!!」

 濡れるどころか、もう洪水のように愛液まみれになった秘部。ぐちょぐちょになってカバーの役目にもなっていない下布を、今
初めて破り捨てた。黒と紫を基調にした、ダークな色合いの戦闘服の中に突如生まれた白桃の肌。そこは、陽を浴びて光を反射する
愛液の輝きで不自然なほど強調されて、俺の目の中へ飛び込んできた。
 愛しい愛しいアイの、一番大事な部分。そこを弄って良いのは俺だけなんだ。岡島秋俊だけなんだ。なのに。俺は今、なんだか
判らないこの触手で、この汚らわしいゆらぎの腕で、神聖なその場所を犯そうとしている。
「あ・・・ああ・・・や、やぁんっ・・・」
 形だけ抵抗するみたいに、アイが拒む声を上げる。でも、少しは自由になるはずのアイの手はほとんど俺の触手に添えられている
だけで、押し止めようなんて気配は微塵も無い。
「どっちなんだよ、アイ」
「?」
 熱っぽい瞳で、上気した顔で、言葉の意味を聞き返すように見つめ返してきたアイに、俺はこの上なく汚らしい言葉を吐いた。

「挿れて欲しけりゃ・・・自分でいれろよ、出来るだろ?それとも『俺なんか欲しくない』のか、はっきりしろよ?」

 自分につばを吐きたくなるほど残忍な問いかけだった。他の時ならともかく、今のアイに答なんか一つしか出せないに決まってる。
質問なんかじゃない、アイを辱めるだけの、弱みにどこまでも付け込む、いかにも『ゆらぎ』らしい台詞だった。

「ご、ごめん、ごめんね秋俊っ・・・い、いま、今挿れる・・・挿れるからぁ・・・待って、待って・・・」

 見るのも嫌なはずの憎むべき敵、ゆらぎの触手を、よりによって自分の手で、望んで自分の秘所へ導かねばならない魔法戦士。
アイの手は焦りのせいか、それとも火照りきった余韻が残っているのか・・・それとも悔しさか、怒りか。俺の幅広触手を掴もうと
するが、震えてなかなか思うように動かせていなかった。そんな、強く気高い魔法戦士に似合わぬ、孤独で華奢な姿に、俺の中の
残忍な衝動がますますつけ上がる。

「なんだよ・・・しょうがないな。こっちなら良いのか?」
「えっ・・・」
 呆れたような俺の声に、慌てて顔を上げたアイ。その目の前にぐいっと伸びたのは・・・俺の、股から伸びた・・・男性器が
そのまま大きく伸びたような、奇怪な触手だった。
「ウッ!・・・・ふあっ・・・あき、とし・・・」
 救いを求めるような、切なげな眼差しで俺を見つめてくるアイに、俺は気にも留めないような口調で続ける。
「こっちなら慣れてるよな?」
「・・・う、うん」

 諦めたように一瞬目を瞑り、その後ゆっくりと震える右手を伸ばして、おそるおそる俺の『性器』を掴みしめるアイ。
「・・・い、痛くない?つ、強く握ってないよね・・・?」
 でも。罵倒の一つも出ておかしくない、この状況で、アイはまだ俺のことを気遣っていた。
−なんでだよ?何でそこまでっ・・・!!

「・・・早く・・・挿れろよ・・・」

 ・・・それ以外、言えなかった。言えば、アイに溺れてしまいそうな気がして。アイの優しさが、たまらなく恐ろしくて。


 そんな時。理由の判らない俺の苛立ちと焦りを一瞬でも紛れさせてくれたのは、なにかを求めるように掴み絞められた、
右腕の感覚だった。
「・・・宮広、おまえも欲しいのかよ」
「うん、頂戴、頂戴っ・・・みかげに、あきとしくんのおっきぃのちょうだい・・・」
 俺の右腕の触手に、宮広の方から青白くほっそりとした触手を絡めてくる。触手同士が、ちょうど昆虫が触角を触れ合わせて
互いを確認し合う姿みたいに、互いに絡み合い、そして双方の表皮を覆う粘液を与え合い、まだら色に塗れていく。
 さっきまで僅かに残っていた理性の膜が破り捨てられ、中から扇情に溢れ、淫欲におぼれる宮広美景が顔を出していた。
「良いぜ。俺をたっぷり感じろよ、俺みたいな愚劣なゆらぎに犯されて、感じてよがって溺れろよ!」
「う・・・ンッ・・・!」
 俺の、肺の中いっぱいに広がった暗黒を全部吐き出すみたいな口調に、ほんの一瞬だけ宮広が寂しそうな表情を見せた。
でも、わずかにかいま見えた理性の仮面は、圧倒的な勢いで押し寄せる官能の魅力に消し飛ばされ、淫靡に塗れた妖艶な微笑
へ姿を変える。
 それに導かれるように・・・いや、そんなもん言い訳だ。「それを待ってた俺は」、宮広の身体中に、一斉に幾筋もの触手を
這わせた。

