★日常の中の非日常?
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Act.2 メチャメチャ イケてるっ!?
ヴァレンタインは午後からアベルを街に連れ出した。何でも“お友達”の女の子の1人がもうすぐ誕生日を迎えるとかで、豪華な花束を送ることは言うまでもないが、もう一つ、気の利いたプレゼントをするのが『粋』なんだといい――つまり、アベルにその買い物に付き合え、と街に連れ出したのである。
あれがいいだの、これも捨て難いだの、いやいや可憐な彼女にはこれも似合うだの――たっぷり半日、アベルはヴァレンタインに振り回されてしまった。ヴァレンタインのお喋りを躱そうとフラッグを連れて行った事も、アベルの作戦ミスだというべきだろう。お喋りな2人(?)をぶつけて緩和するつもりが、2人が2人共アベルを構うことになり、結局アベルはお喋りコンビのステレオ攻撃を受けることになってしまったのである。
絶える間もなく次々と繰り出されるお喋りラリー合戦にすっかり精神的に疲れ果てたアベルは、それでも表情ひとつ変えずに、黙々とヴァレンタインの後をついて行く。
街の公園に差しかかった時、アベルの表情が不機嫌に歪んだ。その様子に、ん? とばかりにヴァレンタインが公園に視線を向ける。 みると、グラサンをかけたスキンヘッドの神父らしい男が、公園で遊ぶ子供達を掴まえて何やら矢継ぎ早にペラペラペラペラ喋っている。
「何だ、ありゃ?」
ヴァレンタインの一言に、フラッグも首を傾げる。
「おかしな神父はんでんな。アゴのネジ、はずれてまんのとちゃうやろか」
それはお前達も一緒だろ、と心の中で悪態をつくと、アベルは足早にここを立ち去ろうとした。
しかし……。
「ハレル――YA! 久しぶりだな、兄弟よ。こんなところで再会出来るとはこれぞ神の思し召し!! 何たるハッピー!! おお、感動のあまり言葉もでないとは、シェンク・オニール最大の感激!! HAHAHAHAHA!!!!」
アベルを見つけて、一方的に喋りまくるのは“クールでグレイト、偉大なる”自称神父、シェンク・オニールである。
そのマシンガンの様な喋りっぷりに、彼にに初めて会った時の、あの、悪夢の様な出来事をアベルは思い出してしまった。頭痛に苦しむアベルに怪しい薬を飲ませてどこかへ消えたとんでも無い奴だ。空母ハートランドに所属になったとき、同じ隊に彼の姿を見た時はこの世の終わりかと思ったが、捨てる神あれば拾う神あり。アベルはハートランドを後にしてイレヴンスへ行くことになり、思わず神に感謝した程である。もう二度と会うことは無いと思っていたのに、何故、また、こんな所で……。
巡り過ぎる頭脳というものは時として不幸である。オニール神父を目の前にして、これから繰り広げられるであろう常識外れた騒動をついシュミレーションしてしまったアベルは、身を護るために、最小の時間で最大の効果をあげる行動を、咄嗟にとってしまった。
蒼色がかったアベルの髪が放電しながら浮き上がる。カチ、カチと小さな音を立てながら照準を修正し、一度ゆっくりと瞬いたかと思うと、アベルの瞳からオニールに2本の紅い光線が伸びる。
「アベル!! なんて事を!!」
ヴァレンタインの叫びも空しく、レーザーを叩きつけられた神父は、そのまま、一瞬にして沈黙……するはずであった。
「HAHAHAHAHA!! 『暴力人のためならず』とモーゼの十戒にもある。いきなりレーザー攻撃とはいけないな、ブラザー」
シェンク・オニール神父はレーザーがモロに頭部を直撃したにも係わらず、とてつもなく『へっちゃら』だった。
「おやおや、何が起こったのか解らない、という顔をしているね? よろしい、このクールなシェンク・オニール、グレイトなシェンク・オニールが無く子も黙る完璧な論理で解説してやろう!! 詳しくは、皆のバイブル、騎士の心のオアシス、サイコキャバリアーパイロットの麗しい社交場所、超能力者のナンパ天国[Knight
Club Vol.29]の35ページ[Dr.Dの「なぜなぜクレギオン」]をひもといてくれたまえ――ハレル―――YA!!お題は『レーザー』。レーザーといえども、しょせんは光の束。最も有効に無力化するには
1.装甲はピカピカにする
2.入射角度が低くなるよう丸みを持たせる
――つまりこのグレイトな頭が最良という事が、これで証明されたというコトなのだーね、HAHAHA!!!!
