轟と、閃光と爆音が辺りを包み、視界の隅に残っていた私達の詰め所、白亜の三階建てが半ばから
吹き飛んだ。
・・・自爆の道連れに何匹かは巻き込んだということか。
 崩れ落ちていくその建物の中に、今しがた仲間が飛びこんでいったことを、もうそんな風にしか
受け止められない自分がいる。
 私もやっと、一人前の戦士の性根が身についたということか。
・・・・・・それとも。
いまさら、たかが一人や二人の安否など気遣える状況では、無いからか。生き死にを考えるような気持ちは、
ぽっかりと穴が空いたように私の心の内から消えていた。

 と、そんな瞬時の思考さえ隙と見られたか。背後に風を感じて反射的に身をすくめる。髪の毛が動きに
追いつく前に、数条の影が頭の上を薙いでいった。

 −戦場じゃ、長髪なんて「奴ら」の良い標的だ。

 師匠に教わった知恵が事実なら、わざわざカットをしてくれたこいつはよくよく良心的なんだろう。
「ハッ!チビのくせに動きもトロいんじゃ取り柄がないわね、化け物!」
『良いねえ、やせ我慢とか強がりとか。気の強いお姉さんはボクの好みだよ?』
『その顔が恐怖に歪んだ時のアソコの締まり具合がたまんねぇんだよな、イヒッ』
「半日前に生まれたばかりのウジ共が、何偉そうに気取ってるのよッ!」

 うねうねと、人間で言う肩甲骨の辺りから複数の触手を生やしながら、この醜悪なニオイと姿の化け物・・・
『妖獣』どもは、小憎らしいほどに落ち着き払っていた。・・・もっとも、それはそうだろう。

 ・・・・・・『この世界』の指示系統と戦力を、わずか数日で崩壊させたとあれば、幾ら臆病者のこいつらでも・・・
いや、臆病者だからこそ・・・増長もしようというものだ。

 増して相手が私達・・・魔法戦士ともなれば。



『魔法少女アイ2SS  前 夜  』



 全ては、唐突に、そして一斉に始まった。
私達戦士の養成所宿舎。
評議会の議場。
恒久維持局の集会場。

 仕掛けられていた「卵」が一斉に孵化したのは、『あちら側』に逃げ込んだ首謀者に備えて、門の監視が厳重に
なっていた、そんな時。まさか置き土産があるとも思わずに、戦力が偏った隙を衝いて。たまたま宿舎の管理当番だった私が、
悲鳴に部屋を飛び出して見たものは

 後輩達の飛び散った脳漿と千切れ飛んだ手足、血溜まりの海の中で、気持ち良さそうに仲間だった者を食らう
数人の魔法戦士・・・妖獣に憑かれた連中だった。訓練生が着ている黄色いはずのコスチュームは、もう真っ赤に
染まって元の色が判らない。
 翌日審査に使われるはずだった試合場は、本当の殺し合いの場になった。

 評議会や維持局は私みたいな最下級の一般戦士が入れるところじゃないけど、遠目にも見える崩落や破壊
の痕を見れば、何が起きたかはおのずと知れる。
 私は辛うじて目に付いた知り合いと行動を共にしつつ、奴等の抹殺に移った訳だけれど・・・・・・
 さっき、腹を抉られて自爆した娘を含めて、もう3人ほどパートナーが代わっている。認めたくないけど、今
「狩られて」いるのは私達の方なんだろう。
 随分見晴らしの良くなった今現在、周囲を見渡しても、視界の届く限りに魔法戦士は見当たらない。
 そんな私の様子を見て、2匹が示し合わせたように、下卑た笑いを浮かべた。
ナリだけは子供のくせして、随分と大人びた下品な面構えだ。
『じゃあ、そろそろ本気でいくよぉ』
『本気でイかせたい、だろぉ?イヒッ』
−!虫唾が走る・・・ッ!

 次の瞬間。前後から同時に疾った肉の鞭を、その場で一回転しながら斬り捨てる。二の矢を継がれる前に
こちらから前に向かって突進し、真っ向から放たれた触手を足場に上を飛び越えた。これで2匹とも一直線上に
並んだ訳だ。そのまま私は前方の壁際まで走って、そこで振り向く。思ったとおり、ほとんど並走するように
2匹が追ってきた。
 
『オレを踏み台にしたなぁ!』
『イヒッ、行き止まりだよぉ!』
 勝手なことをほざきながら、大きく触手を広げているのは私の逃げ場を奪ったつもりなんだろう。・・・が、
こっちにとっては好都合!

 足を止めた私に、獲物を追い詰めた優越感で2匹が速度を緩めた瞬間を見逃すつもりは無かった。

「−照光!」

 私の掌から半円状に飛んだ光の矢は、馬鹿みたいに触手を広げて、わざわざ的をでかくしてくれた2匹に
面白いように当たった。即効性の麻酔効果・・・でも、それを盲信するほど私は自信家じゃない。
 その油断で、私に2年も修練の延長期間をくれた相手がいるもの。
 触手の動きがほんの僅かににぶくなるだけで、十分だった。思ってもみなかった、とでも言いたいのかしら。
得物を構え直し、半歩踏み出した私の動きに大きく目を見開いて、恐慌を来したように赤黒い触手が震える。
・・・なめるな。
「ボディがガラ空きよっ!」
『あ』
『イ』
 断末魔も聞きたくない。瞬時に間合いを詰めると、一気に振りかぶった。
上顎と下顎を口の高さでまとめて水平に切り分け、返す刀で喉を裂く。念の為だ、最後に”號焔”で悲鳴ごと焼き尽くすッ!

