レジェンド・オブ・スケロク2 エピソード3

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第5話 再開−そして苦悩

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普段は落ち着いたたたずまいを見せるテンバーの街も、年に二度行われる武術大会の時は、お祭りムードに包まれる。
「最強のヤツは誰なのか−?」テンバーの住人はこれを決める時を楽しみに生きている。

武術大会会場には、いかついファイター風の男から、超能力者風の女性まで、色々な人物が集まっていた。

「では、これより大896回秋季テンバー武術大会の開会式を行います」
大会の実行委員会によって。大会の進め方などが説明された。
1日目は予選8ブロック、5回戦を行い1位と2位のチームが、2日目に行われる本選に進めるという。予選はチーム戦ではなく、代表者を1名選んでの代表戦で、代表は試合の度に変えてもいいということであった。
「そうなると、代表をどこで誰にするかは結構重要だな・・・」
スケロクが考えた案は、最初はアニキかチヨ子が行けるところまでいって、限界が来たら、残った誰かが残りの試合を戦うという案だった。
「1回戦からいきなり強いチームと当たらないとも限らないから、その方法でいいんじゃないか?」
アニキも、その案に同意した。
「おーし!じゃあ頑張ろー!!」
チヨ子の号令で、スケロクチームのボルテージは最高潮に達した。


会場の隅で、エミーナチームがなにやら話していた。
「セレナ、任せるわ」
「・・・わかった」
セレナは冷めた顔で、エミーナたちの前から姿を消した。
「なーによー!無愛想なんだから〜!!」
ルシーダが、あかんべ〜のポーズをセレナに向ける。
「ルシーダ、ルビーアイのセレナが我々の側にいるだけで大きな力になるんだ。それにセレナの恐ろしさは私たちがよく知っているだろう」
「そりゃあ、そうだけど・・・」
ルシーダは、煮え切らないような顔を見せる。
ルビーアイ-本来政府に差別されている魔族に属する種族。永遠に近い長命と、強力なサイキック能力を持っている。さらに人間の血を吸って生きるため、人間からは羨ましがられ、疎んじられてきた種族。希少種族といわれ、人が目にすることは少ない。永遠の命を手にするために、ルビーアイに血を吸われることを望む者も少なくない。
そのルビーアイであるセレナが、なぜ政府の組織に属しているのか--彼女の思惑が政府の思惑と交錯していると思われるが、人間を見下す存在であるルビーアイであるセレナにとって、人間の下につくのは苦痛であるはずだ。ラナの様な存在の方が、ルビーアイとしては珍しい部類に入る。


一回戦。スケロクチームの相手は、前回大会で本選に進出しているオルバンチームだった。
スケロクチーム代表者、アニキ。オルバンチームの代表者、イマンドラ。
「代表はオルバンじゃないのか?ナメられたな」
スケロクが舌打ちする。
「こう見えても俺は頭脳派なんだぞ〜!アナライズしてやる!!」
スケロクが取り出したのはハンドヘルドコンピューターだった。コンピューターについたカメラを二人に向ける。
コンピューターがたたき出したバトルレベルは、アニキが19、イマンドラが11。
「アニキー!敵じゃね〜!やっちまえ〜!!」
オルバンを出さなかったせいか、スケロクは妙にむきになっている。
「おーう!いいとこ見せるぜ!」
アニキは高笑いする。
「ふん、前回本選進出のオルバンチームをナメるな!」
試合開始の合図とともに、イマンドラが斧を大きく振りかぶる。
アニキはそれを軽々と2本の剣で抑えると、イマンドラの斧を大きく弾いた。
斧が場外に大きく飛んでいった。オロオロするイマンドラに、アニキは剣をつきつける。
「ま、まいった!」
イマンドラは情けない顔をして試合場を後にする。
「ざま〜みろ〜!!」
呆然とするオルバンを見て、スケロクが吼える。
「わ〜い!この調子でいこー!次はアタシがいこーか?」
チヨ子はいつでもハイテンションだ。
「わたくしも・・・一度くらいなら」
ラナもワクワクしている。まんざらではなさそうだ。スケロクチームは、今まさに一丸となった。


2回戦、3回戦、4回戦と楽勝で突破。軽々と本選進出を決めた。そして5回戦の相手となる、4回戦の第2試合で、ざわめきがおきている。
「おい!あの娘すごいぞ!」
ラナはたまたまその場にいなかったので見なかったが、会場に立っていたのはルビーアイの少女、セレナだった。
「3回戦まで全部一撃で相手を倒しているんだ!これから4回戦だよ」
試合が始まると同時に、セレナの爪が伸びて相手の腹を貫く。相手は血しぶきを上げて倒れた。
「担架だ!急げ!!」
スケロクはセレナをアナライズした。バトルレベル20。アニキよりも上だった。
セレナは無表情のまま会場を降りる。
「殺してしまっては反則だ。気をつけなさいよ」
エミーナがセレナに声をかける。「大丈夫。死なない程度にしてあるから」
セレナの声は冷淡だ。
ラナがスケロク達の場所に戻ってきた。
「次はわたくしがいってもいいですか?」
ラナは珍しく興奮している様で、問答無用で試合に出たいといった感じで、代表者申告を済ませてしまった。
「今度の相手は今までとは格が違うぞ。まあ負けても本選に出れるから気楽に行こう。いざとなったら降参するんだ。さっきの相手はヤバかったからな」
いよいよ5回戦が始まる。
「あ、そうそう」
スケロクがもうひと声かける。
「相手の娘、ルビーアイだぞ」
「えっ・・・?」
ラナが驚きの表情を見せる。
そして試合場に上がったラナが相手を見ると、その表情は凍りついた。
「セ、セレナ姉さま・・・!?」



