学都戦記 神代〜神の代弁者〜 「Intermission」 周りは火の海と化し、人の気配は無い。 そっちの方がやりやすいが。 目の前に、荒御霊を纏った翡翠が立っている。 その瞳に光は無く、正気を失っているのがよくわかる。 ―――まったく、どうして、こう、悪い方への選択肢を歩いていくんでしょうか。 ニンゲンの中で暮らしていて、時々わからなくなる。 何故選択肢を己で狭めてしまうのか。 届きはしない、人の言葉を放つ。 「少し、暴れ過ぎです。 ―――翡翠さん。」 空気ではなく、空間に高い音が響く。 ここで暮らすために封印していた力を、解放する。 同時に、空間移送。 エーテルサイドへと、移る。 真白い空間の中、翡翠さんの纏っている荒御霊が、その正体の一片を表す。 その姿は、鳥のような、竜のような奇妙な生物。 漆黒の光を身に纏い、その6枚の翼を羽ばたかせている。 「ふむ…久しいな。光と風の者。」 「自分の兄の名を…忘れましたか?ガルセティ。」 ゆっくりと、己の力を展開していく。 急激に展開しては相手に感づかれ、余りゆっくり過ぎれば間に合わない。 ―――結構シビアですね… 「兄…か。戯言を。 俺が心を許すのは、俺と同じ者のみ。」 「あの方は、私達を唯一存在として作り上げました。…そんな相手がいないことは、解っているでしょう?」 ―――そう、私達は――― 「下らぬ話をする必要も無いな…する事は一つのみ。」 ガルセティが、姿を変え中世の鎧な姿になる。 それは、翡翠の体に納まる。 ガルセティを纏った翡翠が構えを取る。 「ここで、全ての決着をつけるのみ。お前が主は現在休眠しているはずだ。そうでなければ貴様で無く奴が来るはずだからな。」 ―――やはり、そう来ますか。 封印解除、本体移送、リミッター・解除。 位相固定、同調完了、至魂機構・全開放。 瞬時にして、全力を開放する。 力が、体の中に流れ込み、背中の翼を開放する。 12枚。 だが、翼がその形を整え終わるよりも早く、耳の傍を声が通りすぎていく。 「遅いな。…人の中で暮らして、堕ちたか?」 「くっ!?」 身を翻す。 だが、数瞬遅く左腕をもって行かれる。 痛みは無い。 翼を打ち払いバランスを取る。 「不意打ちとは、卑怯ですね…」 「戯言を…」 ―――依代がある分、相手の方が有利ですね… 「さぁ、始めましょうか。」 残った右腕で、構えを取る。 これから始まるのは、幾万年も続いてきた神話の戦い。 人の形を借りて、人で無いものが戦う戦場。 懐かしい感覚が、有る。 闘いは、3度の交わりで終了した。 「Divine Destiny」 「まったく、大変だったなぁ」 目の前で、一人の少女の姿をしたものがむっつり顔で私をにらんでいる。 「いえ、そんなに睨まれても…」 「仕方が無いことだけどね…」 少女が歩み寄る。 「言霊を含めたとはいえあーんな陳腐な台詞で本当に吹っ切れると思ってるのかなぁ…」 「吹っ切れる人は、居ると思いますけど。」 「それに、本当に自分の力でやったことだと思ってるのかな?…ガルセティを封じたこと。」 「そうだと思いますが。」 脳裏に、翡翠の姿を思い浮かべる。 「それに、ガルセティも頭悪いなぁ…あいつなんて、もう目じゃないんだ。私が、何時までもこの世界の者で居るはず無いのに。」 「ガルセティは、長い間奴と一緒に居たから、知らなかったんでしょう。」 「だから、荒御霊なんて面倒くさいものを作って…ああ言うのは、修正が効きにくいから使いにくいんだ…」 「それに、実際彼は荒御霊を本来の方向で使いこなしましたよ。」 ―――そうでなくては困るんですがね。 「まぁ、本当に。そういう意味では、良い結果で終わったとは言えるけど。」 「それで良いんじゃぁ有りませんか? 因果律修正にはそれなりに力が必要なわけですし。」 「そうだね。…それにしても、あの野郎…死に足りないのかな…?」 殺気が、形を持って空間を支配する。 この場所に通常世界の生物が居たら、精神異常をきたすほどの。 「ここで言ってても仕方がありません。それよりも…」 「ああ…今回の介入でわかったことだけど…」 霧散していく殺気の代わりに少女は、悲しそうな表情を浮かべる。 「翡翠の中の彼の魂は…たぶん、また目覚めない。」 「…そうですか。」 この、少女が何故少女であることを捨てここに居るのか知っている者は私と、あの方と、そして慈愛の魔王のみ。 それが、どんなに哀しく、エゴに満ち溢れたものかを、私は知っている。 だから 「時間は、十分過ぎるほどあります。あなたは魔王であり、私は風なのですから。」 「そうだね…それに、今回、あれだけしか因果律の修正をしなくても、翡翠は勝った。これは評価すべき点だよ。…意外性が有るという点で。不確定要素も多いしね。」 にっこり笑って 「まだ、駄目と決まったわけじゃないから。」 「そうですね、」 「じゃぁ、今後も張り切って介入をしてね。…彼の魂を目覚めさせれるよう。」 「解りました。 我が主」 ―――この世界で、最も強い言霊を。 「星の魔王・魅蕾・シャデュリオ・カーマイン…」 「行ってらっしゃい。 風を統べる者。」 空間転移。 行こう。 彼等のいる場所へ。 鏡幻学園へと。
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