 ・・・・・・自分が、既に戦場にいることは百も承知していた。奴等が無尽蔵に増えていることも判っていた、のに。
自分の放った猛火の轟音に、微かな物音など打ち消されてしまうことを、私は忘れていた。
 背中に風切り音が聞こえた瞬間、肩に焼け付くような猛烈な熱さが広がった。遅れて飛んだ鮮血に、初めて斬られたの
だと頭が理解する。

「あぅグッ!」
 情けなくも獣じみた悲鳴が漏れたが、身体は正直に訓練の結果を・・・攻撃を受けても立ち止まるな、と、何千、何万回も
叩きこまれた条件反射でその場から飛び退る。その後、ようやく肩を押さえて、私は新たな敵の姿を確認出来た。
醜い異形には慣れている。ゆらぎ、妖獣、むしろ私達にとってはありふれた姿だ。
・・・が。
 魔法戦士の死骸を2つも3つも触手で無理やり束ねて隠れ蓑にしているような、挑発的な輩は初めてだった。
死骸で出来た「盾」の隙間から触手だけを出して、こちらを誘っている。
「ふっ・・・ざけた真似をッ!」
 死者に仲間意識なんて寝言を持ち出す気はさらさら無いが、姿も晒せぬ臆病者に挑発される謂れは無い。
一気に間合いを詰め、無駄にうねる触手を斬り捨てようとして・・・

 私は、全身を切り刻まれた。


「あっ?・・・ンぶっ!?ギッ・・・ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!・・・がハッ!!」
 目の前が一瞬真っ暗になった。絶叫と血反吐がない交ぜに口から噴き出た。

 あたしっ・・・あたしっ!?
 何が、どう、なんでどうし痛い痛い痛い痛い痛い!!
 動転した頭とぐるぐる回る視界の中で、「盾」だと思いこんでた死体を突き破って伸びた、鋭利な刃の鞭が自分を
貫いたことだけは判った。

 ・・・そうか。
 見えてたのは、囮か。

 駄目だ。
 意識・・・飛ぶ・・・

*********************************************

 血を吐き散らしながら、独楽のように回って倒れた獲物を確認すると、妖獣はゆっくりと本体を現した。その姿は
この世界に散開している同胞とは身体のサイズが一回りは違っていた。こうやって目の前に狩ったばかりの少女戦士が
倒れ伏していても、勇んでがっつこうとしない辺りの余裕からも、既に数人以上の魔法戦士を『喰って』成長して来た
ことが伺える。
 ゆっくり数歩前まで近づき、ねちっこい糸を引く一本の触手で戦士の得物・・・鎌のついた棒のようなもの・・・を
絡め取った上で、改めて戦士の全身にくまなく視線を注ぐ。
 腰の辺りまで延びた銀髪を、ディープブルーのリボンが後ろでまとめている。
 一人前の戦士であることを示す戦闘服には、今しがた彼の触手で無数に刻み込まれた紅い傷跡が走っていた。だが、
さすがは魔法戦士というべきか、深手を除いて既に回復が始まっている。仰向けに倒れ、微弱な浮き沈みを繰り返す
胸の双丘が、まだ息があることを伝えていた。

 彼女の回復を待つかの如く、しばし観察を続けていた妖獣が、やがて思いついたように片手を前に伸ばした。
人間のような5本の指が、宙空へ差し出されたまま細く長く伸び、無数の節を持つミミズのような触手へ変わる。
ミミズはそのまま一直線に狙いを定め、浅い上下動を繰り返す乳房の双山をくくると根元から絞った。
「ン・・・くあふっ・・・?!」
 唐突に呼吸を乱され、喘ぎ声を上げる彼女に何の情けもかけず、そのまま胸だけを掴んで宙へ持ち上げる妖獣の男。
片手の、たった5本の細い指のどこにそれほどの力が秘められているのか知らないが、男の顔には微塵の変化も無い。
無表情のまま、十重二重に乳房を縛る触手に力の抑揚をつけていた。
「あ・・・ぐうっ!・・・は、あがっ・・・?!」
 愛撫などという優しい気配は微塵も無い。敢えていうなら搾乳だろう。きつく激しく乳房を揉みしだかれる痛みに、
銀髪の魔法少女は半ば強いられるように意識を取り戻した。

「あ・・・っく、おまえッ・・・ひァンッ!」
 その瞬間を待ち構えていたかのように。彼女の意識が戻った直後、余っていた1本のミミズがうなじを這った。
ひんやりと、そして思いのほかにすべすべした触感が、舐めるように首筋を襲う。半分眠っていた感覚が叩き起こされ、
同時に総身の産毛があわ立つような刺激が走った。思わず口から涌き出た情けない悲鳴に、自分を殴りつけたい衝動に
駆られる。が、そんな後悔をしている暇さえ、虜囚となった少女戦士には与えられなかった。
 「男」の肩甲骨の辺りから延びた、赤肉の露出した醜い触手が、後手に彼女の細い両腕を拘束する。その死肉の臭いと、
縛られた腕から垂れてくるどろりとした粘液の感覚に思わず表情が歪む。
「おま・・・えっ・・・ンくっ・・・あ、私を・・・どうする、つもりよっ!」
 無理に演じられる強気が痛々しい、そんな彼女に対して、しかし、男は一言として返事をしない。ただ口の辺りから、
コォォォォォ・・・という音とも唸りともつかない奇怪な声を漏らしつつ、腕を巻き取った触手をピクとふるわせた。

「あぎぃぃいぃぃぃいいいいいっぃぃいっ!!」

 ただそれだけの動きで。少女の腕は両肘の辺りからメリメリと嫌な音を立ててねじれ、すぐにぐるりと180度回った。
あっさりとへし折られた腕の激痛に、無け無しの強気さえ奪われ、絶叫を上げる魔法戦士。だが、拷問はそれだけで
終わらなかった。1度捻じ曲げた腕を再び元の位置に戻す妖獣。
(な・・・にをっ・・・?!)
 惑乱する少女の思考をよそに、赤肉の触手から幾条もの細く小さなもやしのような、ま白い触手が生え出ると、ねじ
切られた肘の中へ潜り込んで来る。その痛みに思わず、再び声を上げそうになった彼女はしかし、戦士としての誇りに
かけて喉の奥に其れを封じ込めた。
が。
「・・・っぐ、こんなっ・・・ことでっ・・・私が、参るとでも思って・・!・・・え!?あ、い、なに、痛ッ・あぐっ、
 ひぎっ、駄目ェ!あうぁァァァァァァァァァアァァアァア!!!」

 小手先の努力とプライドを引き千切るように、再び平然と腕をねじり上げた触手に、少女は思わず白目を剥いた。
1度千切られた神経をわざわざ触手で繋ぎなおされ、あまつさえそれを同じように又ねじ切られる。
予想もしていなかった2度目の衝撃に、強がりさえ言い終えることを許されず、悲痛な絶叫を上げる魔法戦士。