 麻縄の網の中で淫らに悶える美しき人魚。

 そう形容するより他に無い、ゆらぎがゆらぎに絡みつく妖しい情景。その一方の当事者が俺自身だってことを忘れるくらいに、
宮広の身体はなまめかしく、美しくぴちぴちと跳ねた。
「ンッ・・・んァアアアアアンッ!!ふ、ひあ、うがああああああああああああああっ!!」
 獣のように咆哮し、全身で快感を顕わす宮広。
 そんな中、俺の触手の一つが宮広の肌に取り付いた。
 白い肌の平原を、ひたひたと粘液をなすりつけながら、触手は着実に登って行く。最初は、エメラルド色の比較的硬質な触手部
に取りついた触手だが、そこから臍へ向かって宮広の身体を這いあがると、今度はそこからわき腹をくすぐりつつ、裏へ向かった。
「あんんんんんっ・・・・」
 その感覚もくすぐったいのか、悶えながらも、宮広は止めようとはしない。ソレが何処を目指しているのか彼女にも判っている。
それが証拠に、腰から下に向け何本も枝分かれして生えている彼女の触手が、明らかに道を作るように隙間を空けていく。
そんな宮広の求めにも助けられて。鬱蒼とした青い大理石の林を抜け、俺の触手はとうとう、深く隠された彼女の女自身の場所を
探り当てた。

「ああンっ・・・あき、とし、くんンッ・・・」
 せがむような声を上げ、俺を熱い瞳で捕らえる宮広。その熱視線と俺の瞳が出会った瞬間。触手のうねりは最高潮を迎えた。
ためらいもクソも無く、一気に秘穴にずぶりとのめり込む縄触手を、宮広は嬌声で迎え、あっけないほどすんなりと飲み込んでくれる。
「あああああああああーーー!いい、いい、ン、んーーーーーーーーーっ!来て、来て来て来て来てぇーー!」

 炎のように燃え上がっていく宮広の身体。火傷するんじゃないかと思うほどの熱い胎内で、肉襞と肉壁とを掻き分けながら奥へ奥へ
潜っていく俺の触手。だが入口での歓待とは打って変わって、宮広の膣の中は処女かと思うほど固く、締まっていた。それもまた
彼女のゆらぎとしての力の為せる技なのかも知れない。男を迎え、楽しませないと満足出来ない哀しい身体を維持するため、せめて
男を失望させない為に。ガバガバになっていてもおかしくないほど多くの男を受け入れてきたはずの其処は、俺に対しても生娘のような
初々しさで待っていた。
「うぉっ・・・ふあああああああおっ!クッ!」
「あ・・・あきとしくん、イきそぉ・・・!?」
「クッ!うぐぉぉぉぉぉぉぉっ!!!???」
 宮広が艶やかな笑顔で俺を見つめる。かけられた言葉どおり、気を抜けば一瞬でこっちが達してしまいそうなほどの快楽の穴だった。

 理性を無くしたはずの、本能に満ちた俺の精神さえも持っていきそうなほどの悦楽。それに必死で耐えようとしていた努力を、
しかし木っ端微塵に打ち砕くような衝撃が次の瞬間訪れた。
「・・・ッン!」
 なにかを覚悟したような乙女の声が響いた直後。

「−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ッ!???!!」
 
 俺の男根が、柔らかく熱い花びらで包まれた天国へと誘われる。アイだと理性が判る前に、野生の本能をも抹殺するほどの官能の波が
俺の精神を焼き尽した。視界が暗転し、身体が液体になってしまったみたいに重心を失う。声など出ない。発声域を通り越した、音無き
悲鳴が俺の口から噴出する。

