出渕 裕[YU IZUBUCHI]
 「0080」ではデザインワークスという形で参加していらっしゃいますが、具体的にはどういうお仕事を?
 今回の仕事は、ちょっと今までとシフトが違ってまして……。主要スタッフ――デザイナーや絵描きも含めてまずブレーンストーミングをやったんです。
 前もってプロデューサーの内田さんが「これまで富野さんとつき合ってきて作ってきたのとは違うコロニーを舞台としたガンダム……」そういう方向性を提供して、それをもとに各人がある程度、勝手にプロットを作ったんです。
 そこで監督の高山さんから「子供を主人公にしたガンダムが作りたい。それは今までみたいに子供が戦争の中に巻き込まれていって、自分がモビルスーツに乗るっていうのじゃなく、自分の目を通してやりたい」という意見が出て決まったわけです。
 これが上手くいったんですね。意外と……。
 僕も、ビジュアル敵なアイデアとか、一番最初のところで話が出来たし、こうしてみたいと考えていたことが出来たんで面白かったですね。そう言った意味でこのブレーンストーミングは良かったと思います。
 今回、僕はデザインワークスという名前で入ってますけど、単にメカニックデザインやってるっていうだけじゃなく、そう言う立ち上がりの部分からつき合えたしね。

 メカニックデザイン意外の部分にも深く関わったと言うことで、やはりこの作品に対する思い入れは違ってきますか?
 いろいろとやらせてもらいましたから。ラストシーンはこうやったらいいんじゃないですかって山賀君がアイデア出したら、だったらもう少しこうやってふくらまそうとか、3話ではコロニーの外に出したい――とかね。
 普通、今までのデザイナーとして徹したセクションだとそういうのって少ないでしょう。「こういうのがあるからこう描いて欲しい」とか。仕事としてこなして行かざるを得ないポジションなんで辛い部分もあったんです。その辺を今回は内田さんにすごく理解してもらえたので、非常に手応えはありましたね。

 高山文彦監督には、話し合いの中でどんな印象を持たれましたか?
 高山さんは面白い人でね。ものの作り方とか非常に面白い感覚を持ってて刺激になりましたね。
 例えば見せ方とか、ドラマの切り口とか、キャラクターの内面を描写していくような演出方法。……そうとう映画的ですよね。サンライズの演出家にはあまりいないタイプだし。
 ものの見せ方にしても、サンライズのロボットアニメやってると、どうしてもサンライズの中でのロボットアニメの文法がある。
 それは逆に言うと今までサンライズのロボット物やってきた知識、蓄積なんですけどね。
 高山さんはそういうものにとらわれてない。巨大なものをどう見せたら大きく見えるか、銃を持ってる姿をどうしたら凶々しく見せられるか、とか。原点から考えて演出していける人ですね。それだけ色に染まってないっていうのかな。
 そういう風にサンライズの文法にとらわれない形でやっていけたから、結果的に映像に新鮮さが出てきたんだと思います。
 例えばコトニーというのを見せる時にモビルスーツがどういうポジションに立ったら面白いか――つまりあそこには光の川……ガラス張りのところに橋がかかっている。ああいうところがいいとか、コロニーの中の町並みがありますけど、モビルスーツが入ってくることによって町の広さや大きさが表現出来るんじゃないか、とか。
 あと、コロニーにも夜があるわけですよね。夜間の戦いで、コロニーの中に戦艦が入ってくるんですよ。コロニーの回転している中心は無重力なんです。だからそこにすうっと入ってきて、理屈で言えば下に、降下するっていう感覚なんでしょうけれど、戦闘が起こっているのは天井なんです。
 そういう画面で、天井の方の暗い夜の面に灯りがチラチラして。甲板からモビルスーツが上に向かって発信して行くんです。
 あと、降下していく最中、ケンプファーに落とされるんですけど、上空写真みたいに撮って、夜景の中にガンキャノンが落ちるんです。で、落ちた瞬間、その区画の電気が切れて、パッと光りが消えるような演出とか……。
 これはコロニー云々と言うよりも、街っていうものを上手く表現していると思います。
 「0080」はコロニーの中の戦争話なんで、モビルスーツが出番少ないんです。だからドラマの部分を支えるバックボーンとして、いい脇役でいて欲しい。
 世界観を支える味付けの役割を果たさなければならないポジションにいるんです、大きな意味で。
 高山さんは、特にモビルスーツの出番が少ないですから、ただやたら出てきてドンパチ打ち合ってワーワーやるって言うよりも、その回で効果的なポジションにモビルスーツを立たせるって言う事だと強調していました。