「ふ・・・ひ・・・アン・・・くっ・・・」

 血の気の失せた表情でがっくりとうなだれる彼女の頬は既に汗と、そして涙とでじっとりと濡れ、銀髪が幾条も張りついて
いる。だが、ぜいぜいと荒い呼吸を漏らす唇とは対照的に、彼女の胸の拘束はあくまで規則正しく触手によって上下動を
管理され、思いのままに息を吸い、吐くことすら許されない。

(・・・肺・・・息・・・入ら・な・・・だ、目ぇっ・・・苦し・・・、き、させてぇ・・・)
 絶望的な痛みと息苦しさに、意識の構成がままならない美少女魔法戦士を宙吊りにしたまま、男は再度、冷徹にも白い
もやしを肘にすり込み始めた。

「いやああああああああああああああああ!やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 途切れる呼吸さえ後回しに、最早強がりもプライドも置き去りにして哀願の悲鳴を上げる少女戦士。が、その声に男が
反応することは無かった。骨をこなごなに砕かれ、血管の全てがいっしょくたに潰され、青黒く変色した皮膚と無惨に
血で染められたアームガードの破片。もはや、繋がっていること自体が奇跡にさえ思える両腕がようやく解放されたのは、
3度目の、断末魔とも思える絶叫が響いた後だった。


 だらりと力無くぶら下がる両腕をそのままに、乳房だけで全身の重みを耐えさせられる少女戦士。その無理矢理な負担
のせいか、先ほどから乳房は限界まで膨らみながら充血し、乳首はピンと張り詰めていた。完全に腕の神経が断たれ、
解放されたせいで、自然彼女の意識は束縛されたままの胸に向いてしまう。
(・・だ・・・め・・・か、考えちゃ・・・よ、余計敏感になっちゃ・・・!)
 考えまい、とする思考そのものが既に、自分の乳房に意識を取られているのだが、今の彼女にはそんな理を想う余裕など
無い。

 と。しばし次の手を考えるように動きを休めていた男がまた、何かを思い立ったように腕に力を入れた。そんな変化に
魔法戦士が気付いたか、否かの瞬間。
 唐突に、胸を縛っていた触手の先端が更に細く細く伸び、ツンツンに固くなり尖りきっていた乳頭に突きたった。
「あふんッ!ひ、いぎっ、あうんッッッッッッ!?」
 痛みと刺激に一瞬事態を把握出来ない少女を無視し、戦闘服の膜ごと乳腺に潜り込もうとする触手。ミミズが舌を出した
ようなソレは、服の上から的確に乳の出る穴の位置を探り取ったようだが、乳首を覆う戦闘服を破る、などという手間を
かける気は無いようだった。
「ッ!!・・・ま、待って、駄目、ちょっ、服ごとなんてそんなッ・・・駄目、駄目、駄目ぇーーーーーーーー!!!
うあああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 つぷつぷと、戦闘服を引っ掛けたまま触手が乳腺を抉り、潜り込んでいく。皮膚の外側ではぐいぐいと絞める触手が
胸を刺激し、内側からは潜り込んだ触手に陵辱され、気が狂いそうなほどの激痛に襲われていた少女戦士・・・だったが。
しばらく続いた陵辱の痛みに、半ば痛覚が麻痺しながら慣れてきた頃。段々と、胸の内に別の感覚が芽生えてきたことに
彼女は気付いた。
(何・・・?)
 痛みに混じりながら感じる刺激。
 触手が乳腺をこすり、えぐり、這いずり回る刺激が産み出す感覚。
 ・・・それが、”快感”だと理解するのに、彼女の理性は数秒を要した。
(な・・・に、嘘っ・・・な、どうしてっ・・・ヒンゥッ!・・・や・・・き、気持ち・・・!)

 −気持ち良い!?−

「いやあああああああああッ!だめ、こんな、そんなおぞましっ・・・ひッ、ふあ、くああああああん、ん、ンッ!」

 おぞましい死肉の化身に犯されて、乳首の中まで触手に陵辱されて感じる変態女。とんでもない、認めてはならない
自分の”気持ち”にぞっとして上げた悲鳴に、我知らず甘い喘ぎが混じってしまった。
「ンくっ・・・ケハァッ!ひぃん・・・あふ、く、あぐぐっ・・・!!」
 ハッとして下唇を噛み締め、声を塞ごうとしても、1度解放してしまった声音は抑えられない。

(いや、駄目、こんなこと・・・気持ち良くなんかっ・・・おぞまし、だけっ・・・)

『おぞましい触手に犯されて気持ち良く感じるのか、変態』
「!」

 必死に脳裏で否定しようとした、まさにその瞬間に。
 これまで一言も発しなかった妖獣が淡々と、こちらの焦りを読んだかのように口にした。 

「ちがっ・・・こんンなぁ・・・あふっ!・・・こんな、こんなのっ!・・・あ、ンン!・・・何でもっ・・・・ひああああ!」
 誘われるように、思わず声に漏らして否定しようとする。だが、ぐつぐつと煮えたぎるような乳首の快感に、最後まで
紡ぐことが出来ない。それが、触手が乳腺の奥で分泌した媚薬の性だ、などと気付ける余裕なぞ残っているはずもなく、
強制的に与えられる快感を無理に否定しようとするたび、身体がくいくいと跳ねて彼女を裏切る。
「ら・・・・めぇ・・らめ、ひや、あふぅっ!」
『イくのか』
「ほんな、こ、あるわけ・・あがあッ!」
『気持ち良いんだ』
「ひあう!ち、が・・・」
『おぞましい肉の節を自分の乳首に誘い込んで、乳の穴の奥の奥まで気持ち良くなって、変態女はご満悦だな』
「おごォ!が、かはっ・・・!!」
 びくびくと震え、今すぐにでも絶頂に達しようとする身体を抑えるのに必死で、最早抵抗する言葉も出てこない。
(だめ・・・駄目ぇっ・・・こんな・・・こんなのっ・・・)
 火照り切った身体と、今にも融けそうな精神の両方を守ろうとして、却って高みに昇っていく性感。

