レジェンド・オブ・スケロク2 エピソード3
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第7話 死線二人のルビーアイ
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武術大会は決勝が、佳境に入ろうとしていた。
スケロク・チームとエミーナ・チーム、互いに準決勝で昨期の優勝、準優勝チームを倒し、大番狂わせを起こしての決勝進出だ。
決勝戦は一進一退の攻防が続き、どうしても決着がつかずに、異例の代表戦へと突入しようとしていた。

そして、舞台の上には、ラナとセレナがいた。

「姉さま・・・」
ラナは困惑の色を隠せない。200年ぶりに再開した姉が、やさしかった姉が、悪政を敷いている政府に手を貸している。
「今度は手加減無しよ。ラナ」
試合開始の合図とともに、セレナの瞳の輝きが変わる。
「ラナ・・・ルビーアイの瞳の秘密を知っている・・・?必ずしもルビーアイの瞳が赤いと思わないことよ!」
セレナの瞳の色が紫に変わっていく。それと同時に、セレナの強大な意思の力が膨張していく。
「スケロク様のために生きる・・・わたくしは、そう決めたのです!」
ラナの心臓の鼓動が早くなる。ラナの心の中で、何かが切れたようだった。
ラナの瞳も、紫色に変色しはじめた。
「まさか!」
セレナの顔に、初めて焦りの色が見えた。
「ラナまで『アメジスト・アイ』だというの!?」
ラナの力が、セレナのそれを超える程に膨張していく。
アメジスト・アイ。ルビーアイの中でもごく少数の者だけが存在を知るという、伝説のルビーアイの力。ルビーアイの女神マリアより受け継がれてきたといわれる力。セレナはその力の持ち主だった。そして、ラナも。
「貴方がスケロクのために生きる?よく言ったものね!過去に貴方がしたこと、忘れたとは言わせない!」
絶叫とともに、セレナの力が解放される。
二人の髪が逆立つ。互いの『気』がぶつかり合う。二人は微動だにしていないが、すでに戦いは始まっていた。

「そう、わたくしのした事は、許されることではないのです。だからこそ、わたくしはスケロク様のため・・・スケロク様の礎となり生きる事を選んだのです!」
ラナの力は臨海に達しようとしていた。
「ラナが純正アメジスト・アイだというの・・・?」
セレナは、ラナの力に明らかに押されている。
「でも、私は負けない!あの時の事を、一生忘れない!」
セレナは、全ての力を解放して、ラナに突っ込んだ。しかし、ラナの強大な意思の前には無駄だった。
そして、ラナの勝利が決まった。
「ぐふっ・・・アメジスト・アイの力さえあれば・・・超越者に勝つ・・・こともできると・・・思ったのに・・・ラナまでアメジスト・アイだなんて・・・私には・・・超越者の力はない・・・この手だけは使いたくなかった・・・私の愛は・・・受け入れてもらえないの?手に入らないのなら、いっそ・・・」
セレナが、何か呪文のようなものを唱える。
そして、卵型の物体を呼び寄せた。
「あれはおちたま!?」
ヴァッさんが叫ぶ。
「政府に力を貸していたのも、おちたまを手に入れるためだけ!これさえあれば、政府に用はないわ!」
セレナは、さらに呪文を唱える。

「200年の呪いを、今ここに解き放つ!アル・アリエ・アエラ・アセイム!」
スケロクを、光の渦が包み込む。そして、スケロクの脳裏に憎しみが浮かぶ。
 

どす黒い記憶。
俺は、全てを憎んでいた。
全てを無に還したいと思っていた。
なぜ?
なぜだろう。
思い出せない。
ラナが俺の体を貫いた。
セレナの死体が横たわっていた。
俺も死んだ。はずだった。
じゃあ、なぜ今俺はここにいる?
わからない。
わからない。
わからない。
 