「っがぁ・・・・!?」

 一瞬にしてイってしまったことに気付いたのは、腰からへたり込み、開ききった俺の瞳孔に、アイの秘部へ突き込まれた触手が映った
後だった。

「あきとし・・・イった、の・・・?」
「あ・・・アイ・・・」
「気持ち・・・良かった・・・?」
「・・・あ・・・ああ・・・」
 空気が腹に入ってこない。金魚みたいに口をぱくぱくさせながら、必死に酸素を追いかけなきゃならないほど、衝撃の余韻は
大きかった。
 だけど。そんな俺に追い討ちをかけるように。
「あ・・・加賀野さんズルいっ・・・ぁはぁ、はあ、は・・・先にイかせてあげたかったのにぃ・・・」
 宮広の、赤ん坊がムズがるような、駄々っ子みたいな声が、喘ぐ息の間に聞こえた。
「じゃあ、私も・・・!」
「うおおおおっ!?」

 さっきまでとは完全に攻守が交替していた。何時の間にか、さっきまで宮広に絡みついていた俺の触手は、逆に宮広のしなやかな
触手に組みしだかれ、虜になっていた。
「うふふ、しごいちゃえ」
「ふぐうっ!?うごぉおおおおおっ!!」
 無邪気で楽しげな、子供のように残忍な宮広の声が響いたか否かのうちに、ざらざらとした俺の触手がしごかれ始めた。しなやかに
して弾力があり、硬そうに見えて意外と柔らかい宮広の触手。それはちょうど、宮広の腕ぐらいの太さでもって、俺の縄みたいな触手を
数本まとめて巻き取ると、さっき俺が宮広にしたみたいに屈伸運動を始めた。わずかにたわむぐらい強めに丈を縮めたかと思うや、
すべすべした肌触りの触手がさっとカンナをかけるように、俺の表皮を舐めていく。同時に、やや繊毛が長くて大きい触手が、表面を
撫でるように俺の触手全てを味わっていく。
「いい・・・いいよぉ・・・岡島君っ・・・」
 攻める側に回って幾らか精神的に余裕が出来たのか、俺への呼称が苗字に戻っている。けど、そんな瑣末なことはどうでも良い。

 なんだよ、この焼け付く熱さはっ!
 俺の触手はこすられるたび、撫でられるたびに、触手の内側で爆発するような刺激が生まれ、熱をもっていく。

−クッ、こんなに・・・気持ち良過ぎることしてたのかよ、おれ!?・・・うがぁッ!たえら、耐えられないっ・・・

「秋俊っ!あ・・・私・・・わたしもっ・・・気持ち良くしてぇ・・・!」
「・・・アイっ・・・!」
 切なげな声と共に、アイの暖かい吐息が俺の触手に吹きかかった。クッ!
追撃をかけるように、さっきまでは添え物になっていた指をさわさわと使って、俺の巨根触手に柔らかいタッチで刺激をくれる。
たまらない。相変わらずアイの膣内に入ったままの先端が、今にも発射したがってびくびく痙攣している。
「ウオオオオオオオオオッ、だ、だ、駄目だっ・・・た・え・・・」
「いいよ秋俊、我慢しないでっ・・中で、私の中で出して良いよっ!ふあ、ンン、んっく・・・あああああん!」
 上ずる声で叫びながら、アイもまた高みへ一気に上り詰めていくのが判った。
「駄目だ、く、来るッ・・・アイ、アイ、アイーーーーーーーーっ!!」
「来て・・・いっしょ・・・いっしょにイって!秋俊っ・・・秋俊ぃーーーーーーーーーーーーー!!」

 2度目の、激しい恍惚と白い空白が俺の神経いっぱいに広がっていく。
 あんなに激しく責めていったアイに、最後は情けなく寄りかかり、頼りながら、俺の触手はびくびく震えて、ありったけの精液を
アイの中いっぱいにぶちまけていた。

 そして。俺の、消える直前でぎりぎり繋ぎとめていた意識の残りは、宮広が奪い去っていった。
「イっっちゃうぅぅぅ!みかげ、みかげの中に岡島君が来て・・・ふぁあああんッ!!ウンぅくっ、ひぃぃいいいいん!!」
「おああああああああああああああああああっ!」
 
 屈伸させられるたびに先端へ、先端へと搾り出されていた触手の中の白濁液・・・もとは俺の右腕なのだから、精液なのかどうかは
知らないけど・・・が、急速に速度を増した宮広の屈伸に追い立てられ、秘部の割れ目の奥へ流れ込むように侵入して。

