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第3話 ドリアードの森 〜伝説の凶悪食い逃げ犯〜 ============================================================= ヤクモ地方中央部に位置するドリアードの森。名前の通り、ドリアード達が住んでいる。 現在は、シュリ大統領の政策の影響もあり、ひっそりと暮らすことを余儀なくされている。 「ヴァッさん、半ドリアードなのにいいの?」 半ドリアードは、人間にもドリアードにも嫌われる傾向にある。しかしヴァッさんは例外だったと、本人も言っている。 「なら、なんでドリアードの森にいきたがらないの?」 スケロクの疑問も当然だった。なぜヴァッさんが、ドリアードの森での静かな生活を捨ててまで旅をしているのか、実のとことチヨ子も知らないという。 「『おちたま』」は、ある人物の手に渡ると世界を破滅へと導くという。そんなものは私が持っておくに限るだろう?」 『おちたま』とは、大戦の遺物といわれ、太陽の異常活動とも関係があったといわれている。 ヴァッさんの『おちたま』へのこだわりは大きい。しかし、おちたまの伝説は、ミュータント以外の者は、ほとんどの者が単なる迷信だと思っている。単なる収集癖だと、チヨ子は思っているようだ。 そんなこんなで話しているうちに、スケロク一行は、ドリアードの集落にたどり着いた。 「おお、ヴァッさんではないか!」 ヴァッさんをみるなり、集落の門番が話し掛けてくる。 「・・・」 ヴァッさんは沈黙を守ったまま、集落の中へとスケロク達を案内する。 「ヴァッさん!」 「ヴァッさんじゃないか!今までどこへ行ってたんだ!?」 「ヴァッさ〜ん!ひさしぶり〜!!」 集落のドリアード達は、皆ヴァッさんヴァッさん連呼する。 「わかった?」 ヴァッさんは、顔を両手で覆いながら、スケロク達に問い掛ける。 スケロク達は無言でうなずく。 嫌々ながらヴァッさんがドリアードの森に立ち寄ったのは、おちたまの話を、ドリアードの女王ブリジッドに聞くためだった。 「よくぞ戻ってきました。ヴァッさん」 ブリジッドの穏やかな物腰は、人間を見下しているというドリアードの女王とは思えない。 「おちたまの伝説は、迷信などではありません。あれは危険な存在です。近づいてはいけません」 ブリジッドの顔は険しくなる。そして、なぜかスケロクとラナの方に顔が向いていた。 「『超越者』の伝説をご存知ですね?」 ラナの顔が強張る。ブリジッドとラナは、何かを知っている様だ。 だが、それ以上の言葉は交わさず、一行はブリジッドの元を後にする。 「ラナ、どうしたんだ?」 ラナの表情の変化を、スケロクは見逃さなかった。 「お気になさらないでください。何があっても、スケロク様はわたくしが守ってみせますから。でも。おちたまにだけは近寄りたくないのです。あれは本当に危険な存在なのです」 ラナは、おちたまの秘密に気が付いているようだった。しかし、スケロクには何が危険なのか全くわからない。 「大丈夫さー!いざとなったらアタシもいるからね〜!!世界を股にかける冒険家を甘くみちゃ〜ダメだヨ〜!!」 チヨ子はいつでも明るい。 「遅かれ早かれ・・・スケロク様とおちたまは、めぐり会うことになりそうですね・・・でも、わたくしが命に代えてもスケロク様をお守りするのです」 ラナは、スケロク達に聞こえるか聞こえないか位の小さな声でつぶやいた。 「お腹すいた〜!!何か食べようよ〜〜!!」 チヨ子の号令で、一行は昼食を取ることにした。 『お食事処「えるふ」』---かつてヴァッさんの行きつけの店だった食堂だという。 「ここのキムチ牛丼は絶品なんだ・・・」 ヴァッさんを先頭に、店ののれんをくぐった一行が見たものは・・・ そこには、山と積まれたキムチ牛丼特盛りの皿と、褐色の肌をしたダークドリアードの女性の姿があった。 「こ、この女は・・・」 スケロクに衝撃が走った。 その女性は、伝説の賞金稼ぎ、プリシラだった。 