序曲:Overture of The Legend (4:47)


…鈴の音が、響いている。
山間の風景の中、ひとつの大きな籠とそれを守護するが如く――否、実際守護しているのだろう有翼人ウィンディルの行列がゆっくりと歩いていく。
目指すは、もうすでに視認出来るようにまで近づいた村落。
さらに視線を上に動かせば、この場所が何処か確認できるだろう。
ひときわ高く、鋭く。
しかし、その山頂は何かに掬われたような平面になっている。
霊峰、アカーニァン。
彼らが信じる「絶対神クリュシィース」が降臨し、去っていったとされる聖地である。
つまり、目指している村は最も山頂に近い場所。
クリュシィース大神殿のある村である。
ゆっくりと鈴の音が響く中、豪華ながらも瀟洒な装飾の施された籠から、女声が響く。
「止めて…下さいませんか?」
ゆっくりと、しかし一隊が止まる。
すぐに、傍女と思われる老婆が籠に近づく。
「何でございましょうか。」
老婆はその外見に似合わずきびきびと、しかし中にいる者に不快感を与えぬよう柔らかく問う。
それを察してか、籠の中の者は優しく答える。
「ここからは…自分の足で歩きたいんですけど。」
老婆は困って
「なりません、フェルフィシア様。…あなた様の安全のためで御座います。」
「自分の、…私の故郷に自分の足で入ることすら叶わないのですか?」
「はい…そう言うしきたりです…」
「そうですか…」
中の影は、悲しそうにため息。
「なら…」
「?」
懇願するように
「御簾を、空けては下さいませんか?久しぶりに…12年ぶりに見る故郷の山を、そして山神達の姿を見たいのです。」
老婆は一瞬迷い、
「それならば…良いでしょう。」
言い、傍にある紐を使って御簾をたくし上げる。
中には、白い儀式用の法衣をまとった影が、ある。
翼は、白金にすら見える白さを持った10枚。
至翼ルシフである。
フードの隙間からこぼれたその髪は、濡れたような銀髪。
それが高空の風に少し揺れる。
高空だが、吹く風は優しい。
上を見上げれば、天障海すらも見えてしまいそうな青い空。
したを見下ろせば雲に包まれながらも頭を出している山々がある。
雲よりも上にあるこの場所から、山々を見、ため息。
そして、誰にとも無く。
「やっと…帰ってきたんですね…」
御簾を空けたまま、ゆっくりと一隊が動き出す。
しかし、確実に。  
 

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