 入った、と思った瞬間、俺自身がアイの愛撫によってイってしまっていた。そのせいで、何の自制も利かなくなった触手は狂った
ように胎内で悶え、一気に奥へ突きこまれ、そこで詰まっていたものを全て発射してしまった。きっと子宮の口なのだろう、奥の奥、
行き止まりに当たった感触を覚えながら。
「あーーーーーーっ!お・・・っくぅ!みかげの、みかげの一番深いとこに!一番熱いとこに岡島くんが来たぁーーーっ!」
「みやひろぉぉぉぉっ・・・くほぉっ!」


 その、最後の情念の爆発を最後に。
 俺と、アイと、宮広の3人は、誰からともなく真っ白な意識の中に沈んでいった。


************************************************************


 動物には、危険察知の本能がある。それは強いものよりも弱いもの、狩るものよりも狩られるものがより強く持つ、天性の力。
だから、一番弱い存在・・・ゆらぎの俺が最初に感付いたのも、当然だったんだろう。

 どれくらい気を失っていたのか。その時、俺は、突然背後に氷を入れられたようなぞっとする悪寒と恐怖感に、ハッと目を覚ました。
が、そこまでだ。背後・・・アパートの方にいる「なにか」への恐怖心で振り向くことも出来ない・・・そんな俺に代わって、しかし
そいつは自ら口を利いて正体を教えていた。

「・・・バカだバカだとはおもっていたけど」

 心底呆れた、という声音に、どこまでも押し殺した激しい怒り。



「・・・・・・・・・ここまで『情けない』奴だとは思ってなかったわ・・・ッ!!!!!!」



「あっ・・・・・・」
「バカやろオーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

 意を決して振り向いたが早いか。次の瞬間、相手を視界に捕らえる前に、俺の身体はくの字に曲がって浮き上がっていた。
真っ暗になりそうな、歪んだ視界の向こうで。
俺のどてっぱらに鉄拳を叩きこんだ、鬼の形相と化したリンの姿があった。その小さく華奢な身体からは想像もつかない力。かなり
上背のある俺の身体を浮かせ、軽々と宙に突き上げるボディブロー。

「ぐえっプ!?」
「その腐った性根、いっぺんブッ殺して叩きなおしてやるから感謝しなよ、秋俊ッ!!」
「グエッ!?ふぐ、ぶぐうううううううううううううううっ!」
「アンタなんざ剣を出すまでもない、あたしの拳で十分だーーーーーーーーーーーーーッ!!!」

 なぜリンがいるのかとか、俺が今まで何をしてたのか、考える暇さえ無く。目も眩むような衝撃と痛みが、瞬く間に全身に広がって
いく。ブチのめされていく感覚。

 −嗚呼。でも良いのかも知れない・・・これで・・・

 一瞬、今、リンによって唐突に始まったこの制裁こそ俺が望んでいたもののような気がしていた。けれど。
「よわっちいならよわっちいらしく、身のほど弁えてりゃコンなことに成る訳ないだろーーーーっ!」
「!!!」
 リンの啖呵が、一瞬にして俺の脳裏をカッと燃えあがらせた。
「お前にッ!」
「!?」
「何がわかるってんだよぉぉぉぉぉっ!!!!!」
 吹き飛ばされながら、同時に。俺の腕から瞬時にリンに向かって伸びた縄状触手が、リンの突き出したままの拳を括った。
俺だって!俺だって自分がどんなに弱くて情けない奴か知ってるよッ!言われなくても!!

−でも・・・・よってたかって情けない俺なんかを持ち上げる奴がいるからっ!

 リンには間違っても関係ない、そんな歪みきった俺の精神は、もとに戻っていなかった。

「うああっ!・・・なにすん・・・ぶわっ!」
 吹っ飛んでいく俺の身体は、間違い無くリンよりは重い。そんなもんに巻きつかれたリンは、砲丸投げの玉を握ったまま一緒に
吹っ飛ぶ選手みたいに、俺の勢いに引きずられて後から飛んできた。

「なにすんっ・・ちょっ、ひあっ!?」

 リンが慌てふためく一瞬を突いて、俺の触手が全身を拘束する。右、左の両腕がかりで縛り上げられて、さすがのリンも微動だに
出来ない。

「くぅっ・・・くっそぉ!秋俊ぃ・・・こ、んなことして・・・わかってんで・・・しょうねぇっ・・・!」
「リンこそ判ってねぇよ」
「あん?」
「このままっ・・・このまま俺、ゆらぎに身を任せちまうことだって出来るんだ!!」
「ハン!半人前以下のゆらぎがなに強がってんのよ!やってみなさいよ、アタシはアイやメグ姉様みたいに、アンタに甘くないわよ!
そこまで性根据えたってんなら喜んでぶっ殺し・・・ふああああっ!?」
 皆まで言わせず、リンのなだらかな胸に舌を這わせた。
「っく・・・ホントに、堕ちたってのっ・・・?・・・っの・・・ばっかやろぉっ・・・!!」
 リンの声音が不意に涙混じりの、悔しげな声に変わる。

