第8話 罪と罰
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地獄
遠い、気の遠くなるような遠い、遥かな場所に、そこはあった。
決して生者の入ることのできないはずの世界。
しかし、今ここに一人の生者が紛れ込んでいた。
「・・・俺はどうしたんだ?ラナが死んで・・・俺はショックで・・・何が起きたんだ?」
スケロクは、自分が地獄へとやってきた事に、気がついていなかった。
「ようこそ、地獄へ・・・」
スケロクの背後から、神々しい声とともに、猫の姿をした者が現れた。
「!ネコチカット神!?」
スケロクは、それを知っていた。地上で崇拝されている最も有名な神、ネコチカット神。人間なら誰もが知っている存在だったからだ。
「俺は一体どうなったんだ!?そもそも、どうして貴方が地獄に!?」
スケロクは、世界を司る神が地獄にいることに、驚きを隠せない。
「我はビスノスとの戦いに敗れ、地獄へと堕とされた。最早地上では邪神でしかない。そう、200年前のあの時から、我は地上には存在しなかった・・・」
「200年前!?何があったんだ!?」
「そう、お前の前身であるゴロウの時代・・・それは起きた」
スケロクは、ネコチカットの言っていることが、さっぱり理解できていない。
「俺の前身!?」
「ビスノスは、ゴロウを利用して、地上の破壊を企んだ。ビスノスは、自分が人間に知恵を与えた事を後悔していたのだ」
ビスノスは、遥か昔に宇宙から飛来して、人類に知恵を与え、自分たちの都合のいい様に利用しようとしていたというのだ。
「そんな自分の都合で・・・俺たちは生かされ、殺されるっていうのか!?」
スケロクは憤りを隠せない。
「200年前には、ラナによって破滅は回避されたが、今、地上は荒れ果ててしまった。スケロク、おちたまの力によって、お前の中にいたゴロウが復活してしまった。ビスノスは、ゴロウとセレナを使って、世界を破壊しつくした」
「そうだ!ラナ!ラナは!?」
スケロクの目の色が変わる。ラナも死んでいる以上、地獄に来ているはず。スケロクは、そう考えた。
「確かにラナはここへやってきた・・・ラナと共に地上に戻りたいか?」
「もちろん」
スケロクは即答する。
「地上へと戻っても、何も良いことはないかもしれないぞ。荒れ果てた地上は、最早魔界以上に酷いことになっている」
「しかし、人間は滅びていないんだろう!?」
「うむ。今もお前の仲間たちが、ゴロウと戦っている」
チヨ子達は、大破壊から逃れたようだ。そして、今や地上の神となったビスノスに反旗を翻すパルチザンを結成しているという。
「だったらなおのこと戻らないと!ラナのところへ案内してくれ!」
スケロクは仲間たちへの思いから、一層地上へと戻らなければならないことを決意した。
「いいだろう。ラナは地獄の中でも最も深い、タルタロスにいる。長い旅になるぞ」
地獄のあらゆる苦難を乗り越え、スケロクはタルタロスにたどり着いた。
そして、そこにはラナがいた。
「こないでください!」
ラナはスケロクを拒んだ
「なんでだ!どうしてラナがこんなにも苦しむ必要がある!?」
「わたくしは、ここで罰を受けるのです。わたくしは、200年前にゴロウ様を殺しました。愛する人を殺すこと。一生償っても償いきれない罪です」
「あの時お前がゴロウを倒していなければ、世界は破滅していた。人間の醜い部分だけを見てしまったゴロウは、憎しみだけで動いていた。超越者を止めることができたのは超越者だけ。お前以外にゴロウを止めることはできなかったのだ」
ネコチカット神が、ラナを諭す。
「だからこそ・・・罰を受けなくてはならないのです。わたくしたち超越者が存在すること自体が罪なのです」
スケロクは、いつになく穏やかな眼差しで、しかし凛とした口調でラナに語りかける。
「ラナ、言ったよな。俺の為に生きてくれるって。俺も同じだ。俺はラナの為に生きる!誰が何と言おうとそれだけだ!だから、だから。そんなに自分を否定しないでくれ!俺の為に生きることが、罪を償うことになるって言っていたじゃないか!一緒に戻ろう!地上に!」
「スケロク様・・・」
ラナはスケロクにすがりつく。その瞳には涙が溢れていた。
「さて・・・しかしスケロク、お前の身体は今やゴロウのもの。お前が力を取り戻すためには・・・」
ネコチカットは、言うのを一瞬ためらったが、続けて言った。
「我を倒すのだ。我を倒し、神の力を手に入れる。それしかお前に道は残されていない。そして、神の力を手に入れることで、スケロクとラナ、二人にかけられたおちたまの呪いの鎖を打ち破るのだ!」
「おちたまの呪い・・・?」
「そう。なぜスケロク、お前がラナを殺したかわかるか?ラナがゴロウを殺したことに怒りを覚えたセレナが、ゴロウの転生に、ラナが殺され続ける呪いをかけたのだ。これを打ち破る方法はただ一つ。神の力を手に入れ、完全なる不老不死の力を手に入れるのだ。超越者の力とルビーアイの力、そして神の力をお前たちが手に入れれば、それが可能だ」
「私からもお願いします」
後から、魔族の男が現れる。
「貴方は・・・コレチカ!?それに父さん!?」
「久しぶりだな、スケロク」
「どうして父さんとコレチカさんが!?」
「今まで言えなかったが、コレチカと私は兄弟だ。つまりスケロク、私はお前の本当の親ではない」
「色々ありましてね・・・私たちは争っていたのです。でもそれは間違いでした。本当の敵は、ビスノスであることを知るべきでした」
コレチカが、申し訳なさそうに言う。
「シュリ大統領、そしてその背後には私たちの弟、ザエモンがいます。彼らも阻止しなくては。彼らの思想も危険です」
ネコチカット神が、力を解放する。
「さあ、我を倒すのだ!そして、自分たちの手で、世界を動かすのだ!」
どのくらいの時間が経ったのだろう。気の遠くなるほどの時間を経て、スケロクの剣が、ネコチカット神の体を貫いた。
「・・・よくやった・・・これで我が力、お前達のものだ・・・さあ、地上へと戻るのだ」
「俺たちは神になるのか・・・」
まばゆい光がスケロクとラナを包む。
次の瞬間、二人の姿は消えていた。
「私たちの時代は、終わったみたいですね」
「ああ。スケロク達ならやってくれるさ」
コレチカと比麗紋が、二人の旅立ちを見守っていた。
(Continue)
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