★黄金の瞳持つ緋色の獣
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Act.4『お母様』と『希望の子供達』
順当に考えてみるならば、どう見ても20代前半のラヴィアンが、18歳のアベルの『母親』である筈がない。その奇妙さにアベル自身も気が付いて良さそうなものなのだが、アベルは彼女を本当に『母親』だと思っている。アベルには思考調整が行われている可能性が高い――ヴァレンタインはそんなことを考えながら、廊下を歩いていた。
戦闘型のアベルと異なり、ヴァレンタインはサイボーグでも珍しく情報処理能力を重視して調整されている。だから、情報収集はお手の物だった。
アベルと知り合ってから半年になるが、最初に出会って、その奇妙さに、驚かされた。だって、どう見たって『制作物』だぜ、あれは。人間らしい感情のない、まるで『プログラム』されたような精神。歪んだ心、極限まで押さえられた感情、ただ己が強くなる事だけに発現している目標。あれならこのシンクタンクの中央コンピュータの方がまだ人間らしい、と言っても過言じゃない。
だから、調べてみたのだ。アベルの事を。しかし、それはすぐに機密という壁に突き当たった。[Hope
Children]という名の壁だ。その内容を覗くには、特殊なIDと一定のパスワードが要る。
だから今度は『お母様』と呼ばれるラヴィアン女史の糸を辿った……これも途切れるのは早かった。解ったのは、イゾルテ社に関係しているという事だけ。イゾルテ社といえば、奇妙な噂をヴァレンタインは小耳に挟んでいた。[DIMOS]と呼ばれる秘密結社に一枚かんでいる、という噂だ。兵器開発共同体結社で、公式には出来ない研究を――無論人体実験を含む――行っているとの噂である。
あるいはアベルは『兵器』である事を追求したサイボーグ体なのかもしれなかった。それにしたって、あそこまで極端にする事もないだろう。まるでキャバリアーを運用するための『ユニット』扱いだ。困った事に本人にその自覚がない。キャバリアーに乗っていなくとも、様々な武装の施されたアベルの躯はまさしく『人の体』ではなく『兵器』である。そして『お母様の為に』作戦を立案し『お母様の為に』それを遂行する……行動原理が全て『お母様の為に』ってのが何よりも気に入らない。だから余計に道具に見えて仕方がない。人は人として生きる主権をもっている。体がどんなになったってそれは変わるものではない。なのにあいつの場合は……。
あれでは、生きているとは言えない。
○
「テストの結果は充分よ。よくやったわね」
「はい、お母様」
ラヴィアンの言葉に、アベルは笑顔を見せた。他人には見せる事のない、無警戒な笑み。ラヴィアンも正面にアベルを見据えると、穏やかな表情になる。
「後は実践成果ね。期待しているわ、アベル」
「はい、お母様」
何の疑問も挟まず、期待通りの成果を上げる。愚劣なる、汚辱に満ちた人間共と違って、決して嘘を言わない、裏切る事の無い、私の愛しい子供達。さも自分達が正しいような言い訳ばかりして、他人を利用するだけ利用して、踏みにじり、護って貰う事ばかり考える、自身では何一つ出来はしない、浅ましい人間共。何の価値も無い者は、この世に存在する必要など無い。これはその為の第1歩。
ラヴィアンは整った指先で愛しい息子の頬をそっと撫でた。
《FIN》
☆うわぁ。久しぶりに書くと凄く下手っぴな事が益々目につくぞ、と。感想貰えるとうれしいぞ、と。あと、ただ今出演者募集中だぞ、と。でもこれだけ下手だと誰も希望しないぞ、と。とは言えいずれオニール神父様には登場願いたいぞ、と。という事で今回の後書きは神羅カンパニー総務部調査課タークスのレノ風だぞ、と。(←馬鹿)