ネットワークRPG“クレギオン”シナリオ#5
『バビロンの紋章』
第3回プライベートリアクションXA2
★OPERATION"V"
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Act.2 格納庫にて
グリーン中隊の整備担当(いや、決してそうではないが)ジン・サカキは徹夜ボケした頭で、厳しい追求を見せる青く透明な睡魔と熾烈な争いを演じながら、グリーン中隊各機の調整に勤しんでした。メカが好きで、メカとしてのキャヴァリアーが好きで軍人になったジンはともかく、他の連中は其れほど自機の整備に手間暇をかけない。特に“レヴィ”こと“レヴィアタン”のシンザークと“ガルーダ”のトマシアンの2人は最悪で、キャヴァリアー整備の技術は最低ラインのものしかもっていない。つい、2人の危なっかしい整備にあれこれ口出しをする内に頼られる様になり、ジンは、今やこの2機体の専属メカニックとしての地位を不動のものとしつつある。
近接戦専用のため一種乱暴な使い方になる“レヴィ”の微調整を終えると、ジンは自機“アイゼン”のコクピットに戻った。シートの下から、マルチパルスシステムの資料を取り出し、何度も目を通したそれを更に読み更ける。モニターの傍らにあった包みに無意識のうちに手を伸ばし、がさごそとあけて、一瞥もくれずに中身を口にほうり込む。……うまい。ウィスキーボンボンだな。
「サカキ君。やっぱりまだここにいたのね」
聞き慣れた穏やかな声にジンは顔をあげた。ほのかに香水の香りを漂わせ、ミューン・ヘリシア博士が顔を覗かせている。
「そろそろ、休んだ方がいいわよ」
この科白を聞かされるのも何度目かな、とジンは苦笑する。ヘリシア博士は少しはにかんだ笑みを見せると、そっと、奇麗にラッピングされた包みを取り出した。
「サカキ君には、いつも頑張ってもらっているし……お礼の意味もあるんだけれど……」
言いながら、博士の頬は紅に染まって行く。その様子をみて、初めて今日が2月14日である事に気が付いたジンは、目前の大選択に心密かに慌て始めた。ぎ……義理だよ、多分。そうだって博士も言ってるじゃないか。いや、決してやましい気持ちなど……と、遥か彼方の婚約者に心中で懴悔する。ここで断ったらカドが立つし、円滑な人間関係というものは、だからその、いやその、だから、えっと、ぽ、ぽぽぽ、ぴぴぴぴぴぴ………。
「あ、ありがとうございます……」
ようやくその一言を絞り出して、ジンは引きつった笑いを見せた。博士は安心した様に微笑むと、ジンの膝に包みを乗せる。
「――あら?」
ヘリシア博士はジンの足元に落ちているカードに目を止めた。カードの内容を見てしまったのか、彼女の表情が沈んだ事に気が付いたジンはすかさずそのカードを拾い上げる。
[St.VALENTINE
――宇宙を駆ける、貴方のこれからに幸運を
レーア]
「レーアだって!?」
ジンは、思わず声を荒げた。