 と。そんな焦る心に追い討ちをかけるように、乳房の中で変化が起こった。
 身体の奥の奥から乳頭へ向かって、熱いたぎりがせり上がっていく。
「なっ・・・」

『フン、何だ、触手の先で乳の味を感じるぞ?オレの子でも孕んだのか』
「!!!!!!」
 乳の味、も無いものだ。それは誰あろう妖獣本人・・・本体か・・・が、自らの分泌した体液を元に無理やり生成した
擬似乳液でしかない。が、そんなことは無論、パニックと高まる性感に囚われた彼女に判る筈もない。
「いやっ!いや、いや、止めてぇ!」
(壊れちゃ・・・壊れちゃうッ!・・・あたし・・・おかしく、なっちゃっ・・・)
 せめてもの抵抗に、必死に首を振る魔法戦士の少女にはお構いなく、もみもみと胸を揉みしだく触手の動きに合わせて、
その『乳』は出口へ近づいて来ようとする。だが。

 その乳腺は、触手で塞がれたままになっている。

「は・・・ひぅ・・・胸、胸の中・・・膨らんじゃ・・・ひあうっ・・・ヌ、抜いて、駄目、くああああっ・・・」

 皮膚を捕らえる触手は、胸を根元からしごいて搾乳しようとし続ける。一部はこりこりと乳頭を弾いたり、つまむように
巻き付いたりさえしていた。
 乳腺内に潜り込んだ触手は乳を押し返し、更に奥へと潜り込もうと中を抉る。
 彼女の白く美しい肌は完全に充血し、張り詰め、行き場を失った乳液と触手の惷動、そしてもみもみと胸の形を崩しては
揉み続け絞め続ける触手の動きで、暴発する寸前まで追い詰められていた。
 だがその一方で、滲む乳液ですべりの良くなった触手は乳腺の中を自在にこすり回り、かゆみを伴う快感をこれ以上無い
ほど身体に刻み込み、劣情を熱く燃え上がらせる。
「あぎいいいいいいいいいいいいいいっっっっ!!ひ、あ、止めて、やめて、はぁん、ひああああああああああああんっ!!」
『何を止めて欲しいのか判らんな』
「あぐうううう、だめ、出ちゃ・・・出ちゃう・・・や、痛いッ、溢れ、膨れて、膨れてッ・・・!」
『フン、まともに口も聞けないのか、だから淫乱女の変態魔法戦士は嫌いなんだ』
「そんなことっ・・・はぎいいいいいいっ!が、あがっ・・・やめ、止めてッ・・・」
『抜くのを止めればいいのか?』
「あ・・・」
『こするのを止めてほしいのか?』
「そ・・・」
『止めて欲しいのはこちらだな。まさかオレの触手まで発情の道具に使われるとは思わなかった。貴様のような変態淫乱女が
恥ずかしげもなく魔法戦士などと名乗るか、見下げ果てたクズだな』
 
 恥ずかしげもなく抜け抜けと言ってのけているのは自分の方ながら、妖獣の態度は心底、目の前の魔法少女を侮蔑していた。
その余裕と侮蔑に、既に限界まで来ていた魔法戦士は耐えられなかった。
「く・・・クズでっ・・・い・・・から・・・あ、く、ぬ・・・抜いてぇっ・・・む、胸、壊れ・・・爆発しちゃうううううっ!」
『よく聞こえんな?貴様は何だ、戦士か、メス犬か、それとも触手で欲情する破廉恥なクズか?』

(そんなこと・・・言えないッ・・・!・・・くうううううっ!)
 一刻も早く堕ちたがる意思を、開こうとする口を、最後に残った一片の誇りが必死に鞭打って押し留めようとする。
(・・・く・・・屈する・・・くらいなら・・・死・・・死にた・・・!)

 そんな、彼女の最後のあがきをじっと見ていた男は、まるで温情をかけてやるかのような口ぶりで残酷な宣告を下した。

『口がきけないのか?なら・・・開いてやる』
「?!」
 一瞬言われた言葉の意味が判らずきょとんとなった彼女の眼前に、男の舌がべろりと口を飛び出し、宙を泳いで突き出された。
「ーーーーーー!!!」
 最早悲鳴にもならず声の飲み込まれた、魔法少女の紅い唇を割って、ねっとりと粘液を纏う、赤紫のナメクジの如き妖獣の舌が
侵入する。白い歯を食いしばり、内から漏れる嬌声と、外から捻じ込まれる妖獣の舌とを食い止めようとしていた魔法少女の努力
はしかし、その圧倒的な力の前には貧弱に過ぎた。
「ム・・・ふぐっ・・・ひぐおおおおおおおおおおおおおお!!」
 歯の根を割って無理やり咽喉まで一直線に伸びた触手に口内を陵辱され、歯の裏、喉の奥に至るまでねっとりと粘液まみれに
蹂躙される。苦く気持ち悪いだけのその粘液を吐き出すことも出来ず、唾液と共に飲み干すまで許されることは無かった。
「げぼっ・・・がふっ・・・くああっ・・・」
『良し良し、変態は変態らしく、きちんとオレの唾液を飲み干したな。・・・・・・それじゃあ・・・ご褒美だ』
「!?」

 その台詞をいぶかしんだ次の瞬間。
 何の前触れもなく、乳腺に蓋をしていた触手がぐいと引き抜かれた。
 同時に可憐な口の中を一杯に満たしていた醜悪な妖獣の舌も抜き取られる。
 彼女の精神は、唐突な解放に耐えられなかった。

「ギャフアォオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!」

 呼吸も出来ず、薄らぎかけていた意識に向かって、それは余りに激し過ぎる快感だった。目の前に白い空白が生まれ、
乳房で爆発した性感の解放が、意識と理性を一瞬にして灼き尽くした。意味不明な絶叫と共に、たまりに溜まっていた白い乳液が
噴水のように放射される。ほとんど同時に、魔法少女の身体は海老のように反り返り、宙に浮いたままの脚は激しく痙攣していた。
「あがあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 残酷なほどに強烈な絶頂を迎え、身体がこなごなに砕けそうなほどの快感と、それに続く喪失感に襲われ。
全身をだらしなく弛緩させた魔法戦士の双眸からは、先ほどまで曲がりなりにも宿していた意思の光が失われていた。
「・・・あ・・・・・・・・ああ・・・・ン・・・ンン・・・」
 絶頂の余韻が残っているのか、まだ小刻みに形の良い胸を痙攣させながら、口からふきこぼれるよだれにも気付かぬ少女戦士。
だが、一方の妖獣には、満足した様子は更々無かった。

