ネットワークRPG“クレギオン”シナリオ#5
『バビロンの紋章』
第3回プライベートリアクションXA2
★OPERATION"V"
3/3
Act.3 幸福な(?)人々
休憩室を訪れたアッシュとリノの2人を待ち受けたのは、一様に赤とピンクのストライプの包みを握って浮かれる男達の姿だった。女性陣は呆れたようにそれを眺めつつも、目当ての相手にはちゃっかりチョコレートを渡していたりする。
ここにたどり着くまでに女の子達に声をかけられ、次々とチョコレートを握らされる事となったアッシュとリノの2人は、ここでもチョコレートの嵐に見舞われた。
「きみ達、何してるのよ、一体?」
そう声をかけてきたメリル・リースの手にも小さな包みが握られている。
「そんなにあれば、これ、要らない?」
両手一杯にチョコレートを抱えるアッシュに呆れた視線をむけるメリルに、リノは大きく首を振って、ここぞとばかりに激しく主張した。
「要る要る。勿論さぁ」
部屋の隅の方では、困惑した様子でセフィール・ライトがチョコレートの包みを見つめていた。実は女性とは言え、訳有りで男装をしている自分である。華奢な体格が災いして女性に間違われる事が多くったって、本人は男装をしているのだから、男だと思われる事は意図通りなので嬉しい筈なのだ。でも……チョコレートまで貰ってしまうとなると、それはそれでまた心中は複雑である。
「ふふふふ。いいですねぇ。麗しき時間。この一時」
そう言いながらチョコレートを目前にご機嫌のダークネス・ミラージュの横で、シキ・リーズィクラウツは
「見よ。このラッピングの美しいこと」
と悦に入っている。スピア・ホープウィンドはそんな2人の様子を目にして、ふん、と口を尖らせていた。プラム・リーズンはにこにこと笑いながら、
「えへっ、あんなに喜んでる。お返しが楽しみだねぇ」
と、横に立つデューテことアフロディーテ・バーンシュタインを見上げる。
アッシュは、テーブルの上に戦利品を広げると、ふう、と一息ついて、紅茶を楽しんでいるカイン・レイルドに声をかけた。
「この船に、レーアって女の子、居たか?」
「これの贈り主だろう? さあ……記憶にないな」
「なんだ、皆そろってるんだね。いいもの作って来たよ」
明るい笑顔を見せてシンザーク・アストライアがバスケットを手にして入ってくる。
「あ、くっきぃだ☆」
プラムが嬉しそうに声をあげる。わーい、という様子で駆け寄るとにこにことそれを大皿に分け始めた。
「作り過ぎちゃったからさ、瓶につめてこの部屋においておくから、気が向いた時に皆で食べてね」
シンザークの言葉にプラムはうんうんと頷いている。ぱくん、とひとつ口にほうり込むと、にこっと笑った。
「パンプキンクッキーね☆ おいしいよ。ほらほら、カインさんも食べなよ」
隣のテーブルではリノがチョコレートの数を集計中だった。何度も確かめる様に数え、にまっ、と笑って見せる。
「はーっははは、勝った!! 45対44で、俺の勝ちだぜ!!」
その言葉にアッシュはがーっ、と吠え立てた。
「1個差だと? 納得できないね。もう一度数えて……」
「何回数えても同じだ。ふっ。俺の勝ちだぜ、アッシュ」
そんな2人をカインは呆れた面持ちで見つめている。シンザークはその様子にくすくすと笑い出した。プラムはシンザークの様子に少しほっとする。アトラスに戻って来てからこっち、あまり笑顔を見せなかったからだ。笑えるようになって良かったね、と思いながらもう一つクッキーをぱくり。
珍しく、トマシアン・エレザールが休憩室に姿を見せる。その手に赤とピンクのストライプの包みを見てとったアッシュは、あいつも貰ったのか、とそのままトマシアンに注目する。トマシアンは、2・3度周囲を見回すと真っすぐシンザークの所へ歩み寄る。
「これ、返すからな」
その言葉にアッシュは一瞬唖然となった。何だって?
シンザークは笑顔を崩さず、トマシアンに問いかける。
「よく、僕が贈り主だって判ったね?」
「こういうふざけた事をするのはお前しかいないだろう」
「あははは、こういう遊び心を判ってくれないかな? でも、遠慮せずに食べなよ、チョコレート。ウィスキーボンボンなんだよ。ちよっとした自信作なんだからさ」
「待て。待て待て待てっ!!」
アッシュは2人の間に乱入した。側でこの会話を聞いていたリノも、まっしろー、な瞳で呆然としている。
「もしかして、全員にチョコレートを贈ったとか?」
シンザークは悪戯っぽい笑みを見せた。
「そうだよ。手作りのチョコレートを、皆の部屋に夜中にこっそり忍び込んで、置いて回ったんだ。びっくりした?」
「じ、じゃあ『レーア』って署名は……」
リノはまだショックを隠せぬ様子で尋ねる。
「それはねぇ、僕のエレメンタリースクール時代の渾名」
「……渾名?」
「そう。ア・ダ・ナ。名字のアストライアはアストレーアとも言ってね、それで昔は『レーア』とか『ティア』だとか『ティア・プリシア』って呼ばれてたんだ。……女の子から貰ったって、一瞬思えるでしょ?」
リノは思わず目眩を覚えた。ななな、何だってんだ。何だってんだよ、一体!!
「リノ……さっきの勝負……」
脱力した様に、アッシュ。リノも、力無く頷きながら
「44対43で俺の勝ち、な……」
アッシュはうんうん、とがっくりした様子で頷いている。シンザークはそんな2人の様子にくすくすと笑った。
《FIN》
●プレイヤーより
出演者は全て事後承諾です。許してね。私のキャラはこんなんじゃないやーい!! という方。今回のプラリアはドタバタコメディモードなのでお許しを。罵詈雑言は担当のくまらまでお手紙下さい(おいおい)。
“アトラス”艦内の、宇宙家族も真っ青なアットホームさを感じていただければ幸いです(何だそりゃあ)。こんな所を真面目に攻めて来ているフュージョナーの皆様の心中を思うと心苦しくてなりません(笑)。でも、次回辺りからさすがに急展開でもなって重苦しくなってくるのかな〜。嫌だなー。このままアットホーム路線でいかないかしら、なんて思ってしまうくまらは小心者です。ではでは、次回あたりは真面目なプラリアを……(笑)。
1996年3月