ネットワークRPG“クレギオン”シナリオ#5
『バビロンの紋章』
プライベートリアクションXA1番外編
★
七界の紋章は危機一髪!?
〜キャヴァリアーパイロット
セーラーアトラスG 華麗に参上〜
3/3
Act.3 お約束・お約束ぅ!!
ユダの足元に、投げ付けられたものがある。勢いよく突き刺さったその物体に、ユダは困惑を隠せない。それは、赤と白の横ストライプ、そして青地に白ヌキの星々がギッシリという――天覇帝国の進行により、昨年滅亡した合衆国の国旗ではないか!! ふと顔を上げると、天井からぶら下げられている照明にすっくと立っている人影が見える。
よく目を凝らして眺めたハミエルは、またものけ反ってしまった。その人影、どうやら男らしいのだが、この姿がまた凄かった。
星条旗生地のタキシードに同じく星条旗のシルクハット。マントは表が金ラメらしく、照明をうけてキラキラ光っている。裏に至っては真っ赤っかというあたり、はっきり言ってセンスを疑う凄さである。
「女性とは、愛で、慈しむもの。女性を苛めるなど言語道断、そこに生きる価値はない」
身も軽く飛び降り、その男は〈フリージア〉の傍らに降り立った。にっこり微笑むその顔は赤と青に彩られた仮面で上半分が隠され、よく判らない。〈フリージア〉は上気したようにうっとりと男を見つめると、赤く染まった頬へ恥じらいがちに手をやる。
「来て下さったんですね(^○^) アルカード仮面様(^o^)」
このやり取りに、ユダは呆然としていたが、ハミエルは笑い死にしそうだった。笑い過ぎて、腹の筋がよじれきっている。も、もうこれぐらいで解放してくれ〜、頼むから〜(大爆笑)。
「さあ、今のうちだ、フリージア」
「はいっ」
〈フリージア〉は再びロッドを振りかざす。
「ピンクシュガー・プラム・アタック!!」
叫ぶと同時に、ロッドの宝石からピンクのハート形をしたビームが、ぽこぽこぽこぽこといかにも少女趣味的に発射される。それは真っすぐにユダをとらえ、ぺち、ぺち、ぺち、ぺち、とユダの頬を打った。
「いて、いて、いて、いて」
困惑した様にユダが口を開く所をみると、この必殺技、殺傷能力は皆無に等しいらしい。が、敵を怯ませるには十分であった。
「ジェノサイド・ストリーム」
ユダが怯んでいるスキに〈ローザ〉の技が再びグラウンドを襲った。選手達は悲鳴と共にどがーん、とグラウンドごと空中に吹き飛ばされ、大地に叩きつけられる。流血爆裂大出血で選手達は累々とマグロの様に転がっているが、そこはコメディ、死者は出ないというお約束である。よきかな、よきかな。
だがしかし、敵もさる者うっきっき。BSのユニフォームは技の威力で吹き飛ばされたものの、ユダは傷ひとつなくその場に立っていた。――身にまとうのは、ACファンクラブ会員初年度特典の特製応援はっぴである。
「ふははは、アダン・クルセイダーズは永久に不滅なのだぁ!!」
ユダはふん、と胸をはって宣言した。
しかし、彼の命運もここで尽きる。
Act.4 もう、何がなんだか……
「やけに、手間取っているじゃないか」
「あとは、俺達に任せてもらおうか」
マウンド上で睨み合う彼らに声を掛けた者がいる。バックスクリーン上に背中合わせにすっくと立ったこの2人の青年は、そう告げると、にやり、と笑って見せた。
勿論、2人を見上げたハミエルがまたも目眩を覚えたことは言うまでもない。流石に、ミニスカートははいていないが、2人共セーラールックというあたり、彼らの無言のポリシーが感じられる。1人は目付きの鋭い、細い長身の男。蒼味かかった黒い長髪を邪魔にならないように首の後ろで括っている。もう1人は、いかにも人の良さそうな笑みを浮かべていた。ふわっとした感じの栗色の髪をしている。彼は、もう1人に比べると、いかにも“水兵さん”な雰囲気が似合っていた。
「新たな時代に誘われて、光に満ちた天の神鳥を騎馬に持つアトラスグリーンNo.アイリス、華麗に活躍」
背の高い方がそう名乗ると、もう1人の青年もにっこりと、小首を傾げて微笑んだ。
「同じく、闇に沈む海の魔竜を騎馬に持つ、アトラスグリーンNo.プリムラ、優雅に活躍」