『・・・想像以上の淫乱だな、ここの女どもは。何が魔法戦士だ、変態女が大仰に過ぎるとは思わんのか、ああ?』
「あ・・・うう・・・」
 まっとうに返事も返せない少女に、しかし妖獣の男も最初から答など期待していなかったように、次の行動に移る。
いまだ脱力したままの彼女の胸から無造作に触手を解くと、今度はその触手を、倒れ伏したままの彼女の両足に伸ばした。
ありていに言えば逆さ吊りである。
 へし折られた両腕と、銀の長髪がぶらりと垂れ下がる中、今度は自分の顔の高さまで彼女の肢体を引き釣り上げる。
そして・・・おもむろに、布一枚で隠された彼女の秘所に舌を這わせた。つい今しがた迎えたばかりの激しい絶頂のおかげで、
既にぐっしょりと濡れた戦闘服の上に、よだれが一層濃くシミを作って広がる。

「フくッ・・嗚呼ッ!」
 さんざん上半身を嬲られた後、初めて感じる下半身への刺激に再び少女の四肢がびくりと震えた。
『フン。これだけ濡らしておいて戦士か?答えろ、魔法戦士とやらは皆、憎い敵の触手で発情して下布をぐしょぐしょに濡らす
変態淫乱女なのか?』
「はっ・・・あ・・ち、がうっ・・・!あ、うう・・は、離せ・・・はな・・して・・・!」
 全身を襲った気だるさからようやく立ち直りつつある魔法戦士が、弱弱しく抵抗の台詞を漏らす。

 だが、それを気にすることもなく、躊躇なく・・・

 妖獣はいきなり、舌を突き入れた。
 
 濡れているとは言っても、まだ男を受け入れた事の無い、固く無垢な花弁を強引にこじ開けて。

「ぎゃあああああああああああああ!!!!!いた、駄目、止めてぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!!!」

 一瞬にして大きく少女戦士の目が見開かれ、口から悲鳴が零れ落ちる。これまで1度たりとも・・・妖獣やゆらぎは無論、
男にとて許したことの無いその秘部を、よりによって分厚い妖獣の舌にこじ開けられる屈辱と激痛。
みしみし、めりめりと嫌な音を立てて、赤紫のナメクジが彼女の肉壁を割り進む。
彼女の懇願を欠片たりとも受け入れることなく、大きく太い妖獣の舌は、そのまま突き当たった薄い壁を貫いた。
 ぷつりと音を立てて皮が破れ、妖獣の舌に純潔の証が散らされる。
「ウグアアアアアアアアッ!」

 処女を奪われた痛み以上に、その相手が妖獣の触手・・・しかも舌の変化した触手。その屈辱きわまる状況が、彼女の悲鳴と
なって漏れ出ていた。
 だが。
 憎き魔法戦士に極上の屈辱を与え、身悶えて滂沱の涙を流させているというのに、妖獣には一片の歓喜の色も無い。

『フッ・・・これが魔法戦士の破瓜の味か?』
「あ・・・・くぅっ・・・く、ま、満足!?」
『不味い』
「ーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!」

 舌を引っ込め、ペッと、紅い鮮血の混じった痰を吐き出す妖獣。
 挑発するでも揶揄するでもなく、単純な事実を伝えるだけであるかのようなその態度は、どんな揶揄よりも激しく、彼女の
プライドをずたずたに切り裂いた。
 この様な陵辱をも自然と覚悟していなければならない下級魔法戦士にとって、処女などさして意味の無いものではあるかも
知れない。
 だが。それにしても。
 ここまでぞんざいな、そして屈辱的な扱いを受けた処女喪失は凡そ他の魔法戦士にもあるまい。

「き・・・貴様ッ・・・こ・・・殺すッ」
『それとも、もう一つの穴は美味いのか?』
「なっ!?」
 精一杯の怒りを込めて妖獣を睨みつける彼女の瞳を一切無視して、あくまで自分勝手に台詞を紡ぐ妖獣の男。だが、その意味を
理解した魔法戦士の顔からは一瞬で怒りが消え、恐怖が浮かび上がっていた。

「ま・・・さかっ・・・!?」
『こっちだ』

 言うが早いか、菊門に向かって早くも舌を伸ばしていく妖獣。
「や、駄目、駄目ぇーーーーーーーーー!!」
 何度も無視されている懇願の悲鳴を、それでも上げざるを得ない魔法戦士。しかし、やはりこれまでと同じに、彼女の悲鳴も涙も
何の効果も持たなかった。
『・・・今度は、少し変えて見るか』
「・・・え?」
 男の独り言に、思わず顔を向けた少女の視線の先で。男の舌はゆっくりと形を変え、丁度男の性器と同じような形へと変貌を
遂げていった。

『この形ならその気になるんだろう?お前のような変態は』
「な・・・何を言ってるのよッ!!」
『言葉通りの意味だが?』
 そう言い捨てるや、反論も待たずにアナルをこじ開け掘り進む妖獣の舌。

「いやあああぁぁぁっ!!あふん、はっ、はがああああああっ!!ひっ、ひっ、あひぃぃぃぃぃ!!」
 思わず身をよじり、逃れようとする少女戦士だったが、その動きは妖獣からは、腰を振り、舌を呼びこむ動きにしか映らない。
『ッフフン。思ったとおり、こちらの方が反応するのか。変態淫乱戦士とはいえ、まさか前よりケツの穴の方が好みだとはな』
「違っ・・・ああああああああああぁ!ハフゥッ!ひ、ひぃああぁ!!」
『何が違うものかよ。それ』
 突然、強力に舌を押し込む妖獣。ずぷりと伸びた舌の先は、大腸の近くまで一気に胎内を駆け上った。
「プふっ!?ふひああああああああああああああああああああああ!!」
『見ろ。同じ初めてでも、前ではイかなかった貴様が後の穴ではこうもあっさり絶頂に達しているではないか』
「あ・・・はふ・・・」
『?・・・それとも何か?アナルは経験豊かだったのかな?なるほど、そういうことか。変態は違うな』
「くっ・・・ウッ・・・」
 独りごちる妖獣に反論したくとも、無理やり掘られた痛みと、屈辱と、そして絶頂を迎えてしまった情けなさとで言葉が
出ない魔法戦士。宙吊りにされたまま、只涙を流す以外に何一つ自由を許されない身体。

