ネットワークRPG“クレギオン”シナリオ#5
『バビロンの紋章』
プライベートリアクションXA1番外編
★
七界の紋章は危機一髪!?
〜キャヴァリアーパイロット
セーラーアトラスG 華麗に参上〜
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Act.2 思考回路はショート寸前?
「ジェノサイド・ストリーム」
いつの間に上ったのか、バックスクリーン上に立つ1人の女。長身の、その身長程もある巨剣を掲げ、呟くように告げた刹那に、一閃の巨大な光の刃がグラウンドを真っ二つに引き裂いたのである。グラウンド上の選手達は突然口を開いた地割れに、さすがに乱闘なんかしている場合ではない。
慌てる選手達にさらに追い打ちをかける様に、ちゃかちゃかちゃちゃーん、と高らかにヒーローアニメ主人公が出たぞ出たぞさぁ敵も味方も皆手を止めて主人公に注目だお約束の台詞で登場するぜ!!的BGMが無責任にも大音響で響き渡る。その音楽に合わせて、剣を持っている女の側にちょこん、と立った小柄な女の子がえっへん、とばかりにポーズを決め、声高らかに宣言するのであった。
「人気絶頂、皆の憧れの的サブローちゃんの大事な頭にボールを当て、あまつさえ乱闘騒ぎをするなんて、許さない!!
(じゃじゃん!!)
愛と人情のっ、セーラー服美乙女パイロット、アトラスグリーンNo.フリージア見参!!」
更に、芝居がかった苦悩の表情を浮かべて、一言。大きな瞳には溢れんばかりの涙。
「もうやめてっ、誰も、悲しませたくないのっ」
ハミエルは、この、誰にもついていけそうにない展開に、ぽかん、と口を開けて間抜け面をさらしていた。額から、たら〜っ、と汗が流れる。2人共、下着の見えそうな超ミニスカートにセーラー服というあたりがおいしすぎ……いやいや、そうではなく、ものすごくあやしい。あやしすぎる。いや、その事よりも何よりも、ハミエルが唖然としたのはその服装よりもそれをまとっている中身であった。ビシッとポーズを決めたままの、ピンクのセーラー服が似合い過ぎる程似合っている15歳位の少女は全然知らないが、その横で
「プ、プラムっ!! 恥ずかしいマネはやめなさいってばっ」
慌てた様に叫んでいる緋い髪の女は、あの、アダンでも悪名高い……。
「てめーは、リサじゃねぇかっ!! 追放されて、死んだはずじゃなかったのかっ!!」
叫んだ瞬間、ハミエルは、しまった、と海よりも深く後悔した。こんな連中と関わりあいになってしまった。口を開く時にはよく考えてからにしなさいと、おばあちゃんにあれほど躾けられてたってのに――。
「げげっ、そう言うお前は、ハミエル・レスター!! どうしてお前がこんな所に!!」
ギクリ、とした表情でハミエルを睨みつけた女は、ハミエルの記憶によれば間違いなくリサ・オルラヌスその人であった。あまりの悪夢に、思わず目眩を覚えるハミエルである。
「本名を言っちゃ駄目だよぉ。博士にもそう言われたじゃな〜い。あたしは、フリージアちゃん。あなたは、アトラスグリーンNo.最凶の戦士ぃローザでしょぉ?んーと、解ったぁ? そこのツンツン頭のおじさん?」
「誰が、おじさんだ!! おめー、いっぺん死んでみるか?」
「ごめんなさーい、お兄さんでした」
少女は、ペコリ、と頭を下げた。
「お、おう。解りゃいいって」
のほほん、とした少女の台詞に、ついハミエルも甘い応対をしてしまう。その横で、額に青筋を立てつつ少女を睨みつけていた女は、半ば自棄ぎみにこう叫んだ。
「そ、そうよっ。リサ・オルラヌスはアダンを裏切った罪で騎士位剥奪の上Dスペースに追放処分になったのよ。だから、こんな所に居る筈ないじゃない。ま、ましてやこんな格好で!! 別人よ、別人!! 赤の他人よ別人なのよ無関係なんだってば、解ったわね!!」
別人にしてはやけに詳しいじゃねえか、というハミエルの冷静かつ穿った突っ込みは、さらに続く彼女の台詞に遮られた。
「だから私は……」
ギリリと漆黒の巨剣を握り締めた左手が、ぶるぶると震えている。
「冥界への案内人、死の天使を騎馬に持つ、アトラスグリーンNo.ローザ推参!! 天の父に成り代わり、汝共の愚かな行為に対する天罰、落とさせていただきます!!(←ばっちり、台本どおりに叫ぶ)」
聞いてるハミエルは、余りの恥ずかしさに思わず砂を吐きそうになった。が、正直な所、言ってる彼女はもっと恥ずかしい。