 モビルスーツのデザインの苦労談などはありますか?
 最初の大河原さんのやった一年戦争の時代背景をもとにしてるので、それをリファインするというか、アレンジすると言う風に自分では思っています。メカデザインってエリアだけで言うと、アレンジャーだなという気分でやっていたんです。
 今回の「0080」に関して難しかったのは、例えば音楽で大好きな曲があって、それをアレンジャーがアレンジしたら全然違うものになっちゃってる、あたしの好きだったこの辺の気分がなくなっちゃってる、とならないこと。それは今回の仕事の場合、一番やっちゃいけないことだったんです。自分のものにしちゃうことはできないですからね。
 だから広範囲な意味でファンの持ってる共通意識にある魅力をおさえてアレンジしていくという方法を取ったんです。
 その中に自分の趣味をスッスッと隠していって、それが味付けになったらいいなと思ってやってました。
 モビルスーツで一番難しかったのはとにかくザクでしたね。完成されてるんですよ、本当に。
 ただ、今のニーズに答えるために他をディティールアップした時に、完成されたデザインとは言っても周りと協調性のないものになってしまえば直さざるを得ない訳ですよね。特に今、ザクをそのままの形で動かしたら物足りなくなっちゃう部分があるんです。
 多分ザクにはみんな愛着があるし、愛着持ってる部分が少しずつズレてるんでポイント押さえるのが難しかったですね。
 やはり僕がモビルスーツを論じるのって、何かおこがましい気もします。立ち上げたのは富野さんであり、安彦さんであり、大河原さんである訳だから。
 僕はそうして作られた部分で自分が感じた魅力っていうのを自分なりに消化して、もう一回視聴者の方に送り出してるって気持ちなんです。自分でここはこういうもんですって言い方は出来ないんですよね。
 だから、モビルスーツに関しては最初のガンダムを見た時の自分の感想になっちゃうんですよ。「0080」とか「逆襲のシャア」の自分のデザインから派生してきたモビルスーツ観じゃなくって、多分最初に見た時のインパクトだと思うんです。

 最初のガンダムを見た時の印象を話していただけますか?
 ガンダムのTV観てた時、ビックリしたって言うのは、宇宙服だと思ってたんですよ。ザクが3機入ってきた時。
 あの時の僕らの感覚では、パワードスーツって言うのがありましたから。ハインラインの「宇宙の戦士」のイメージで、パワードスーツを元にしたロボット物って聞いていたんです。宇宙服みたいのだあと思っていて、初めて地面に降り立った時、サイズが分かった時の驚き。え、こんなにデカイのって。逆に宇宙空間では大きさが分からない。あの辺、演出で意図していたのかどうかは別としても感心しましたね。
 あと、巨大な人間が着てる強化服みたいな形で動いてくれてたって所があるんですよ。巨大な歩兵が宇宙を駆る、みたいな。
 最初の宇宙空間をウーンと来た時、慣性航法で来たと思うんですよ。今の主流で言うバーニアふかして高機動作画でビュンビュン動いてるんじゃなくて、スースーと引くみたいな形でね。その雰囲気がすごく良かったんだと思います。
 最初にそう演出しておきながら、シャアが出てきた時にはスッスッと横によけたりするでしょ。だからシャアが強いように感じるわけなんですよね。
 僕はモビルスーツは早さじゃないと思うんです。高機動作画じゃないと思う。そう言うハデハデな部分じゃなくて、もうちょっと落ち着いた形の、重さとか大きさとか感じさせるような、巨大な兵士って言う印象がすごく強かったですね。
 これから僕がまたガンダムに関わるとしたら、そういう気分で作っていけたらいいなと思ってます。他のロボットアニメがハデハデできてますからね。いい意味で地味でやっていきたいです。