ネットワークRPG“クレギオン”シナリオ#5
『バビロンの紋章』
第8回プライベートリアクションKA2
★風の憧景
2/2
Act.2
リサとキャネリアが繋がれている牢の監視を申し出たのはステラ・ビュフナーだった。どんな意図で2人がマルコ・バルディアの処にいたのだとしても、彼らがここを脱出するつもりであるならば、躊躇わずに切る心積もりで牢に向かった。
リサ姉は恋に狂ってマルコの元に走ったという……夫のいる自分には、人を愛するという気持ちは良く解る……だから、2人に危害を加えようという者が牢を訪れた場合にも、もちろんその歓迎されざる訪問者を退ける考えだった。彼らの処分は、出来る限り公平に行うべきなのだから……リサ姉にマルコが言った言葉の事を考えると、処分も慎重にならざるを得まい。
神ならざる身で裁くだろう。その言葉は、私たちを試しているのだと考える事も出来る。試す――? そうして、一体どうするというのか? ステラは心中に浮かんだ考えに馬鹿馬鹿しさを覚え、1人苦笑した。
牢の中に目をやると、リサがじっと跪いている。その姿はまるで祈っているかのようだ。何を考えているのやら……ステラはふと溜め息をついた。
敵地を目前にして、内輪もめをしている場合でもないでしょうに……。これからの事を考えると、不安を覚えないでもない。
近づく足音に、ステラは鋭い視線をそちらに向けた。見ると、アイク・アークライトことエースの姿がそこにある。
「リサ姉に会わせて貰ってもいいか?」
ステラは肩を竦めた。
「脱出の手引きをしないのであればね」
「心配せずとも、わたしに脱走の意志はないぞ」
立ち上がったリサが2人を見据えていた。
「リサ姉。……馬鹿な事をしたな」
エースの言葉に、リサは苦笑を見せた。エースの言葉に答えるでもなく、リサは彼をじっと見つめた。
「カルロス達は、どうしている?」
リサの言葉に、エースは事実を端的に語った。長老が死んだこと。次の長にカルロスが選ばれた事。かなりの数の死者が出た事。大公の健康がすぐれない事、それでもなお2つの民が争っている事、合流した騎士達や難民達がデモンバスターズに良い感情を抱いていない事。エルメス・ダレス進攻に際して難民達をどうするのか決まっていない事――バルミ海兵隊を撤退させる事実上の決定打となった宇宙海賊が生体宇宙船に難民達を乗せる事も吝かではない、という意志を持っているという事。その他にも、諸々の事を語った。
「成程な。――できる事なら、難民達はその生体宇宙船に乗せれる様に図れないか? 恐らくそこが最も安全な場所である筈だ。宇宙船自体が難民を食べる危険性があるにしても、だ。責任は私が取る。出来る限りそうさせろ」
「リサ姉。本心を聞かせてくれよ」
「本心?」
エースの言葉に、リサは冷ややかに返した。
「そうやって、肝心な事はオレ達に何ひとつ言わないつもりなのか? 皆を放り出してまで敵の城に留まったリサ姉の本心だよ。鬼幻城にいるというあの通信が、アンドレアの居場所を教える為のものだという位、オレ達だってお見通しなんだぜ。本気でオレ達を襲うつもりなんて、なかったんだろう?」
リサは無言のままエースを見据えた。エースも真っすぐリサを見返す。そのまま暫く睨み合ったあと、リサは不意に澄んだ笑い声をあげた。
「確かに、お前はわたしが見込んだ通りの男だよ。大したものさ――そこまで、このわたしを信じるのか?」
「ああ、信じる。人々を護る、そう言ったんだからな」
注記:この話は、実はここまでしか書いていません。後から書き足しても良いのでしょうが、たぶん、このときに書きたかった話とは別のものになってしまうと思い、新たに書きたしません。
その時でないと描けないものというのは、確かに存在するものなので。