『まあ安心しろ。お前みたいな淫乱の変態でも、まともに前で感じられるよう、きっちり教育してやるからな』
「や・・・やあ・・・イや・・・・・・・あふぅんッ!!」
 繰り返される陵辱と挑発の前に、既に完全に抵抗の気力を削がれた魔法戦士には最早、いやいやと首を振るぐらいの反抗しか
出来なかった。が、妖獣はそれすらも許さぬように、肉芽に細い触手を巻きつけるとコリコリ弄りまわした。瞬時にして
抵抗は快感の波に押し流され、甘い喘ぎとびくびくと震える反応にとって代わられる。
さらに、それだけでは足りないと見たのか、一部の触手の先は吸盤のように丸く変化すると肉芽に吸い付き、コリコリと齧ったり、
ちゅうちゅうとわざとらしい音を立てて啜ってみせたりしながら嬲り始めた。

「あ・・・はあぁぁぁぁんっ!!んくっ・・ひぎ、は、ふ、ら、めえぇぇ!い、イく、イっちゃ・・・またイっちゃうゥゥ!!」
 
 悶えながらも、その声は既に艶の入り混じった嬌声に変わりつつあった。彼女の身体に、戦士としての気力が最早宿っていない
ことを見て取ったのか、妖獣は一端身体を解放すると、すべての触手を陵辱に回した。

再び胸を拘束し、中へ抉りこんでいく触手。
菊門から中へ入り、肉壁に己をこすりつけながら奥へと潜り込む触手。
口内に侵入し、彼女の舌と歯を絡めとって無残なディープキスを繰り返す触手。
胸の谷間に何度もこすりつき、強制奉仕させながら、白い肌も黒いインナーも無く白濁液を撒き散らして穢していく触手。

 そして、最後に妖獣の腰の下からそそり上がった巨根が、ほっそりした魔法戦士の股をこじ開け、ずぷりと飲み込まれた。
「ふああああんっ!!・・・いい、いいのぉ!あうあああああ、だ、だめ、ま、真っ白になっちゃ・・・あああああああ!!」
『真っ白になれ。楽になれ』

 最後の最後まで残っていた理性の欠片を、妖獣が耳元で囁く声が持ち去っていく。
(らく・・・なれ・・・ま・・・白・・?)

(・・・私は・・・私は・・・・・・・・・・)
『メス犬です』
(・・・メス・・・い・・・?)
『尻の穴でイく淫乱変態女です』
(いんら・・・は・・へん・・たい・・・)
『化け物の巨根を平気で飲み込むガバガバの拡張女です』
(ガバガバ・・・ひろがっ・・・・て・・・)
 
 僅かな思考の間も与えぬように、ごりゅっと抜き差しを始める妖獣の巨根。それが性器なのか、それとも触手の一本に過ぎない
のかは最早、問題では無い。彼女の肉壷に受け止めきれぬほどの太さと長さを持つソレが、中を強引にピストンするたび、ひだの
一つ一つがめくり上げられ、こすられ、押し戻される。
「あごおおおおおおおおおおおっ!ふあああああん、ひっぃ・・・ぎあああああああああああああ!!」
 余りに強烈で、きつすぎるその刺激と快感に、まともな感情も声も浮かばず、波間の木の葉のように巨大な妖獣によって
前後に揺さぶられる魔法戦士。
『・・・やはり小さ過ぎるな。キツイ・・・フハハ、化け物の精をそんなに搾り取りたいのか、淫乱魔法戦士様は!』
「ひ、あ・・・・」
『なら、お望み通りくれてやる!』

 それは射精などという生易しいものではなかった。魔法少女の膣内に収まりきらぬほどの大量の白濁液が、一度にぶちまけられる。
きつきつに広がっていた彼女の膣をブチ破らんばかりのそれは、子宮壁に押し寄せ、こびり付き、溢れて外にまで流れ出た。

「ああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 これまでで最大の絶頂に襲われ、膣に巨根を突きこまれたままの状態でビクンビクンと幾度も身体が反り返り、跳ねて・・・
そのまま魔法戦士の肢体は地に投げ出された。さながら、糸の切れたマリオネットのように。
白目を剥き、びくびくと痙攣を繰り返すその姿に、もう正気は残っていない。

が、妖獣はそこまで嬲った少女に、更に最後の止めをさすかのように、無理やりに前髪を引っつかんで顔を起こさせると、
いまだ焦点の定まらぬ瞳の前に己の巨根を見せつけた。
『オレは貴様にご馳走をくれてやったんだ。判るな?お礼はどうした?』
「・・・はい・・・あ・・・りがとう・・・ござい・・・ます・・・」
『だったら、食後には綺麗に片付けるのが当然だな?』
「・・・あ・・・は、はい・・・綺麗、に・・・」
 うつろな瞳のままに、半ば命じられるまま応える魔法少女。腕の使えない彼女の口に、妖獣はそのまま、いきり立ったままの
怒張を突きこんだ。
「!!ふぐっ・・・あむっ・・・くフッ・・・カッ、あごぉっ・・・」
 一気に喉の奥まで突きこまれ、むせながらも、感情の消え果てた彼女は命じられるままに口腔奉仕を行おうとする。
たどたどしい舌使いながら、亀頭の先から肉棒の根元までをゆっくりと、こびりついた白濁をこそぎ取るように舐めとっていく。
紅いルビーにも似た小さく形良い唇と、ちろちろと見え隠れする可憐な舌が、己の醜く屹立した肉棒にねっとりと絡みつく快感。
それは、妖獣の想像を超えて、あっと言う間に快楽の高みへと誘っていった。
『・・・ムッ・・・くっ!?』
「?」
『良いぞッ!・・・褒美だ、一滴も漏らすなよ、出すぞ!!』
「あ。ふ、まっ・・・ふぶぐっっっ!?」
 次の瞬間、彼女の可憐な顔と、紅い唇と、その口内をまとめて汚すように、一気に上り詰めた妖獣の精がぶちまけられた。

