レジェンド・オブ・スケロク2 エピソード3

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第2話 さすらいの冒険家 〜白馬のアニキを夢見て〜
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ヤクモ高原の麓にあるヤクモ村。スケロク達は、この村にいる鳴羅門の友人の学者ザイルの家で、一晩休ませてもらうことになった。
「しっかりと体勢を整えていくといい。この先は色々な意味で厄介だからな」
アズミ村からスケロクシティへと陸路で行く場合に、ヤクモ高原は絶対に通らねばならない場所だった。
しかし、ミュータントの中でもいたずら好きな者が現れ、難所となっているのだった。
「ミュータントが集団で現れたら、鍛錬を積んだ君たちでも手を妬くだろう。だからこそ、ここでしっかりと準備していかなくてはな」
ミュータントとは、約200年前に起きた太陽の異常活動によって突然変異した人間や魔族で、他の種族を憎む者も少なくない。


「面白い話をしてあげよう。君はミュータントが生まれた原因である、太陽の異常活動・・・その原因が何であるか、君も学校で習っただろう?」
ザイルが、突然スケロクに質問する。しかし、これは歴史の教科書にも載っているようなことで、スケロクの答えは決まっていた。
「『大戦』の影響って、歴史では記されてるけど・・・」
ザイルは、なぜあの時だけ太陽が異常をきたしたのか、未だに謎につつまれているという。
歴史では、そう記されているが、ザイルはそれを鵜呑みにしてはいなかった。
「馬鹿げとる」
ザイルは、なぜあの時だけ太陽が異常をきたしたのか、未だに謎につつまれているという。 「スケロク共和国とイナリ王国の『大戦』の際に、互いの国の超能力者同士の戦いによって、彼らの超能力が太陽にまで影響したと言われているが、そんなことは有り得んよ。どんなに強大な超能力を持っていたとしてもな」

「歴史が間違っていると?」
スケロクの疑問は当然だった。今まで当たり前のように教わってきた歴史が、真実ではないというのだから。
「教科書の歴史は真実ではない。太陽の異常活動は、絶対に『大戦』の影響ではないと、わしは断言できるよ。」
ザイルは、世界規模で抹殺された、裏の歴史が存在するという。
「歴史の裏で、何か大きな事態が起きていたのは間違いない。残念なのは、大戦に魔族が関与した記録がないことだ。それに魔族は、その事になると語ろうとしない」
ラナも太陽の異常活動を経験しているはずだが、過去のことを口にしようとしない。
「わたくし達魔族は、人を止めるべきだったのです。それができなかった魔族にも、罪があります。それに、わたくしは・・・」
ラナの顔は、時々見せる深い悲しみと、罪の意識を感じさせる表情になっていた。
「ああ、すまない。この子を悲しませてしまったか。」
「いえ、大丈夫ですので」
ラナは笑顔を見せる。強がって見せているようにも見える。

「君達は、超能力の素質が高い。一目見てわかったよ。超能力とは、全ての生き物の持つ、無意識と本能の力。無意識の世界の大いなる力を、意識の力によって引き出す術なのだ。常に意思を強く持つよう、努力するといい。ちょっとした意識の違いでも、効果はけっこう違うものだ」
少し前まで『魔法』と呼ばれていた超能力のメカニズムも、大分解明されてきてきていた。
しかし、スケロク共和国では、強大なサイキック能力を持つものは疎んじられる傾向にあった。
「全く馬鹿げとる。優秀な人材を潰してどうするというのだ。昔は星をも動かした超能力者がいたと言われているというのに。シュリの奴は一体何を考えているのだ!」
スケロク共和国・現大統領シュリ。彼は、20年以上の超長期政権によって、独裁的な政治体制を確立していた。
能力の高い者や魔族は差別の対象となり、国の荒廃の最大の原因とされているにもかかわらず。誰も手出しができないでいる。
「年寄りの愚痴になってしまったな。すまない。さて。ゆっくり休むといい」

「スケロク様は、この先不安ではないのですか?」
ベッドに入ったラナが、寝ようとしていたスケロクに話しかける。
「不安だらけだよ。でも、不安のない旅なんてないしさ、不安もあるから旅は楽しいんだよ」
スケロクの考えは、極めて楽天的だった。良く言えばプラス思考、悪く言えば能天気と言われるような性格をしている。それがスケロクの魅力であり、人を惹きつける要素であるのは間違いない。
「それから、スケロク『様』っていうの、いいかげんやめてくれないかな?そんな間柄じゃないじゃん。」
ラナはいつでもこの口調だ。友達以上の間柄のスケロクに対しても、それは変わらない。
「長く生きておりますゆえ、このような話し方がしっくり来るのです」
ラナは見た目は10歳程度。しかし、実際は200年以上生きているルビーアイ。その見た目と口調のギャップに驚く人も多い。
「まあいいや。寝よ寝よ。明日も早いし」


