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終曲: The Finale of the Legend(3:20) 1 上昇中の機体の中、フェシアはヴァイスに話しかけた。 唐突に、頭の中にあのときの吟遊詩人の青年の姿が浮かんできて。 気が付いたら、こう言っていた。 「…私…帰ってきたら、歌を歌おうと思います。」 「…神楽じゃないだろうな。」 …心配性ですね、兄さんは。 でも、それだけ自分のことを大切に思ってくれているのだと、判る。 フェシアは苦笑。 「…もちろん、違いますよ。…決まり切った事ばかりに縛られず、みんなが、自分の答を見つけるのを助けられるような。そんな歌を歌いたいです。」 「…自分の答はまだ見つかっていないのに…か?」 「見つかっていないからこそ、歌いたいんです。歌いながら、探すんです。」 きっと、楽しいですよ?とフェシアは続ける。 それに対し、ヴァイスは満更でもない調子で、 「大変だぞ?俺達、きっとお尋ね者だからな。」 「大丈夫ですよ。ずっと、着いてきてくれるんでしょう?」 「ああ、そうだったな。」 笑い合う。 外のモニターには、天障海の風景。揺らめく水のようなエーテルの海。 エーテルがそのままでいられる場所。全てが生まれることのできる原初の海。 「まずは、今回のことを歌にしたいですね。」 「…ちょっとそれは、いきなりすぎないか?」 「いいんですよ…歌なら。吟遊詩人の伝記みたいに、歌って回ればいいでしょう?」 「まぁ、吟遊詩人の歌、ってことにすれば、大丈夫かもな…」 そうため息を付きながら、目を閉じるヴァイス。 「とりあえず、帰ったら…」 自分の顔が熱くなるのを感じながら、フェシアは呟く。 「…うんと、ただれた生活しましょうね…?」 「…君は」 ヴァイスがそう言いかけるのを、フェシアが遮る。 「12年分、一気に取り返したいじゃないですか。」 「…はぁ。」 諦めたように頭をかく仕草。 「まぁ、それも、いいかもしれないな。」 そう呟いて、ヴァイスは操縦桿を握りなおした。 出口は近い。 周りが段々暗くなってきた。 「…にいさん、星が…」 「星界に…近づいてきたか。」 「…約束、果たせましたね…」 「…そうだな。」 しばらくの間、操縦室に沈黙が訪れる。 やがて、天昇海の揺らめくような膜が消え、全てのモニターに、満天の星が――― 2 天障海を抜けて、星界に出た刹那。 強大な衝撃によって、「蒼嵐」は木っ端微塵に砕け散った。 |