『どうした!さっさと綺麗にしろ、クズが!・・・・・・そうだな。これを全て綺麗にしたら・・・』

−綺麗にしたら、そろそろ殺すか−

 この玩具にもそろそろ飽きてきたのか、目の前で慌てて顔や、妖獣の怒張にはね飛んだ精を舐め取ろうとしている少女戦士を
前に、にんまりと妖獣が笑みを浮かべる・・・。



−−−綺麗にしてやる。貴様ごとな。


 熱くはやっていた妖獣の心を、一瞬で凍りつかせるほどの冷徹で無慈悲な声が響き渡ったのは、その瞬間だった。




*********************************************************


 頭の中が茹で上がってしまったような、現実と夢との間のような。
 
 私には、目の前で何が起きているのか、はっきりと理解出来ていなかった。今まで嵌っていた地獄の泥沼から
引きずり出されたことさえ、実感になっていなかったぐらいだから。
 
 目の前で青い閃光が疾り、紅にたなびく残像が2度、3度と視界を行き交うたびに、今の今まで私を支配していたモノが
晴れていくのだけは辛うじて、感じ取ることが出来た。

 あたしは・・・私は一体何なんだろう。何をしていたんだろう。今から何をすれば良いんだろう。つい今さっきまで、
意識に上ることさえなく、私には次の未来が用意されていた。今ではそれすら茫洋として思い出せないけれど。
今は。
私は。
一体何?

「・・・・・・随分ボロボロになってるな」

 突然、伏せていた頭の真上で声がした。冷徹な声。さっき聞いたばかりの声。
上げた顔の真正面に、その娘がいた。

 炎のように紅い眼と、深海よりも濃く暗い髪を宿した、死神のような冷たい影を背負った娘が。

 −私はこの娘を知っている。

 思い出せないのに。自分が誰か、彼女が誰なのか意識が追い付かないのに、唐突にそれだけを「理解」出来た。

「・・・もう、壊れてるの?だったら・・・・・・。・・・ッ、楽にしてあげる」

 不意に、目の前の子が寂しそうな表情を見せた。つらそうな、寂しそうな。・・・あれ?この娘、こんな表情を
する娘だったっけ?
 ・・・思い出せない。あたし・・・あたしはだぁれ・・・?


 と。唐突に、目の前から少女の身体が消えた。


−−−私は。
 思い出すより先に、身体と心が告げていた。
−−−『この状況』を知っているッ!!

 視線を上げる。ハッとした。太陽の光点の中に、何も存在しない「そこ」に彼女がいることを身体が覚えている。

「あの時」みたいに茫然自失してやられるような真似はしないんだからッ!!




「フィニッシュ・・・ッ!」
「甘いッ!!!!!」




 私の身体は反射的に飛び退り、そのまま転がるように彼女の・・・『アイ』からの魔法射線を外していた。
アイ。
そうだ。
私は。

「・・・アイ?」
「!・・・正気、戻った?」


 目の前にいたのは死神でも、他の誰でもない。
 私の同期、そして私と同じ・・・あやかしを狩る者。『魔法戦士』のアイだった。たった今夢から覚めたような心持ちで
彼女の顔を見つめると、彼女も私の両目の奥の、意識の底を覗き込もうとしているような、射るような視線を送ってくる。
蕩けていた意識が、急速に戻って来た。同時に、忘れていた身体中の変調も。
「あ・・私っ・・・んぐっ!」
「『喰われ』てはいないみたいだね。邪魔だからそっちに居て」
 随分な言い様だ。が、ぞんざいな分、ほっとしているのが声音で判る。・・・?この娘、他人の生き死にに気を取られる
ような子じゃなかったと思うんだけど・・・。
「まだアイツにケリつけた訳じゃない。取りこまれる前にさっさと逃げて!」
 アイの言葉に、ハッとして視線を前方に送る。
 数本の触手に加えて本体にも数条の傷跡をつけられ、瓦礫に叩きこまれていた妖獣が、ようやく起きあがってきていた。
「チッ・・・図体だけは頑丈か」
 舌打ちしてロッドを構えなおすアイ。

・・・彼女の体術のキレは、私も良く知っている。その体重を乗せて加速した斬撃を受けた割には、奴の傷跡はいささか浅い。
・・・まあ、やられっぱなしは私だって性に合わない。

「・・・手、貸すわ」
「足手まといだ」
 そう言いながらもちらとこっちを見やると、彼女は手早く回復魔法の印を唱えてくれた。陵辱されてる間に曲がりなりにも
両腕は自然回復しつつあったが、一応感謝しておく。

「・・・取られたの?」
 私の手元に得物が無いのを目線で示して、アイが聞いてくる。うるさい、私は魔法の方が得手なのよ、貴女と違って。

 奴が立ちあがり、向き直ったのが合図になった。同時に突っ込むように見せながら、アイが跳躍する。奴の視線が一瞬逸れた
瞬間に、ありったけの魔力を右手に込めて叩きこんだ。

「照光ォォォ!!」

 自分の眼も眩むような光が生まれ、無数の矢になって襲いかかる。ほとんど同時にアイの手も魔法を振った。

「光疾ッ!」

 2つの光の魔法が妖獣に命中したのは、ほぼ同時だったろう。光に焼かれ、もうもうと全身から煙を上げる妖獣に、アイが
そのまま突っ込む。一方、魔法を打ち終えた私は・・・

 同じように、駆け寄っていた。

 あんなことが無ければ。私の試験の相手が彼女で無かったなら。計算通りの結果が出たところで攻撃の手を止めていただろう。
けれど。アイの見ている前で、そんな油断は私の誇りと、何より身体が許さなかった。
アイに敗れた、あの試験の後に続いた2年間。敗者の烙印を押され、不要者との境界線をさまよった2年間、徹底的に修練を
叩きこまれた、この身体が。