「と、いう訳でー、そこで乱闘している選手のみなさーん、はやく止めないと怖いお姉さんに皆殺しにされちゃいますよぉ。容赦ありませんよぉ。なんてったって幾つもの商船の乗組員を皆殺しにして積み荷を奪っていた経歴の持ち主なんだよぉ、このローザお姉様は。ねー、お姉様?」
〈フリージア〉がグラウンドの選手団に向かって叫ぶのを〈ローザ〉はひくひくと頬を引きつらせながら睨みつけている。そのまま小声で呟いた。
「フリージアちゃん、どうしてあなたはそう余計な事をペラペラペラペラペラペラと……」
「そ、そんな事よりもぉ〜、あの人達、全然あたし達の言う事なんて聞いてくれないよぉ」
困った顔をして〈フリージア〉が指さしたグラウンドでは、再び乱闘が始まってしまっていた。BSの新監督“デビル”ジークフリードが、このスキにとばかりに手当たり次第にパンチをお見舞いしたからである。再び彼らは観客達を無視して、審判団を巻き込んだ大バトルを展開させていた。
〈ローザ〉は〈フリージア〉をバックスクリーン上から突き落とし、自分もグラウンドに降り立った。
「痛たたたた……」
〈フリージア〉はしたたかぶつけたお尻をさすりさすり、涙を堪える。よいしょっと立ち上がると、ハート形のピンクに輝く宝石がついたロッドを取り出した。
「こうなれば、本命、フリージアちゃんの必殺技をおみまいしちゃうもん!! ピンクシュガー・プラム・アターック!!」
びしっとロッドを構えて、ポーズを決めた。、
……まではよかったのだが、肝心要のロッドの攻撃(?)が発動せず、ロッドは沈黙を守っている。
「あ……あれ? えい、えい、えい」
〈フリージア〉は狼狽した様子で、ロッドをブンブンと振った。しかしロッドが詰まっていよう筈もなく、相変わらず沈黙を守っている。目の前では2人を無視して、選手達が砂煙を撒き散らしながら大乱闘を続けていた。その砂煙の中から、怪しい笑い声が響き渡る。「ふ、ふははは!! DJの好きにはさせん!!アダン・クルセイダーズが最下位になるなど、あってはならない事なのだぁ!!」
見ると、いつの間にか“デビル”ジークフリード監督の姿が消え、代わりに見知らぬ青年が乱闘を扇動しているではないか!!
青年の姿を認めた〈ローザ〉は驚いた様に顔色を変えた。
「お前は、ACファンクラブ会員No.051(001〜050は組織内部で押さえてあるから実質的な会員No.001)のユダ・イスカリオーテ!!」
ばしっ、と指をさされて指摘された男は顔色ひとつ変えることも無く、にやりと笑った。
「毎シーズン優勝を飾るべきなのは我らがアダン・クルセイダーズのみ!! 我々の行く手を阻むものはすべて殲滅してやるのだぁ!!」
そのやり取りを聞きながら、ハミエルは涙が出るほどの大爆笑をどうにか堪えつつ「やめてくれぇ」と頭を抱えていた。ハミエルの必死の願いも空しく、このばかばかしい展開はセーラーアトラスグリーンの2人も加わり、更にばかばかしさ大爆裂どーん、という状況になりつつある。
「成程`CとDJのゲーム差は0.5!! 昼のゲームでACが負けている以上、DJが勝利をおさめると都合が悪いという訳ね!!」
「え〜、ローザお姉様、どうして? フリージアちゃんには全然わからないですぅ!!」
「ここでDJが勝ったらACが最下位に転げ落ちるでしょ。……その位も判らないなんて、あんた、バカ?」
「ええぇ〜ん、どうせあたしはドジでノロマな女の子ですよぉ。ひーん、ローザお姉様がいぢめるよぉ(>_<)」
この時点ですっかりユダは無視されている。それに気づいたユダはスパイクをむんずとつかみ、たりゃっ、とばかりに2人に投げ付けた。
「このオレ様を無視するんじゃねぇ!!」
難無くスパイクをひょいん、と避けた〈ローザ〉はともかく、ぱかーん、という音も高らかにスパイクの一撃が頭に炸裂した〈フリージア〉は、その大きな瞳をたちまち涙で潤ませる。ぺたん、と座り込んでとうとう泣き出した。
「えぇーん、あたしちゃんは何も悪い事してないのに、あのおじさんが苛めるですぅ(T_T)!! 乙女の頭にスパイクを投げるなんてぇ、あんまり……あんまりですぅ(>_<)!! ぴえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!!」
〈フリージア〉の泣き声は音波兵器も真っ青なほどの大音響でコロシアム内を響き渡る。〈ローザ〉は冷酷なる蛇の瞳で歪んだ冷笑を浮かべながら、ユダを睨め付けた。
「アンタ、この娘を泣かせたわねぇ……!?」
〈ローザ〉の迫力に思わずユダは後ずさる。が、真に恐るべき出来事はこれから起こるのであった。