ああそうさ、俺はもう・・・


「秋俊ッ!」



 不意に。背中越しに鋭い声が飛んだ。

 刃物のように鋭い、刺すような声なのに。

 なんでだろう、ひどく懐かしい声。


「・・・私と宮広以外に手を出さないで・・・さもないと・・・幾ら秋俊でも・・・」

「・・・アイ」

 震える声に、ゆっくりと振りかえる。ロッドにすがるように上体を起こし、肩で息をしながら、しかしアイは、
この3年間、最初に会った頃から久しく見せなかった・・・

 狩人の目を、俺に向けていた。

「・・・殺すよ?」

−そうだ。俺が求めていたのは・・・今のおまえだよ、アイ。

 ハハ、情けねえ。めちゃくちゃ情けねぇ。好きで好きでたまらない相手に、殺意まで抱かせて、ようやく肩の荷を下した
気持ちになるなんて。・・・なんて情けなくて、なんて無様なんだよ、俺は。こんなに迷惑かけまくって、自分が結局
自棄になりたかっただけかよ。
 ・・・だから、ゆらぎになんかなっちまうんだ。

「ああ、殺せって言ったろう!!」

 リンを突き放すように放り出すと、俺はそのまま触手を展開させて、アイ目掛けて走り始めた。アイは微塵もその場を
動かず、ただじっと、じっと俺のことを見つめているだけだ。

 後、10m・・・5m・・・3m・・・1m・・・!!

 

 傍目には、俺がアイの横を間抜けに駆け過ぎたようにしか見えなかったろう。

 けど。

 次の瞬間。

「うぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 悶絶するような激痛と、魂が抜けちまうような悲鳴を上げながら、俺は両腕から鮮血を噴出してのた打ち回っていた。

「あ・・・アイ・・・?あんた・・・」
「・・・」

 リンが、気を抜かれたような、少し怯えるような声で、俺の両腕を叩き切ったアイに声をかけているのが聞こえた。
 でも、もうアイの返事は耳まで届かない。

 でも良いんだ。これで・・・やっと・・・やっと・・・。
 ・・・?・・・俺は・・・何が・・・したかった、ん・・だ・・・?


****************************************************

「・・・?」
「・・・気が・・・ついた・・・?」

 次に目覚めたとき。
 俺は、真っ青な空を見上げて、仰向けに寝かされていた。そして、その空を切り取るように差した影・・・

「・・・?あ・・・アイ・・・?」
「うん」

 アイの表情はすっかり落ちついていて。さっきまでの痴態も、その後の死神の貌も、欠片も残していなかった。
「もう・・・良いんだよ、秋俊」
「・・・え・・・」
「・・・ごめんね・・・!」
「!?」

 次の瞬間。まだ、何がどうしたのか判っていない俺に、アイがわっと涙をこぼして抱きついてきた。
「あ、アイ?!」
 訳が判らず、それでもとっさにアイを抱き止め様と手が出る。・・・あ・・・手・・・俺の手・・・ついてる・・・?
「・・・ゆらぎを斬り捨てただけだから、大丈夫だよ、秋俊」

 ゆらぎ・・・
!!!!!!!!!!

「アイッ!!」
 
 俺は一瞬にして、自分の今までを実感として思い出した。夢うつつのように頭の中を行き来していた、ゆらぎの時の記憶が、
生々しい現実として自分の中に沸き起こる。
「おれ・・・俺ッ・・・・・・ご、御免ッ・・・こんなこといまさら言っても遅いよな、間に合わないよな、でも・・・
殺していいから、俺のこと許さなくて良いから、それでも言わせてくれ、俺っ・・・おれ、とんでもないことっ・・・!!!」
「・・・ううん・・・すっ・・・」
「?」
 アイの声が潤んでいた。ハッと顔を上げると。そこには、涙を隠そうともしていない、アイの泣き顔があった。
「謝らないと・・・いけないのは・・・え、んくっ・・・私の、方っ・・・だよっ・・・秋俊・・・!」
「アイ・・・?」
「・・・ごめん・・・ごめんねッ!!・・・あっ・・・うあ・・・うあああああああああああああああああっ!」

