★日常の中の非日常?

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注;この物語は毎度の事やけんど、キャラクター登録時の設定だけで描かれてまんねん。とまあ、そないなコトで、実在の人物・団体やら『ユニバース・エンド』のリアクション等とも全然関係が無いっちゅうワケや。そやさかい、この話を歴史の一環として信用したらあかんでぇ(笑)。雰囲気作り、という事で許してぇ〜な。な? ええやろ?

Act.1 朝日が何故か眩しぃでんな

 聞き慣れた目覚まし時計の電子音に、アベル・エレザールはベッドの中で身じろぎをした。ころん、と寝返りをうち、手だけを伸ばして、アラームを止める。
「アベル。アーベール。アサ。アサ」
 枕の傍らに置かれた、30cm程の大きさの、ずんぐりとしたクマのぬいぐるみがアベルの頬をぽむぽむと叩く。煩わしそうに、アベルはぬいぐるみ――自分で造ったミニロボット、製作No.963名称『くまたん』をサイドテーブルへと追いやった。
 そのまま、もそもそと再びベッドの奥へとアベルは潜り込んだ。今朝、午前4時まで趣味のミニロボット製作に勤しんでしまったアベルは、今、爆裂に眠かったのである。
 突然、寝室の扉が勢いよく開いた。ふよふよと何かが漂う様な音を響かせながらアベルに近づく。小さな体で布団を引っ剥がして
「アベル!!すがすがしい朝やで、朝!!」
 アベルの耳元で、大音響。アベルはびっくりして跳び起きた。不機嫌そうな表情で、目の前にぷかぷか浮かぶロボットを見据える。
「何だ……お前か」
「何やあらへん!! 今日はアルベルト兄ィさんがくるさかい、朝7時に起こしてぇな、て頼んだの、アベルやおまへんか。わい、造られてからの初めての仕事やよって、ごっつう頑張ったんやで!! それやのに、労いの一言もあらへんのん? あんまりやないか」
「わかった、わかった。ありがとう」
 アベルの一言に、昨晩出来たばかりの製作No.1156名称『フラッグ』は満足げに頷いた。アベルはフラッグを自分の肩に留まらせながら、失敗したかな、と考えを巡らせる。
 フラッグに使ったプログラムは自称『兄』のサイコキャヴァリアーパイロット、アルベルト・ヴァレンタインが造ったものである。「今度のロボットにはこのプログラムを使ってみな」と貰ったものなのだが――まさか、こんなにお節介……というか、お喋りなプログラムが組んであるとは。親が親なら子も子である。まあ、それでも反重力制御装置はうまく作動しているみたいだし、周囲の認識も早いし、演算能力もまあまあだし――どちらかというと出来は良い方だろう。お喋りな部分は、我慢するとしよう。
 着替えて、唯一自分の生身部分である大脳に必要な栄養素のアンプルを延髄部分に打ち込んでいると、来訪者を告げるベルの音がした。
「お客さん。迎える。連れて、来る」
 アベルの足元で部屋の片付けを始めていた製作No.1103 名称『エプシロン』が、その丸い体にくっついた足をトコトコと動かしながら玄関へと向かう。しばらくして、エプシロンを肩に乗せたアルベルト・ヴァレンタインが部屋に入って来た。
「よおっ、弟。ちゃんと起きて待ってたな、よしよし、偉いぞぉ」
 アベルを抱き締めて、ぐりぐりぐり。アベルの肩に止まるミニロボットを見て、ヴァレンタインは、にぱっ、と笑った。
「また造ったんだな。今度は何て名だ?」
「フラッグ、いいまんねん。よろしゅう、アルベルト兄ィさん。兄ィさんもわいの生みの親ですさかい、かわいがったってや」
「おお、あのプログラムか。滑らかに応対するじゃないか。やっぱり俺って天才だな」
「それを言うなら天災だろう」
 アベルがぽろっと漏らした一言に、ヴァレンタインは更に腕に力を入れて、アベルを押さえ付ける。
「アベル、たまに軽口を叩いたかと思ったらそんな面白くないコトを言いやがって」
 ぐりぐりぐり。アベルの髪をかき回す横で、ソーラー発電用のパネルを翼代わりにして宙に浮き上がったフラッグが溜め息をついた。
「わい、思うねんけど。アベルには語りのセンスがおまへんのとちゃう? わいの方が、ごっつうおもろい事、言えまっせ」
「フラッグ君。いくら真実とはいえ、主人の事をそうあからさまに暴露しなくても(笑)。アベル君はね、心の貧しい可哀想な子なんだよ。だから君の様な愉快なパートナーが必要なんだねぇ」
 笑顔をアベルに向けながら、ヴァレンタインは更に続けた。
「勿論、俺のように優秀なお兄様も必要ってワケなのさ。解るかなァ、アベル君?」
 アベルは無言でヴァレンタインを睨みつけた。ヴァレンタインの笑顔が変わらないので、憮然とした様子で一言。
「どうしてそう、人を子供扱いするんだ」
「だって、実際子供じゃん」
「18歳は充分、大人だ」
「ふぅ〜ん。大人ねぇ」
 含みのある表情でヴァレンタインはアベルを見つめる。年月を重ねただけでは、大人になるって言わないんだよ、アベル君。そう心中で告げながら、ヴァレンタインはくすくすと笑い出した。
「だから、子供扱いするなって!!」
「はぁーい、はいはい。ところで、お兄様は朝食、まだなんだ」
 ヴァレンタインの言葉に、暫く沈黙が続く。
「お兄様は、朝食、まだ食べてないんだって」
「食べたければ、自分で作ればいいだろう」
「1人で食べると、美味しくないからヤダ」
 ヴァレンタインの言葉に、アベルはつい眉間に指を立てた。
「……付き合え、とでも?」
「もっちろん」
「どうせ摂取しても、体内で焼却処分。何ひとつ栄養にならない事は知っているくせに、そんな資源の無駄を要求するつもりなのか?」
「お前の場合はそうだけどさ……だから、お前は面白くないんだよな。第一パーティとかに出席した場合、栄養になるならないは別として、何かつまむのも礼儀ってものだぞ。その練習だと思えばいいじゃん。作ってやるから、お前も食えよ」
 さらに抗議しようとしたアベルだったが、口で言っていてもヴァレンタインには勝てそうにも無い。アベルは大きな溜め息をついて、抗議の言葉を飲み込んだ。