ネットワークRPG“クレギオン”シナリオ#5
『バビロンの紋章』/灼熱の夜明け編

第12回リアクションXA1

★敵は海賊

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Act.6 コアシリンダー・システム
 プラム・グレーは珍しく緊張した面持ちを見せて目前の扉を眺める。
「プラムちゃん、頑張ってね」
 プラムにせがまれて付添いとして同行したセフィール・ライトがプラムをのぞき込む。
「う、うん、大丈夫」
2〜3度深呼吸して、プラムは意を決した用にアトラス・キャヴァリアー研究部の扉を叩いた。
 キャヴァリアーの新システム運用に伴って、プラムの機体〈ジーズ〉を夫のアッシュ・グレーの駆る〈アルカード〉と合体システムを利用してリンクさせ、一体のキャヴァリアーとして運用する事となったのだ。その為、プラムはグリーン中隊からアッシュの所属するブルー中隊へ異動となった。
 プラムを出迎えたのは、技術顧問のミューン・ヘリシアと、マサコ・ヤマバ、ルナ・ケイオスの――アトラス三女傑と陰で呼ばれる――3人の博士だった。
 合体システムで運用すると言っても、プラムはアッシュとの子供を胎内に抱えている。漸く安定期に入ったとは言え、本来なら軍務に就かせるなどもってのほかなのだ。しかし、慢性的な人員の不足と――研究部からの申し出によって、プラムのキャヴァリアー運用はそのまま継続する事となったのである。ただし、プラムは直接自身がキャヴァリアーに搭乗する訳ではない。合体システムの運用に、研究部が先頃ある付属システムを開発したので、それを使ってみようという事になったのだ。〈アルカード〉と〈ジーズ〉の合体キャヴァリアー――正式名称は未定。プラムが〈超合体キャヴァリアー・キィィング・オブ・ハートラヴラヴ 1号、2号改〉がいい!! と言ったところ、それを聞いた三博士に秒刹で却下されたため、未定なのだが――は、主パイロットのアッシュが搭乗する機体は通常通り運用される。しかし、副パイロットのプラムがキャヴァリアーに搭乗する必要はない。〈ジーズ〉のコクピット部にはパイロットの代わりに巨大な“ブラックボックス”である『コアシリンダー』を組み込む事により、パイロットはブリッジに設置されたオペレーションシートから、まるで自分自身が乗っているかのように機体を遠隔操作できるのである。その運用率はパイロット搭乗時と同程度に出来る、と研究部では自信満々なのだが、まだその運用率は完璧とは言い難い。合体していない時なら、パイロットが搭乗しているのと全く同じ様に動けるのだが、合体時には75%の運用率になってしまう。だが、キャヴァリアーパイロットの数が絶対的に不足している今、このシステムによってパイロットの任務中のストレス過負を避け、また戦闘においても最悪機体を失うだけでパイロットの生命は確実に保証される。完全実現の期待されるシステムなのだ。
「じゃあ、少し様子を見てみましょうか?」
 博士達から一通り概要を説明してもらったプラムは、にっこり笑って告げたヘリシア博士の勧めるままに、実験用としてここに配置されているゆったりとした椅子状のオペレーションシートに腰掛けた。椅子の下部から、幾つもコードが繋がったゴーグル状のもの、サークレット状のもの、他にもチョーカーだの何だのと、半分寝転ぶように座るシートに横になったプラムの頭部のみならず四肢にまで色々と計器へと連なったコードが着けられる。
「ごめんねぇ☆ シリンダーとの同調調和率を計るから★ あ、気を楽にしててい〜んだよ★ ほらほら、何も怖くないよ〜☆」
 お気楽に告げるのは子供の様な外見をした、ケイオス博士である。150cmの、小さな身長程に延ばした黒髪が、尻尾の様にくるくると彼女の動きに合わせて踊っている。その隣では、3人のなかで一番背の高いヤマバ博士が、計器を厳しい面持ちで見つめながら、研究員達に休む間も与えず次々と指示を与えている。
「キャヴァリアーのパルスシステムと基礎は同じなのよ。少しその技術を応用しているの」
 ヘリシア博士の声を聞きながら、プラムは、ふっと自身がキャヴァリアーのコクピットに座っているかの様な感覚に陥った。ヘリシア博士の声が続く。
「プラム、指示するようにキャヴァリアーを動かしてみてくれる?」
 書類片手に次々と指示を出す彼女の言葉通りにモニターに示された〈ジーズ〉の機体が動きを見せる。
「70%の同調率かしらね」
 つぶやくヘリシア博士に、ヤマバ博士は短く告げる。
「論理的には95%出る筈。チェックして」
 そのまま、実験は1時間程続いたが、その間、何かがプラムの心中に引っ掛かっていた。自分が搭乗した時と明らかに違う“感覚”が、コクピット内――といっても疑似的なものでしかないが――に在る気がする。自分以外の“誰か”が乗っているような気が。それも、よく知っているような気もするんだけれど――。プラムは意識を研ぎ澄まし、その“感覚”を掴もうとするのだが掴めず、またそれが誰なのかも判らない。会っている? のに? 思い出す事が出来ない。
 暫くの間、プラムはその事で頭が一杯になっていた。