 いきなり俺の胸の中に飛び込んで、かつて聞いたことがないほどの大声で辺りをはばからず泣き出すアイ。
「お・・・俺のことを斬ったことか・・・?あ、あれは!」
「違うッ!!」
 激しく首を振るアイ。その勢いの凄まじさに、俺はただ声を飲み込んで、彼女の独白を聞くことしか出来なかった。

「わた・・・私ね、気付かなかった・・・!ずっと、ずっと、秋俊が胸の奥に隠してたことっ・・・当たり前なのに、
そんなの当たり前のことなのにッ!秋俊、人間なんだもんっ・・・弱くて、当たり前なんだよ!私達よりずっとずっと
力も無くて、知識もなくて、それなのに必死で、私のこと・・・リンのこと、メグ姉様のこと、それにっ・・・宮広美景
みたいな、ゆらぎのことまで全部一緒に抱えようとしてくれてっ・・・忘れてたの、ごめんねっ・・・ごめんねっ・・・!!」
「アイっ・・・!」

「私・・・忘れてたんだっ・・・少しでも強くあれ、気を張れ、負けるな、勝てって、私、それしか覚えてなかったっ・・・
ずっと、ずっと、弱いことも怖いこともただ悪いことだとしか思ってなくて・・・それで良いのに!秋俊は、秋俊はそれで
良かったのに、それでも必死で、私なんかよりずっとずっと気持ちを奮って、気持ちだけで必死に、私達を支えてくれてたのにっ!
・・・わたしっ・・・そんな秋俊のこと、1度だって慰めたこと無かった!哀しいよね、苦しいよね、とっても・・・
とっても情けなくて切なくッて、・・・とっても、つらかったよね・・・!!」

「アイ、違う、アイのせいなんかじゃないっ!それは俺がっ!」
「違わないよッ!」
「アイ!」
「わたし・・・私ね、向こうじゃ落ちこぼれで・・・いつもいつもメグ姉様に助けられて、守られてた。負けたくなくて、でも
自分の才能無くって・・・だから気持ちだけ、気持ちだけはいつも必死に、負けないように奮い立たせてた。私が負けないのは
気持ちしかなかったから・・・!」
「・・・!!」
「だから・・・それなのに私っ・・・秋俊が必死に守ってた気持ちを踏み躙って、秋俊がくれたもの信じないで・・・だからだよ、
秋俊が悪いんじゃないよ、私がっ・・・秋俊がせっかくくれた、私に任せてくれたものを叩き折って、秋俊のこと追い詰めちゃった
・・・ごめんね・・・秋俊ぃ・・・!」



「岡島君・・・!」
 声も出せず、ただ胸の中で泣くアイの頭を抱きしめることしか出来なかった俺の目の前に、いつのまにか宮広が立っていた。
「宮広・・・!?」
「・・・私も・・・岡島君と・・・それから加賀野さんに、謝らなきゃ・・・」
「・・・クスッ、リンちゃんに・・・言われてたのにね・・・小物は、小物らしくしろ、って・・・でも、でもね、私・・・私
加賀野さんが羨ましかった・・・岡島君のことが羨ましかったっ・・・!なんでも出来る訳じゃなくても、何でも持ってる訳じゃ
なくても、一番大事で、一番私の欲しいものを持ってる2人がずっとずっと羨ましかったっ!」
「宮広・・・」
「だから・・・だから・・・羨ましくって、本当に2人のことが好きで・・・好きで・・・


・・・・・・憎かった!」


「・・・」

 おんなじだった。

 俺も。アイも。宮広も。

 自分一人じゃ何にも出来なくて、自分の一番欲しいものは他の人が持っていて。

 でも、持っていないことが、弱点であることが、とてつもなく劣っているように思えて。必死で突っ張って、突っ張って、
そんなもの欲しくも無い、って顔をしていて。でも本当は誰よりも強く、強く、憧れていて。


 弱くない奴なんて、本当に強い奴なんて、この世にいるはずがないのに。

 バカだな俺たち。メグ姉ちゃんが言ってた台詞が、いまさらみたいに頭を過ぎる。

−弱い心なんて、本当は誰でも持っているものだもの。

 宮広が羨望していた俺も。
 俺が勝手に強者にしていたアイも。
 アイが自分の場所を取られるように覚えていた宮広も。

 皆弱かった。弱くて良かったのに、自分の弱さが嫌いで嫌いで、無いものを望んで、破滅の手前までいっちまった。


「・・・バカだな、俺たち」
「秋俊・・・」
「岡島君・・・」

「でも、俺はそんなアイと宮広が・・・好きだ」
「・・・自分のことは?」
「・・・好きになるよう、努力する。弱くても、弱いまんまでも好きになるよう、努力する」
「・・・うん」
「・・・」