プリシラは、5年前に、居酒屋「勇者」で、スケロクの目を盗んで食い逃げをした経緯があった。 それ以来、スケロクはプリシラの顔を忘れることはなかったという。 「ふう、本当にここのキムチ牛丼は美味いね〜。さて・・・金が無くなっちゃうね・・・?お!?」 プリシラが、ラナの方を向く。 「金の元はっけ〜ん!!」 プリシラがラナに近寄って声をかける。 「ワタシと一緒に来てもらうよ〜〜」 ラナの腕を引っ張り、強引に連れていこうとする。 しかし、その後ろには、いつになく燃えているスケロクの姿があった。 「プリシラ!俺と勝負しろ!!あの時の恨み、ここで晴らさせてもらう!!」 なにせ食い逃げしたときの食べた物の金額は1000Sを超える。スケロクの店は、その食い逃げ事件のために、その月は大赤字だった。 「誰?アンタ」 プリシラは食い逃げをしょっちゅうしているらしく、スケロクの店も、その中のひとつにすぎなかったようで、全く覚えていなかった。 「ええい!許さん!!」 スケロクがプリシラに斬りかかる。紙一重でプリシラはスケロクの攻撃をかわしてみせた。 「私とやる気??私はコレを持っているのよ?」 そう言うとプリシラは、手帳のようなものをスケロクに差し出した。 『スケロク共和国政府発行・殺しのライセンス』 「私の邪魔をする奴は、合法的に殺せるってわけよ。それでもやる気?大人しくその娘を渡してくれるってのなら、この場は見逃してあげるけど?こないだデーモンが帰ってこないのを見ると、アンタなかなかやりそうだしねェ。手加減しないよ?」 「・・・ラナを狙っているのは政府なのか?」 スケロクの視線は、プリシラの持つ殺しのライセンスに向いていた。 「え!?何でそれを知ってるの!?」 プリシラが、ラナを狙っているのが政府だと知られて、慌てふためいている。 「・・・」 一行はあきれ果てている。 「ええい!バレたら仕方ない!そう、シュリ大統領に、その娘を連れてくるように依頼されたのさー!!」 プリシラは開き直った。開き直った時、大きな力を出すタイプのようだ。 「お前、北斗七星の横に輝く星を見たことがあるな?どうやら、俺とお前は戦う宿命にあったようだ。俺は居酒屋店主として、お前を倒さなければいかんのだぁ!!」 スケロクの瞳が輝く。それは人間のものではなかった。ラナに血を吸われ続け、ルビーアイ化している者の証であり、スケロクの本気の証でもあった。 先手を取ったのはスケロクだった。 大きく振りかぶって斬りかかるが、プリシラは軽々とかわす。しかし、攻撃をかわしてプリシラが油断したその瞬間に、スケロクはサイコキネシスで作り出したエネルギーの塊をプリシラの腹に叩き込む。 「ぐはっ!」 プリシラはスケロクの攻撃を食らいながらも、剣をスケロクに向ける。 剣は炎を帯びていた。スケロクは間一髪で致命傷をさけるが、炎がスケロクの体に当たり、スケロクは飛びのく。 「サイコキネシスで作ったエネルギーを、武器に流し込むのか!」 スケロクがひるんだ隙に、今度はプリシラが突っ込んでくる。 「食らいな!地獄の片道切符!!」 どす黒いエネルギーを剣に込めて、スケロクに剣を刺す。 スケロクの腹から、血が噴出す。 「なるほど、こうか」 スケロクが剣にエネルギーを込め、プリシラの腹に刺す。 スケロクは、自らの体に超能力エネルギーを込めて、プリシラの剣に込められたエネルギーを中和してガードしていた。プリシラが刺した剣も、急所よりも全然前で止まっていた。 「く・・・油断した!娘を連れてくどころじゃないね。今度は逃がさないよ!!」 深手を負ったプリシラは、体を引きずりながら逃げていく。 「待てー」 チヨ子たちがプリシラを追いかけようとした時、突然黒い影が現れ、人の形になった。 「おっと、今ヤツを死なすわけにはいかんのでな。この先に行くというのなら・・・」 男はチヨ子にクナイを3本続けて投げる。 チヨ子は手首の動作だけでムチを繰り出し、クナイを叩き落すと同時に、男に攻撃する。 男がジャンプしてムチをかわすと、チヨ子は手首の返しだけでムチを上に飛ばし、男の手に絡めた。 