さすがに、これにはユダも空いた口がふさがらない。しかし、ぽかん、と眺めている時間すら、彼らはユダに与えなかった。
2人の自己紹介と同時に〈アルカード仮面〉は〈フリージア〉を抱き上げてバックスクリーンへとジャンプする。〈ローザ〉も無言でそれに続いた。〈プリムラ〉の言葉が終わる頃には、グラウンドには地に転がる選手達と、仁王立ちになっているユダのみが残されている。いつの間にかアーチェリー弓を手にしていた〈アイリス〉が弦を引き絞り、光の矢を放った。
「ワールド・シャイニング!!」
一瞬、世界が白く輝いて、核爆発にも似た轟きがコロシアム内を包みこむ。なんだナンダとハミエルが目を白黒させているうちに、三叉槍を構えた〈プリムラ〉が間髪いれずに第2波を放った。
「ダーク・サブリミナル!!」
世界は暗黒に包まれて、静寂が支配する。
しばしあり、ハミエルがはっと気が付いた時には、巨大な亀裂が走り、大地がえぐれるグラウンドではユダが目を回してブツブツと何やら怪しげな野望(アダン・クルセイダーズが史上最強だの、宇宙を制するのは我らがアダンだの、全知全能なる教皇猊下に栄光あれだの)を呟きながら、ひっくりかえっていた。選手達もうめき声を上げながら転がっている。
すでにセーラー服姿の4人と〈アルカード仮面〉の姿は無く――マウンド上には、誇らしげに合衆国の国旗がはためくその周辺に、4種の花が投げられていた。紅のバラ、ピンクのフリージア、青いアイリスに黄色いプリムラが。
すっかり荒れ果てたグラウンドを呆れた様子で眺めたハミエルは、思わず、叫んだのであった。
「やっぱりあいつと関わると、ろくな事がねーっ!!」
Act.5 これでもやっぱり、大団円?
少なくとも、その夜のスポーツニュースは、全銀河規模で、DJとBSの試合の話題に終始していた。
結局、狂信的とも言えるACのファン、ユダ・イスカリオーテは逮捕されたが、精神と肉体にこれ以上は無いぐらいのダメージを受けているとして警察病院に運ばれた。行方の心配されていたBSのジークフリード監督は球場トイレでさるぐつわをされたまま便器に腰まで突っ込まれ、身動きできなくなっている所を発見され、大いに怒っているらしい。選手達は両球団員共に失神していただけで、大流血の割には皆元気だという事で――何しろ、普段の試合の方が負傷度が高いというのだから、ハードである――3日後の試合に支障はないという。当局では、球場に姿を見せた集団の行方を追っているが、テレビ中継が入っていたにもかかわらず、謎の集団“セーラーアトラスG”の映像は機器のトラブルにより全く収録できておらず、善良なる市民からの情報を募っているとの事である。なお、球場は彼ら“セーラーアトラスG”各員の必殺技により壊滅的な被害を受け――結局のところ、今日の試合は無効、後日改めて再試合という事になったのである。斯くして、ユダの歪んだ野望は見事に打ち砕かれた。悪の栄えたためしはないのだ、じゃじゃん!!
だがしかし。
それは、一部の人々にも、ある意味不幸をもたらしたのであーる。なむ、なむ。
聖都アダン。アリシアの某所には、アークライト家の屋敷があった。そこの三男、アイク・アクセル・アークライト――通称エースは、自室でハイビジョンのワールド&スポーツニュースを流しっぱなしにしながら、部屋の片隅でひざを抱えて座り込んでいた。
「ジャガーズが勝ってたのに、勝ってたのに。久しぶりに、勝ってたのに」
悲しげにそう呟く彼が、ダイハン・ジャガーズの熱狂的なファンだという事を知る人は……少ない。
【第1話 完】
▼せっかくなので、この話は「とある聖都の日常」のDORさんに捧げます(笑)
▼ついでに、某宇宙戦艦の乗組員達にも捧げちゃったりして。
▼こんな彼らのその後に興味のある人は、XAブランチ交流誌『WORLD
ATLAS』を見てね。連絡先はクレギオン#5進行中のネットワールド/セーラーズ・インを参照の事。
▼しまった、紙面が余ってしまったぞう。
▼ではでは、これにて、さらば(笑)。
1996年6月