ネットワークRPG“クレギオン”シナリオ#5
『バビロンの紋章』/灼熱の夜明け編

第12回追加リアクションXA1

★アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

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Act.1 『パンドラの箱』
 グリーン中隊トマシアン・エレザール中尉は目前にそびえ立つ小柄なキャヴァリアーを感慨深げに眺めた。彼の傍では、合衆国の誇るメカニック達が、自国のものとは大きく異なる形状を持つ異国のキャヴァリアーを、興味深げに眺めている。ある者は、己の好奇心を押さえられないのか、その赤い機体に近づいて、愛しげに装甲を撫で、溜息を吐いたりしている。
 このキャヴァリアーは、アダンのものである。先日、この戦艦アトラスを無謀にも襲撃した宇宙海賊の所持していた物だ。折り悪くアトラスの擁護する民間船の1隻を彼らに奪われてしまったが、その代わりにこちらはこのキャヴァリアーとそのパイロット、リサ・オルラヌスを手に入れた。(コクピットの中に行方不明のジン・サカキの姿を見つけた時はさすがに驚いたが)
 トマシアンはキャヴァリアーのコクピットを開き、シートに腰掛けた。コンソールの上に置いてある写真立てに一瞬だけ目を向けるが、それなど全く意に介さずに、ギャヴァリアーの中枢、コンピュータに『直接』接触する。
 トマシアンは、その中にある膨大なデータに戸惑いを覚えた。何一つ解析されていない。収集しただけのもの。キャヴァリアーの外界のデータを収集したものだということは判ったが、何故そのようなものを後生大事にしているのか掴みかねた。ただ、気になったのはその収集時期だ。これらのデータは殆どが『天覇帝国の乱』の終末期に取られたものである。当時彼女は、Dスペース内部、しかもその中枢のエルメス・ダレス付近にいたはずだ。
 だとするならば、このデータは……。
 トマシアンはしばし考え込む。
 これは、恐らくDスペースのデータなのだろう。どういう類の物なのかは解析してみないと判らない。しかし、この中に蓄積されているデータが莫大な量にのぼる事を考えると、時間はかかるだろうが、これを全て解析すれば、当時、謎とされていたDスペースの構造、融合素の特性、そして融合者の性質などかかなり明らかにされるはずである。この貴重なデータを埋もれさせておくのは惜しかった。ここには、宇宙最高のコンピュータがある。世界中で何処よりもこのデータを完全解析できる場所とも言えるのだ。ここでこのデータと巡り逢えた事は、ある意味幸運だといえるのかも知れなかった。
 しかし、解析に当たっては、所有者の承諾が必要だ。たとえ拿捕した捕虜のものとはいえ、この『知的財産』の所有権はリサIルラヌスにある。そして、このデータを解析するとして、その推進、管理、また解析後のデータの所有権など、話し合うことは沢山ある。つまりこれは民間船返却の取引材料になる……いや、彼女にその気があるのなら、合衆国の一員として受け入れるのが一番いいだろう。データの解析にも、当事者の諸々の意見を聞く必要がある。データの管理も、部外者の場合よりは国民の方が何かと融通が効く。特殊な構造のキャヴァリアーが1機合衆国の手の届く範囲に在るということでもあり、また、優秀なパイロットも1人増えることになるかもしれない。その方が……合衆国の国籍を取得し、幾つかの試験を受けて軍籍を取得する方が、彼女の今までの暮らしから考えても、決して『悪い話』ではないはずだ。
 トマシアンは意を決すると、リサを監禁している軍病院へと向かった。