「バカめ!」 男がムチに向かって力を込めると、ムチに波紋のような物が伝わって、チヨ子に向かって襲いかかる。 「バカはそっちさー!!」 チヨ子が念じると、波紋は逆に男に向かって跳ね返って行った。 「ん」 男は方膝をついて、息を整える。 男の後ろに、体格の良い男が現れた。 「この女、かなり出来るぞ。お前こそ油断するな、オズマ」 オズマと呼ばれた男は、ゆっくりとイルの前に出て、チヨ子に向かって歩く。 「俺の力を知ってるアンタに、そんなこと言われるとはなぁ」 チヨ子がムチを放つが、オズマの手前でチヨ子のムチは止まる。 オズマが力をこめて手をかざすと、横にあった岩が浮き上がり、チヨ子に飛んでいく。 チヨ子はよけるが、よけても岩は追いかけてくる。 鍛錬を重ねた者でも、サイコキネシスによって動かせる物には限界がある。 重さのない空気の配列を動かし、エネルギーと化して戦いに利用するのが普通で、大きな物体を動かして戦ったり、攻撃をサイコキネシスによって防御する者は少ない。 オズマも重い岩を動かし続けて息が上がっている。 しかし、岩をよけ続けていたチヨ子も、その足が限界に近づいていた。 「うあっ!!」 チヨ子の脇腹に岩が激突し、チヨ子は崩れ落ちる。 オズマはチヨ子に馬乗りになり、殴りかかろうと腕を振り上げる。 その瞬間、オズマの左腕が吹き飛んだ。 「ぐぅああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」 オズマが悲鳴を上げ、のた打ち回る。 「レディ相手にマウントポジションとは、関心できないなぁ?」 そこには、ガタイのいい二本の剣を持った男が立っていた。 「あ、じゃあお前がヤられたい?」 「痛い!痛い!痛い〜!!」 男は涙目になって、剣をオズマに突き刺す。オズマはビックリして、イルの所まで逃げる。 「むがががが!許さ〜ん!!」 男は怒ってオズマに追い討ちをかけるが、イルとオズマは近くの木の上に飛び上がる。 「その太刀さばき、イナリ二刀流か!?・・・まあいい。時間稼ぎはできたからな。命拾いしたな。女」 ヴァッさんが矢を放つが、矢が二人の場所まで飛んだ時には、二人はその場から消えていた。 「大丈夫かい?」 男がチヨ子に近づく。 「ぷっ・・・くくっ・・・」 スケロクが、笑いをこらえきれない。男の顔は、オズマに殴られてボコボコになっていたからだった。 しかしチヨ子は、そんなことは全く気になっていないらしく、男に魅入っている。 「俺の名はリ・・・うっ、ゴホゴホッ!・・・まあみんなのアニキを目指す者さ。アニキとでも呼んでくれ」 アニキと名乗った男の歯がキラリと光る。 「ああ・・・白馬のアニキ・・・」 チヨ子はアニキに見とれっ放しだ。 「俺はスケロク、彼女はラナ、で、あれがヴァッさん」 「アタシはチヨ子・・・アニキって呼んでいいんですね?」チヨ子は夢心地だ。 「キムチ牛丼食べようぜ。傷の手当てもしないと。今日は俺がおごるよ」 「おお〜〜気前いい!!」 その後スケロクがキムチ牛丼特盛17人前を食べたが、アニキは平気で支払ってみせた。 「すご〜い!なんでそんなにお金持ってるの〜!?」 チヨ子のキラキラとした眼差しに、アニキは答えた。 「アニキを目指しているからな。アニキたるもの、備えは怠らないのが鉄則なんだ」 アニキは、どことなく高貴な雰囲気がしないでもない。 しかし、ガタイの良さとその口調から、その雰囲気もあっという間に消されてしまう。 「スケロク共和国・・・思った以上にヤバイ状態だな・・・」 アニキが何事かつぶやく。 「どしたんすか?」 「あ、いや、さっきはちょっとヤバかったな〜ってな」 スケロクが反応したが、アニキはさらりとかわす。 「ああ・・・アタシの白馬のアニキ・・・」 チヨ子は、勝手に恋の予感に浸っていた。 (Continue) ============================================================= | BACK || NEXT | | TOP | |