「だから、ケジメをつけさせてくれよ。・・・本当に・・・本当に、申し訳ありませんでしたっ!」
 深く深く、地面に額をこすりつけた。
「秋俊・・・。・・・ごめんね」
「岡島君・・・ごめんなさい」

 俺の様子をじっと見ていたアイと宮広が、それぞれ頭を下げるのが声で判った。

「・・・そういや、リンは?散々、情けないとこ見せちまった・・・」
「ウン。先に工場へ戻ってる。どうやら当たりだったみたい、さっき、私のことも呼びに来たの」
「じゃ、急がなきゃな」
「ウン」
「・・・私も、一緒にいく」
「宮広・・・」


 何も言わずに、アイと宮広の間で手をつなぐ。アイと一体化しようとしたその刹那・・・不意に、忘れかけていた我が
永遠の親友、羽石亨の顔が、言葉が浮かんで来た。

・・・あれ?そう言えば・・・俺の能力って、ゆらぎにも効くんじゃなかったか?だから俺、昔亨に狙われたような・・・?


 そんなことを考えている間もなく。一瞬の光の後に。

『あれ?』
『え・・・ここ・・・どこ・・・?』
『・・・宮広っ!?』

 


 俺と、宮広とを吸収した、魔法戦士改め魔法ゆらぎ少女・アイの、誕生だった。


*********************************************************


「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
 
 気合一閃。
 ビーカーや試験管のあふれる部屋一つをまるごと”怒鎚”が撃ち抜き、ロッド一振りで鉄筋が豆腐のように易々と切り裂かれる。

「・・・わーお♪アイちゃん今日はすっごいハッスルねぇ」
「な・・・生意気なぁぁっ!ちょっとアイ、私のぶっ壊す分もきちんと残しときなさいよね!!」

 気楽なメグと、何故か無駄な対抗心を燃やすリンを尻目に、三位一体となったアイは鬼神をも調伏させかねない破壊神となって
工場を突き進む。その先、幾重もの超強化ガラスで守られた部屋の中に、妖獣を従えた白衣の男たちの姿があった。
『こいつらがっ・・・!』
『私・・・1人2人、顔に見覚えがある・・・そう、アルケーで製造部門にいた人たち!』
『フン・・・くだらない好奇心で、自分が作ってるものの行く先にまで首を突っ込んだんでしょう、それを止めもせずに上前だけ
掻っ攫ったわけね』

 今のアイに、このような防御の備えなど例え百層、千層あったところで一瞬の足止めにもならない。軽く一突きしただけで
全てのガラスが粉微塵に砕け散る。ぱらぱらと輝きながら降るガラスの雪の向こうで、忌々しげに博士らしき男が呟いた。

「フン・・・異邦人どもが・・・人が新しいステージへ進化しようとするのを悉く邪魔して何を目指す。貴様ら魔法戦士どもが
幾ら我等を叩いたところで、進化は別の形で益々促進されていくだけのことよ。かりそめの強者足らんことを望んで人の世に
干渉するなぞ、くだらぬあがきよ・・・」
「何が進化だ。クズの戯言に付き合うつもりはない。・・・殺してやるからさっさと雁首並べろ」
「フンっ・・・強く勇ましい魔法戦士殿よ、良い気になっているが良い!貴様らがやがて、進化した我等の前に打ちひしがれ、
その誇りと強さを蹂躙されて悶え泣く姿、あの世から楽しみにしておるわ!!」

 言うが早いか、一斉に白衣を突き破り、各々正体をさらけ出していく妖獣の群れ。
『アイ、任せろ!』
『ーっ、解光!』

 秋俊の声に、アイが合体を解く。弾き出されると同時に、秋俊の両腕が一気に伸張し、枝分かれして妖獣の群れに襲いかかった。
「ゆらぎだとぉぉっ!?小賢しいッ・・・」
 魔法戦士から生まれ出でたゆらぎの姿に一瞬驚きながらも、格が違うと言いたげに一斉に向かい来る。