「ちょ〜っと待ったぁ!」
次の日の朝にザイルの家を後にして、ヤクモ高原へと向かったスケロク達の前に、風変わりな格好をした子供が突然現れた。
「キミたちの身包みもらってあげるよ♪あ、あとそっちの子は丸ごと・・・」
子供は、いっちょまえに赤面していた。
「はいはい。坊やいい子だからあっち行っててね」
スケロクの言葉にムッとした子供は、素早く近くの木の上に飛び乗った。
「子供扱いするなー!怒ったぞー!!それにオイラにはチコって立派な名前があるんだー!!」
子供とは思えない身のこなしで、ニュニョは木々の間を飛び回る。
「この子・・・ミュータントだ!ていうか、この子がザイルさんの言っていた、いたずら好きのミュータントか?」
超人的な体力や精神力を持つ種族、ミュータント。しかし異様な風貌を持つ者が多い。チコも足が異様に発達している。しかし、これはまだマシな方だという。
「うおおおー目が回るぅ」
翻弄されっ放しのスケロク。ラナもチコの動きを追うので精一杯だ。
「そうか!ホラ、アレだ、心眼だ?そう!目を閉じて・・・相手の動きを心の眼で・・・ロックオン!!そこだ!!」
スケロクの鉄拳が炸裂する。しかし、炸裂したのはチコにではなくラナにだった。
「ううっ・・・うわぁぁぁぁぁん!!」
殴られたラナは泣き出した。しかも、やたらと子供っぽい泣き方だった。普段の口調からは、とても想像できない。
(ううっ、何かものすごくか、かわいいぞ!そういえば、ラナってこんな泣き方するんだ。初めてみたぞ?しばらくこのままでいたいぞ!でも殴ったのは俺だし、どうすればいいんだぁ!?)
スケロクは、赤面しながら慌てふためいている。動きを止めたチコも、横で赤面している。実に馬鹿っぽい光景だ。
「スケロク様、スケロク様ぁ!」
ラナがスケロクの胸に飛びついて泣きじゃくる。なぜ、ラナが自分を殴ったスケロクに飛びついて泣くのか、チコは理解に苦しんでいた。
「わははは、坊やとは年季が違うのさー」
いくらミュータントとはいえ、子供相手にスケロクも大人げない。


スケロクとラナがイチャイチャしているのを見て呆然としているその時、チコの胸に、矢が突き刺さった。
「うぎゃあああぁぁぁぁぁぁ・・・あ?」
その矢は、先が吸盤のオモチャの矢だった。
チコの視線の先に、耳の長さが中途半端なのが特徴の、半ドリアードの男だか女だかわからない人物が立っている。
さらに別の方向からムチが飛んできて、チコの足に絡みついた。
「なんなんだよ〜〜」
チコの悲鳴と共に、攻撃した人物二人が近づいてきた。
「そこ!何やってる!こんな真っ昼間からアツアツなんてうらやましいんだ〜〜!」
ムチを持っている方は、明らかに女性とわかる。『伝説の冒険家』を彷彿とさせるいでたちをしている。
「オイラは何て不幸なんだぁ!もうどうにでもしてくれぇ!」
チコは地面にあぐらをかいて、天を仰いで叫んだ。
「んじゃ、お言葉に甘えて。サイコバインド!!」
いわゆる金縛りの術を、スケロクがチコにかける。
そして、すかさず半ドリアードの人物が質問をする。
「ミュータントなら知っていると思うんだが・・・『堕ちた卵』を知らないか?」
「あー、『おちたま』ね〜。確かにミュータントの伝説の一品だけど。何でも今はシュリ大統領が持っているらしいよ」
堕ちた卵、ミュータントに伝わる伝説の物体で、ある人物がそれを手にすると、世界が動くと言われている。
「シュリが・・・スケロクシティだな」
「君たちもスケロクシティに行くの?」
スケロクが、我に返ったように声をかける。
「お〜。アツアツ君、キミもスケロクシティに用事なんだね〜。まあ、あのくらいの大都市なら、白馬のアニキもいるかもね〜〜〜一緒に行こ〜〜」
冒険家風の女性は、アニキという言葉とともに、祈るように手を合わせてんで、目をキラキラさせている。
「そうそう、アタシはチヨ子。南の国から白馬のアニキを求めて世界を駆け巡る冒険家さー!」
チヨ子と名乗った女性は、妙に馴れ馴れしい口調だ。
「そして私はヴァ・・・」
「ヴァッさん!」
半ドリアードの人物が名乗ろうとした時、横からチヨ子が、勝手につけたニックネームをスケロクに教える。
「それ最悪」
すかさず、ヴァッさんがツッコミを入れる。漫才コンビでもやっていけそうな息の合いかただ。
「あ、アタシ言っとくけど23歳だから」
チヨ子が、親切にも年齢まで教えてくれる。
「実年齢が欠けたらじゃ・・・うっ!ごはぁっ!!」
何か言いかけたヴァッさんに、チヨ子の肘打ちが、みぞおちに炸裂する。
「ええっと、チヨ子さんにヴァッさんですね?俺はスケロク。一応人間・・・なのかな?」
ラナに血を吸われてルビーアイ化が進んでいるスケロクは、自信なさげな自己紹介だ。
「わたくしは、ラナと申します。スケロク様共々、よろしくお願いします」
いつの間にか泣き止んだラナは、いつもどおりの丁寧な口調で挨拶をする。

「四人だ〜!二人よりもずっと心強いぞ!!」
「チヨ子様とヴァッ様と、スケロク様をお守りいたします!」
「ウォーーアタシのアニキーー!!愛がアタシを冒険へと誘うのさ〜〜〜!!」
「おちたま、おちたま〜♪」
それぞれの思いを胸に、一向は進んでいく。



--その日の夕方--


「んあーーー!オイラはどうなるんさ〜〜〜〜〜!!」
金縛りが解けずに、動けないままのチコの絶叫が、夕焼けの目に染みるヤクモの地にこだましたという・・・

(Continue)

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