ネットワークRPG“クレギオン”シナリオ#5
『バビロンの紋章』

第5回プライベートリアクションXA1

★Ancient Fable

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 植民歴4233年2月末。宇宙戦艦アトラスは、民間船団を伴ってオーキス太陽系へとたどり着いていた。民間船団の受け入れを拒絶するオーキス太陽系は、その時、アトラスを追って来た敵の襲撃を受けつつあったのだ。

Act.1 天駆ける双頭龍

 オーキス太陽系第3番惑星、この太陽系内唯一の可住惑星であるエルドは大小13のドーム都市に住民達が暮らしている。敵は容赦なくそれらを襲撃した。敵を追跡に出たアトラスのブルー、スカーレット両中隊は荒言を交わしつつもエルドへと急ぐ。
 エルドの裏に廻りこんだブルー中隊の目に入ったのは、ドームを襲っている10頭程の龍だった。
「なんなのよッ。アレッ!?」
 予想だにしなかった敵の姿に、メリル・リースは困惑した叫びを漏らした。緑色のフィールドに似た障壁らしき物をその身に纏わらせながら、余裕なのか、どこか悠々とドームを襲うその姿はどこか幻想じみてもいた。だが愛機“シルフィード”の主に伝える各種の警告が、それを現実のものであると訴えていた。
 モニターに大映しにされる敵の姿は、その殆どが2つ首のものだった。体長は大凡10m程度だろうか? メリルはその一角に、その存在を誇示するかのように3つの首を巡らせる真珠色の龍を見つけた。隊長機、マクシミリアン・グレンドルフ少佐の駆る“白き乙女”が、その白い姿を急速に接近させていた。
 そうしている内にも、ドームからは次々と火の手が上がって行く。
 “白き乙女”の進攻を遮る様に、双頭龍が行く手を阻む。片方の口から、紅蓮の炎を吐き出しながら。
(オーキスの滅亡は、お前達にこそ原因があるのだ。全ては、お前達クレギオンの招いた結果なのだよ)
 嘲笑とともに伝えられる敵の思念。その、どこか絖めったかの様な『異質』な気配に、セフィール・ライトは背筋にぞっとするものを感じた。開きっぱなしにされている通信回線がマクシミリアンの言葉を伝える。
{この状況を見て、俺達に有罪を投じる陪審員がいたら連れて来て欲しいものだ。やめとけよ。仲間に引き入れようっても、その手は通じないぜ}
(ふんっ。そういうのを負け犬の遠吠えというのだッ)
 敵の言葉に、思わずアッシュ・グレーは唇を噛む。確かに、このオーキス太陽系に敵を連れ込んで来てしまったのは自分達のアトラスなのかもしれない。だが、彼らがここを焦土に変えようとしている事は、自分達に責任が降ってくる事か? 襲っているお前達には何の非も無い事か? 彼らの主張に百歩譲って『クレギオン』とやらが――どうやら自分達の事らしいが――がこの世に存在する事が彼らが許せないからと言って、この星を彼らが襲う事は、何の正当化も適わない事ではないか? 自分達が気に入らないからって言って、それを他人のせいにするんじゃねぇよ、てめぇら。それも、何の関係もない所に八つ当たりするとは――ママのミルクの忘れられないちっちゃな幼稚園児かってんだ、全く。
 そんなアッシュの心中を代弁するかの様に、マクシミリアンの言葉が響いた。
{少しばかり人生、うまく行かなかったかったぐらいで、人間をやめたお前らこそ、負け犬じゃねぇのか。えぇ!?化け物ッ}
 マルチパルスの発動によって、ブルー中隊の全ての者の思念がその龍に集中する。合一化された視界が、あらゆる角度でその姿を捉え、ただ1人の手によってトリガーが引かれたように、同じ一瞬に放たれた各機体のビームが、その高熱が、緑色のフィールドを越えて敵の半身を焼いた。
 血まみれの廃墟を飲み込んで崩れつつあるドームを背景に、更に彼らの戦闘は続いた。