「アウッ!」

 後数歩のところで、煙の中に悲鳴が聞こえた。・・・アイの声だ、と察した瞬間には、既に煙から弾き出されるように、彼女の
痩躯が転がり出ていた。肩の怪我・・・同じ真似をッ!
「動奮ッ!」
 間髪入れず、視認せぬままに煙そのものへ叩きこむように魔法を放つ。グエッ、と悲鳴が上がったのを目安に、私の横を
跳ね起きたアイが駆け抜けた。
「死ねェッ!!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねェェェェ!!!!」
 ドス、ザク、ドシュッ。そんな斬撃音が秒間に数回響き、悲鳴と共に腐ったような茶色の体液がこっちまで飛沫を上げる。
何が起きてるかはもう、確認するまでも無かった。


********************************************************

 粉微塵に切り刻まれ、雷に打たれて焼け落ちていく妖獣を眺めながら、私はアイに聞いておきたいことがあった。
「・・・どうしてこんなところに?」

 
 魔法戦士、アイ。その名は、かつてない彼女の経歴と共に、良くも悪くもいささか私達の間では知られている。
戦士の選抜試験で、例を見ない「補欠合格」をしたこと。
たった一人で、エリート戦士10人という最大規模の派遣でも葬れなかった巨大ゆらぎを始末したこと。もっとも、これは
すぐに、彼女の師匠・メグ姉様が協力したことが判ったけれど。
その後始末の件で評議会の命令を無視し、『あっちの世界』へ『こっちの世界のモノ』を置き去りにしたまま戻ったこと。

・・・今回の事件の元凶、『シン』が彼女の師匠、メグ姉様と深い仲にあったこと。そのせいで、アイも評議会からは
良しにつけ、悪しきにつけ、マークされている状態だったこと。

 言って見れば、触らぬに越したことの無い相手だった。

 でも、個人的にはもう一つ彼女の経歴を付け加えたい。・・・彼女が「補欠合格」した試験の、その時の相手がこの私だ。
色々と気持ちの上で複雑なものはあるけど、私にとっては「触らぬ神」には出来ない相手だった。
それに今一番重大なことは、この規格外の魔法戦士は確か今、上の指示でほとんど軟禁状態になってたはずだ。

「・・・人間界・・・『あっちの世界』へ、シンが逃げたんでしょ?・・・こいつらを抱えたまま」
「まあ、当然妖獣も連れて行ってるでしょうね。だから門の警備が強化されたんじゃない」
 −そう。『あちら』から『こちら』へ、妖獣の侵入を防ぐために。
 
 と、彼女は少し逡巡した後、僅かに顔を赤らめて口を開いた。

「・・・守りたい人が、守らなきゃいけない人がいるから。・・・あっちの・・・人間の、世界に」


「・・・は?」

 私はきっと、相当間の抜けた声を上げていたはずだ。
 答そのものも、「彼女の発言」であることも、共に想像を絶していたから。

「だから、行かなきゃ」
「・・・ど・・・どこの世界に、自分の家の火事を放っといて対岸の火事消しに行く馬鹿がいるのよっ!!貴女、自分が
何言ってるか判ってるの!?」
 思わず声を荒げてしまった。この惨状を見て。言いたくは無いが、彼女が全く無関係とも言いきれない輩が起こした、この
惨状を放置して。評議会の命令を無視してまで守らなきゃならない何があるというのか。

 が。アイに無言で真っ直ぐ見つめかえされて、却って居たたまれない気持ちにされたのは、私の方だった。

 野暮なことを言った、と後悔している自分と。
 この「規格外」に、やらせたいようにしてみようか、という、博打を打つような逸る何かを覚える自分とが居る。
それに・・・

「・・・ま。いまさら評議会もこうも無いけれど、ね。この有様じゃ・・・」
「・・・!」
 首を竦めて、両手の平を上に挙げた。
「・・・私は貴女に会わなかった。知らない見てない聞いてない。・・・他に何か?」
「・・・ありがとう」
「貴女が、人にまともに礼を返せるほど社交的になったとは、知らなかった」

 それに。このアイを、ここまで変えたその「守りたい人」とやらとの関係に、興味を持ち始めている自分がいたから。

「さっさと門の向こうに行っちゃいなさい。・・・もう、戻って来るな」

 それならそれも良い。たかが魔法戦士1人消えたからって、この世界が変わる訳じゃない。『あっちの世界』に希望を
残して滅びていくのも悪くない。

 が、アイは今一度、私に振り返った。
「・・・戻ってくる」
「!?」
「・・・3つ、約束する。向こうからこっちへ、一匹の妖獣も入れさせない。シンは絶対、生きてこちらへ帰さない。
 ・・・秋俊を守りきったら、戻ってくる」

 −自然と固有名詞が出て来たことにアイは気付いてない。・・・そうか、秋俊というのか。・・・まさか、下の名を呼び捨てに
する関係だったとは。

「ふ・・・あはっ・・はははは・・・!」
 思わず笑いがこぼれた。アイはきょとんとしている。貴女には判らない。いや、知られたくない。

 戻ってくる、か。もう一度心の中で反芻する。・・・どうやら、私が必死に追いつこうとするたび、彼女は更に先へ行って
しまうらしい。・・・いつでも死ねる覚悟で門を守りぬくつもりだったのに。そこまで言われたら、死ねないじゃない。
随分高望みをしてくれる、困った同期生だ。

「・・・3つ約束するわ。こっちからそっちへ、一匹の妖獣も通さない。門は守りぬく。・・・貴女が戻ってくるまで、
 生き抜いて見せる。・・・了解?」
「・・・うん」
「・・・全部終わって、深い仲になったら、私にも紹介しなさいよ、『秋俊』クン」
「うん。・・・・・・え?」
「もうお終い。さ、さっさと行って行って!」
「・・・・・・判った」

 それきり、もう私は後ろを見なかった。私の後ろにある門には、誰も通さない。
後ろからやってくる敵は一匹もいない。それを、信じて。

「・・・じゃあ、また」

「ここで」

 
 今朝方まで私の胸に開いていた隙間は、今はもう無い。


 例え、この「狩り」が永劫に続こうと。


 私の誇りにかけて。


 再びあの娘に追い付くまで。


 私は、死なない。


 (fin)