スケロクが気を取り戻した時には、スケロクの剣がラナを貫いていた。
「な・・・!?」
スケロクは、自分がラナを刺した事実に困惑している。
「ラナ!」
仲間たちもラナへと駆け寄る。
大丈夫、大丈夫だ。
ぐったりとするラナを、仲間が励ます。
「いえ・・・もう無理です・・・これ・・・わたくしの血・・・ですよね・・・」
ラナの声が、薄く、小さく、か細くなっていく。
「こうなる・・・運命だったのです・・・」
口から血を吐きながら、ラナは言う。
「わたくしは・・・スケロク様に殺されて当然の女です・・・セレナ姉さまの言われる通り、わたくしには償いきれない罪があります・・・だからこそ、スケロク様のために生きると誓ったのです・・・しかし、いずれスケロク様も思い出されるはずです・・・わたくしの罪を・・・その・・・時は・・・わた・・・くしの・・・事・・・忘れて・・・」
ラナは事切れた。
「運命・・・?殺されて当然・・・?」
スケロクの瞳が、涙で濡れる。

「クックック・・・アーッハッハッハ・・・不死身の超越者に与えられた最大の能力、それは不死身の超越者を殺すことができる能力なのよ!」
セレナの笑い声がこだまする。そして、彼女の背後に、機械とも生物ともつかない影が現れた。
「セレナよ、よくやった」
強大な力を体から滲ませるその影は、今度はスケロクに向かって手を差し伸べる。
「我を称えよ。我が名はビスノス。人類に知恵を与えし者、そして超越者を生み出しし者なり」ビスノスと名乗ったそれは、強大な力を誇示するかのように、スケロクに近づく。
「超越者が超越者を殺すことができるのは、この娘、ラナのようなイレギュラーな、不要な超越者の存在を抹消するためなのだ」「ラナが、不要な存在だって・・・?」

「人類は間違った方向に進んでしまった。間違いは正さねばならない。さあ、私たちと来るのだ。新しい世界を作ろうではないか」
さらにセレナも、スケロクに手を差し伸べる。
「全ての記憶が戻れば、私たちのこと、そしてラナを殺したことも理解できるわ。そして、私は貴方のパートナーとして、新しい世界のアダムとイヴになるはずだったのよ!ゴロウ!」
セレナは、今までにない穏やかな笑みをたたえている。

「セ、セレナは奴の手先だったのか!?大統領に報告しなければ!」
エミーナとルシーダが、その場から逃げ出す。ビスノスの力を恐れているかのようでもあった。
 

「新しい世界・・・?パートナー・・・?言いたいことはそれだけか・・・!?」
スケロクは、ラナの血に染まった手と体を震わせている。
「俺はラナのために生きる!それだけなんだ!それ以上俺に何をしろっていうんだ!?貴様たちには不要かもしれないが、ラナは俺の全てだ!そもそも、この世に不要な存在なんてあるのか!?」
スケロクの体から、力が溢れ出す。
「クックック・・・神の試練を受け取るがいい。さあ、セレナよ、行くぞ」
ビスノスとセレナは、その場から消えた。
 

「大変なことになりました。セレナは奴の手先です」
エミーナが、シュリ大統領とイルに報告していた。
「や、奴が既に手を下しはじめているというのか!」
イルの表情が強張る。
「慌ててはいけません・・・至急『あのお方』に連絡をとりましょう」
シュリ大統領は、いつもの表情を崩さずに言った。
 

「ネコチカット神!」
ラナの死体を抱き抱えたスケロクが叫ぶ。
「なぜ、こんな酷い仕打ちをする!困った人間を助けてくれないのか!ラナも俺も、なんでこんなにも苦しまなければならないんだ!心臓が!頭が!体が!全てバラバラになりそうなんだ!これが神の人間に対する試練だとでも言うのか!俺は・・・俺は・・・ラナは・・・」
ラナの血を浴びたスケロクは、新しい力に目覚めていた。

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ????????!!」
スケロクの身体から、全てが、解放された。

そして、人類の歴史は終わった。
 

(Continue)

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