「・・・判ってるよ、ゆらぎになろうが何になろうが、別に強くなくて構わねえよ!・・・俺にはッ!」
「私にはっ・・・だから、皆が必要なんだからっ!」

 さっと秋俊の背後から影が走り、一瞬で伸びた青く鋭利な触手が手近な妖獣を貫いた。

「なによなによ、美景も秋俊も勝手に暴れちゃってぇーーー!!」
 ようやく追いついて、憤慨するリンを他所に。

「宮広っ、秋俊、もう良い!!」
 背後からの声にさっと道を空ける2人。展開される触手に隠れていた、魔法少女アイの腕はまばゆいほどに青白く発光していた。
慌ててたたらを踏む妖獣の群れに向かって、秋俊と宮広を制しながら進み出るアイ。

「・・・かりそめの強者?誇り?強さ?・・・・・・くだらない」
「!?」

「弱くて何が悪い・・・・・・だからっ!」

 強烈な光は、もうアイの手を正視出来ないほどになって。しかし、目を背け身を翻して逃げ出そうとする妖獣とは対照的に、
秋俊も宮広も、1度としてそれから目を逸らそうとはせず。


「だから、皆大切にするんだッ・・・貴様らと違ってな!!!!」


 大きく振りかぶったアイの手から、もう本人でも抑えきれないほどの魔力が飛び出した。



「終わりにしてやるッ!!怒鎚!!」



 三位一体の時に引けを取らないほどの、強大な稲妻の束が、封鎖された一帯に雪崩落ちた。撃つが早いかその中へ飛びこんだアイ
が、黒焦げになった肉腫を木っ端微塵に砕いていく。一面全てが煤の塊に変わるまで、時間はかからなかった。






「秋俊」
「アイ・・・」
「私と、メグ姉様と、リンと・・・3人がかりなら、キミの中のゆらぎを完全に断つ事が出来るから、心配しないで」
「ああ・・・」
 どこか気の無い秋俊の返事に、アイが不審げに顔を見上げる。
「・・・どうか、したの?」
「うん・・・」
 と、少し目を伏せた後、秋俊は穏やかで、すこし寂しそうな表情でアイを見つめ返した。

「・・・ゆらぎって、当然人間とは違うだろ、身体のあっち、こっちさ」
「うん」
「・・・もし・・・もしも、俺が今のままだったら・・・銀杏ゆらぎみたいに、何百年も生きていくことが出来て、アイとも
ずっと同じ世界を生きていけるのかもな・・・」
「!」
 アイが、はっとした表情になる。
「・・・それもいいかもな、って、ちょっとだけ思った。メグ姉ちゃんやアイが側にいて、リンに殺されるってことも無さそう
だし、俺って一番環境に恵まれたゆらぎかなって気もするしさ」
 
 黙ってしまったアイに、秋俊が冗談のような口調で明るく笑いかける。
と。
 少しの沈黙の後で、おずおずとアイが口を開いた。

「・・・私・・・。・・・・・・・・・・・・。その、秋俊が・・・望むなら・・・」
「・・・と思ったけど、やめとくよ」
「え?!」
 言いかけたアイの口をふさぐように、秋俊が明るく言い放った。直前までとの落差に、アイがびっくりしたように目を丸くする。


「・・・俺は人間で良い。人間でいたい。人間のまんまで、どうやってアイと暮らしてくか、アイと幸せになれるか考えたい。
・・・アイや、リンや、メグ姉ちゃんや宮広や、紫や結亜たちと、俺は俺のまんまで何が出来るか考えていきたい。
・・・そうだよな、アイ」

 さっきとは明らかに違う。真から出た明るい台詞。一瞬驚いた顔をしたアイが、次の瞬間、破顔した。
「・・・一緒に・・・考えていこう・・・秋俊!」
「おう!」

 
 ようやく、ようやく見ることが出来た、心の底からのアイの笑顔。

 力と引き換えに手放しかけていた、俺の本当の願い。



 願わくば、この笑顔を一日でも、一年でも長く、見続けることが出来ますように。











「・・・でぇ?秋俊、片がついたところで・・・判ってるわよねえ?」
「なんの・・ことでしょう、リンさん、あいや、リン様」
 ぱきぽきと指を鳴らしながら、赤装束の魔法少女がゆっくり歩み寄ってくる。

 宮広、メグ姉ちゃん、アイ。

 ・・・取合えず、俺が明日まで生きてる為の方法を、一緒に考えてください。


「黙ってそこへ直れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」



(fin)