3.屈折率、は無視してくれたまえ――!!!!」
喋りまくるオニール神父を暫く無言で見つめていたアベル達だったが、先ず、ヴァレンタインが溜め息をついた。
「アレだな。ギャグ漫画の登場人物は恒星に突っ込んでも生きているというアレだ」
「そもそも、今回のプラリアもギャグプラリアとちゃいまっか? ほら、台本にそない書いてありまっせ、アルベルト兄ィさん」
「くまらの書くクレギオンプラリアはシリアスが原則だろう? お約束ってやつで」
「お約束、では出されへんゲストの方もいてはります。ほら、今回の神父はんとか」
「シリアスだと思ってここまで読んで来た読者の皆さん、怒るぞ」
「その点はだんないですわ。くまらの書くプラリアは毎回字がぎっしりですさかい、誰も読ましまへん。DORはんだけでんな、目ェ通しはりまんのは」
「そうか、なら安心だ」
ヴァレンタインとフラッグの楽屋落ちな会話の横で、あまりの非常識な展開に肩を震わせていたアベルは、くるりとオニール神父に背を向けると、高らかに宣言した。
「今日は誰にも会わなかった。公園では、何も見なかった!!」
「あ〜あ。とうとう、現実逃避、始めてしまいましたわ」
あきれた様子で、フラッグ。
「アベル。偏見は、感心しないな」
ヴァレンタインの言葉に、アベルはキッ、と彼を睨みつける。
「何も見てない!!」
「はいはい、そう青筋たてるなって」
「何も、無かった!!」
「何もない訳おまへんで、さっきのレーザー攻撃でがっちり減った体内電力、どないするねんな」
アベルはフラッグのコード状のシッポを握ると、思い切り引っ張った。
念を押すように、繰り返す。
「何も、無かった!!」
その叫びにフラッグはくるくると目を回す。
「もう、帰る!!」
そのまま、アベルは後ろを振り向く事なく、ずんずんと公園を去って行った。その姿は、まるでいじめっ子に泣かされて去って行く小学生のようだった、と後にヴァレンタインが証言する事になるのだが。とりあえず。ヴァレンタインも、大袈裟な素振りで肩を竦めると、アベルの後に続くのであった。
「やれやれ、クールじゃないな」
シェンク・オニールの呟きだけが、後に残された。
「ま、相変わらずファニーな事だ。再び会う事もあるだろう。HAHAHAHA!!!!」
虚空を見据え、笑うオニール神父を、街の子供達が遠巻きに取り巻いていた。
「お兄ちゃん。あのハゲたオジさん、1人でケタケタ笑ってるよ」
「春だからな」
誰よりも冷静なのは、あるいは公園で遊ぶただの子供達なのかも、知れない(笑)。
《続いちゃったらどうしよう》
☆後書きですねん。途中までシリアスやと思ってはった人、かんにんしてや。実は、ギャグプラリアでしたんや。一応、前フリはしておきましたで。最初の『注』が大阪弁になってたでっしゃろ。これ、前フリですねん。ちなみにこの後書きは、神羅カンパニー都市開発部門統括、リーヴ部長を目指してまんねんな。ちょっと、趣旨がちゃうねん。な?
今回はオニール神父はんにゲストで出てもらいました。くまらのプラリアは『ゲスト』ちゅうようなお方はなかなかお呼びできまへんよって、貴重でっせ。ちょっとホンマモンとはちゃうと思うけど、許したってぇな。苦手ですねん、他人様のキャラ描くのんは。何せ、ものごっつう下手っぴいでっしゃろ、なかなかその人らしゅう書けまへんのや。「似てへんでー!! こんなのとちゃう!!」という怒りは、心置きなく、道頓堀にでも沈めたって下さい。ほな、今回はこれでさいなら〜♪