−あの娘はラナの姉?−




スケロクは、ラナが天涯孤独の身だと聞いていたので、驚きを隠せないでいる。
ルビーアイは希少種族だけに、個人同士の繋がりは強い。さらに姉妹ともなれば、その絆は相当に深いものと思われる。
後には、不敵な笑みを浮かべたイルがいた。イルはそのまま会場の人ごみの中に姿を消していった。
「こいつら、政府の組織の連中だ!」
スケロクがラナに声をかける。
「そんな・・・どうして、姉さまが政府に・・・?」
ラナの驚きと焦りの表情とは対照的に、セレナは無表情だ。
「ひさしぶりね。ラナ」
セレナはそう言うと、スケロクの方に顔を向ける。
「そう、彼が・・・」
セレナはスケロクを見てつぶやく。
「姉さまのやりたい事は見当がつきます・・・しかし、しかし何故政府に!?」
ラナの顔は強張る。
「手段を選んでいる場合ではない・・・ラナ、あなたには分からないでしょうね。私の気持ちは」
セレナは珍しく表情を険しくする。
「しかし、今みつけたわ。『彼』を!」
鋭い眼光でセレナはスケロクを睨みつける。
「スケロク様は、わたくしが命に代えてもお守りすると誓ったのです!」


−俺が何だっていうんだ?−



スケロクは、ラナとセレナの言うことの意味がわからない。一体自分がいつ何をしたのか。自分に何があるのか。全くわからない。
「ラナ!降参した方がいい!!」
スケロクは叫んだ。前の試合でセレナの力を見ているスケロクは、ラナに降参を促す。
「わたくしは、逃げるわけにはいかないのです!」
ラナの様子がいつもと違う。
試合開始の合図とともに、セレナが呪文を詠唱する。呪文とは、超能力を発動させる際に集中力を高めるために用いるもので、同じ超能力を発動する場合でも、人によって呪文の長さなどは違う。セレナのそれは驚異的に速かった。
しかし、ラナもそれに劣らない速さで呪文を詠唱していた。
次の瞬間、セレナの体から巨大な炎が。ラナの体からは竜巻が繰り出された。
しかしセレナの炎の方が圧倒的に強く、ラナは吹き飛ばされた。
ラナは一回転すると地面に膝をつき、氷を発生させる。
セレナに命中するが、全く効いた様子はなく、すぐに爪を伸ばしてラナに斬りかかる。
ラナも爪で応戦するが、セレナの強烈な攻めに防戦一方だ。
一瞬の隙を突いて、セレナの爪がラナの腹に命中する。そして力の抜けたラナの全身を、セレナの爪が切り刻む。
「うあああああああっ!」
ラナの全身から、血しぶきが上がる。
力の差が出た勝負だった。
「せいぜい彼を大事にすることね。本選でまた会いましょう」
元の冷淡な表情に戻ったセレナは、会場を後にする。

「まただ!担架だ!」
大会の係員が駆けつけるが、スケロクはそれを止める。
「大丈夫。俺が何とかするから」
スケロクはラナを抱きかかえて、宿へと向かった。

「アニキ、チヨ子さん。正直あの時の試合に出たのがラナで良かった。アニキとチヨ子さんでも同じ結果だったでしょう。でも、ラナならこういう風に・・・」
スケロクは、ラナをもう一度抱きかかえると、口を自分の首筋にあてる。
「さ、俺の血を吸うんだ」
ラナの牙がスケロクの血を吸う。
「スケロク様の血・・・あったかい・・・」
ラナの傷がウソの様に消えていく。
スケロクの血を吸ったラナは、瞳の輝きが以前にも増している。
「どうして・・・どうして姉さまが・・・」
ラナはセレナが政府の組織に属しているのが信じられないようだ。
「ラナ、やっぱり俺に何か隠しているな。隠し事は無しって言ったじゃないか」
復活したラナに、スケロクが聞く。
「すみません・・・」
「あの娘は何で俺の事を知っている!?一体俺は何なんだ!?」
セレナはスケロクの事を知っていた。ラナもスケロクの事になると必死になる。何が彼女達をそうさせるのか、スケロクには全くわからなかった。
「時が来ればわかります。それよりも、今は姉さまと政府を止めなくては。政府の狙いは非常に危険です。そして、スケロク様も運命の渦に巻き込まれてしまうかもしれません−」

スケロクは、自分に課せられた、時を越えた宿命をまだ知らない・・・


(Continue)

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