ネットワークRPG“アラベスク”
『エルハーダの秘宝』
6回(第10月期)プライベートリアクション :N08 C

★危機

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scene1.予兆

 『第三の魔導書』を手にいれた冒険者グループ『エラン(情熱)』の面々は、ケルマンド山火口にある魔界の門を閉ざすべく、分割していたパーティを合流させた。合流場所が山脈内部となったのは、魔界の門を閉ざすのに必要不可欠なアイテム『奇跡の杖』の探索に『エラン』の半数の人間が既に山脈に入っていたからである。
 合流後、お互いの状況などを示しあい、これからどうするのか、軽く話し合う。魔界の門を閉めるために必要な品である『奇跡の杖』はまだ手に入っていないが、もう一方の品である『第三の魔導書』は幸いにして、既に人間の手にある。後は、早々に杖を見つけて、閉門の儀式を執り行わなくてはならない。
 成さねばならぬ事。それは常に心中に在る。だがその行動は何の為に行われるのだろうか? 何をもって己自身が納得するのだろうか?

 火口に近づくために、魔物に注意しながら1日山を歩く。そして魔獣ピヨとラニックを守っている冒険者達と合流するべきだろう、人々の戦力を集中させるためにも。『エラン』の面々はそう考え、山道を徒歩で進んだ。魔物を気にしながらの行軍はろくに進む事も適わない。ある程度進んで、岩の影に隠れる様にして休む。
 それは、お昼近くの事だっただろうか。休息のついでに昼食を済ませようよ、というシンザーク・モリガンの言葉に、一行は大きな茂みの奥で休息をとる事にした。
 乾燥食料を使っての食事の準備を手伝うのはルカルカ・ルーの日課でもある。力のいる簡易竃の制作はソル・パルストイの担当だ。リオーン・バーネズとレイゲン・アシュヴィンの2人は、素早く薪を集めて来る。セラヴィール・トゥエルラキアは皆の様子を目で追いながら岩に腰掛ける。そして、その側に腰掛けたトマシアン・ライハザードに目をやった。
 セラヴィールは今朝のシンザークの言葉を思い出す。「今日1日トマシアンの様子を見ててくれないかな? もしいつもと違う点があるなら、トマシアンには内緒にして、僕に言って欲しいんだけれど」というものだ。その口調は、明らかにシンザークがトマシアンの様子を、どこかいつもと違っていると思っている――と、セラヴィールには思えた。
 足を投げ出して岩に背を預けるトマシアンは、疲労が残るのか気怠そうに首を動かすと目を閉じた。そのまま静かな寝息をたて始める。
 食事の準備の手を止めたシンザークが『第三の魔導書』に目を通し始めたセラヴィールの側に来る。本から顔をあげたセラヴィールに飲み物を渡して、シンザークはトマシアンを起こさない様に気を配りながら、彼の顔をのぞき込んだ。
「セラヴィール、君はどう思う?」
「私には、いつもと変わらない様に見えるが?」
 トマシアンの顔を見つめたまま、シンザークは小さくため息を吐く。
「食事量はいつもと変わらないし、睡眠だって……ちゃんと取っているみたいだし。夜中はずっと考え事をしているみたいだけれど、その分はちゃんと日中に寝ている様だしね。皆といつものように喋るし。でもね、少し気になる所があるんだよ」
 シンザークは視線を上げてセラヴィールを見る。
「他愛のない話題の時には反応が少し遅れるんだよ。返事が一瞬遅れたり、返事が無かったりする。そういう時って大抵誰に話しかけているのか明確にしない事って多いだろう?だから、自分はその会話の範疇外だって思っているかもしれないんだ。後は――表情が少しね。無表情って言うのかな。元々冷静だけど、いつもにも増して、感情的な部分が――出てない感じなんだよ」
 セラヴィールは思案げに訪ねる。
「だとするならば、原因は何なのだ?」
「心当たりは、ない事もないよ――でも、ここでそういう話をしていると、トマシアンを起こしちゃうかもしれないから、もう少し後で、相談に乗ってもらえるかい?」
 頷くセラヴィールに、シンザークは笑みをみせた。