第6章「君がいた想い出と 君が忘れた僕(4)」
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「それ程の任務なのですか?!」
そう怒声を上げて目の前の机を力一杯叩いたのはアーヴァインだった。先のローグィン市騒乱でニルヴァーナ機関のARMS部隊を沈黙させたARMS小隊の隊長、その人である。
しかし、今の彼の瞳には戦闘の昂揚感とそれを制御するべき冷静さは欠片もなかった。その瞳に宿っていたのは怒りだった。
彼の叩いた音が室内の至る所まで響き渡る。
音は室内だけに留まらず、ドア越しにデスクワークをしていた人々の視線さえも集めさせていた。
まるで、その音が響き渡るまで待っていたかのように目の前の男は答えた。
抑揚のない、抑えた声ではっきりと肯定してきた。
「……そうだ。ギルティノア――陸軍情報部の呼称だがな。その抹殺は何よりも優先される。それは理解しているだろう?」
そう諭す男は特務遂行群を総括している帝国統合軍参謀長ログナーだった。N計画を推し進める中核を担う一人である。これは帝国軍内部での裏の顔の一つだった。
しかし、極めて高い上官の命令にもアーヴァインは納得出来なかった。
「しかし、そのために市街地で騒乱を起こしていい理由にはなりません!!」
尚も強い語気で迫るアーヴァインに対して、ログナーは手を組んだ。まるで向けられる言葉を受け流しているように。
「ローグィン市での騒乱はどうだ?同じ事だろう?」
「あの場合は明確な『敵』が存在していました。ニルヴァーナ機関という敵が!!しかし、今回は敵などいません!!一般市民を巻き込む……いや、もっと酷い虐殺行為です!!」
アーヴァインの言葉は理に適っていた。
軍隊の戦う相手は原則として、敵なのだ。戦争を仕掛けられた場合でも、仕掛けた場合でもそれは変らない。それ以外の場合、軍隊はその行為を罪に問われる。特務遂行群と言えど――いや、無二の武力を保有するがゆえにその点は犯してはならない領域なのだ。それを犯す事は、テロリストとなんら変らないのだ。
特務遂行群としてのプライドが彼を上官に歯向かわせた。
アーヴァインの荒げる息使いにログナーは沈黙で答えた。そして、立ち上がるとくるりと背を向ける。
その行為が自責の念からくることにログナーは絶望的に感じていた。だが、それでも尚、彼の言葉は『命令』の正当性を主張する。
「敵は存在している。ギルティノアという敵がな。」
「その敵一人のためにこれほどの軍事行動を取ると言うのですか?!戦闘ヘリ3機に、特殊歩兵一個中隊!!カイデリカ市を制圧するつもりですか?!」
(――制圧?違うな。これは駆逐だ。)
武装していない――回転式拳銃とジェラルミンの盾で暴徒を制する機動隊と20mm機関砲に蜂の巣にされるような軟弱な警察用ARMSしかないような一般市街にこれだけの戦力を投入すること事体、駆逐だ。そして――国際社会への影響を考えて下された決定はもっと非情なものだ。無論、下したのは他でもないログナー自身も関与する事なのだが。
アーヴァインの言葉にログナーはため息を付いた。
本当は自身の葛藤への諦めも含まれていたのだろうが。
そして、ログナーは嘆息と共に最後のカードを切る事にした。
言いたくなかった言葉だが、言わざるを得ないようだ。出来ればこの言葉は使いたくはなかったが。
この言葉が持つ意味を軍属――いや、何かに隷属している者ならば抗えない事は身を以って知っているだろう。
「……アーヴァイン少尉。これは命令なのだよ。」
「――どうしても行ってしまうの?」
少女の瞳が潤んだ。その瞳は僅かな光を受けても輝いている。碧色の瞳に涙を今にも零れそうな程溜めている。
「約束したんだ。だから――行かなくちゃならない。」
青年は少女の瞳を見ていた。その綺麗な瞳が好きだからだ。それを理解して胸が切なさで一杯になる。
「生きて返って――来られるの?」
その言葉で少女の瞳から涙が零れた。その涙の軌跡を青年は見逃さなかった。その涙が悪戯に青年の心を掻き毟っているのを彼女は知っているだろうか。いや――知らないだろう。
「俺は絶対に戻ってくるよ。」
青年の脳裏に過ぎったのは少女と過ごした、短いけれど光に満ちていた日々の想い出だった。そして、今この瞬間も刻まれていく。少女との想い出が増えていく。それは嬉しさと同時に切なさでもあった。
「約束は――してくれないのね。」
少女の唇が震えている。涙を拭うその手に触れたいと青年は思った。その細い体を抱き締めたいと思った。
「約束なんてしなくても――俺、知っているから。」
青年は笑みを零した。それは苦笑だったのかもしれない。それが願っても叶わないと分かっていたからだろうか。ただの照れ隠しだったのだろうか。もっと単純に彼女が好きな事を今更ながら、そして何度も理解したという笑みだろうか。
「――え?」
少女は見詰めている。少女の視界に青年は映ってはいない。だが、青年の瞳には確かに少女が映っていた。少女が見詰めている物に青年は正直興味がなかった。いや、興味がないというよりもその少女を見詰めていたかった。この瞬間、この時間だけは誰に咎められるわけもなく、少女を見詰める事が出来たからだ。
「待っていてくれる人がいる事を、俺は知っているから。だから、約束なんてしなくても俺はここに戻ってくるよ。」
――知っている。いや、願っているのかもしれない。少女が自分を同じように愛してくれる事を。それが過ぎた望みであると分かっていても。
そして、抱き合う二人の男女。そして、スクリーンは黒へと染まっていく。そして、流れるエピローグ。少女が小さく息を付いた。その吐息は満足感から出たものだろう事は青年にも理解出来た。だから、青年は微笑みを少女に見えない様に零すとそのエピローグの流れていくスクリーンへと向けた。
点灯される照明。続々と席を立つ観客達。青年が少女の方を向くと、少女も青年の方を向いた。そして、少女――サリーナは満面の笑顔で言った。
「面白かったね。」
青年――クエイドは正直、映画の最後の方をよく見てはいなかったのだが、頷いた。その事にサリーナは満足そうに頷いて、二人は席を立った。
「この『LOVELESS』って映画面白かったね。やっぱり流行っているだけあるなぁ。」
少し遅い昼食を取るために入ったファミレスで、サリーナはさっき見た映画に今も尚浸りきっているようだった。その映画のパンフレットを開き、先ほどまで見ていた映像を頭の中で何回も巻き戻し、再生しているようだった。。
「特にラストシーンなんか、本当に泣いちゃうくらいに。戦場に戻る主人公とヒロインのやり取り――切なくなっちゃうよ。」
彼女の絶賛の言葉にクエイドは笑顔で応える。そんな彼女を見ていると歳よりも幼く思えてくる。
――あ、でもサリーナの歳っていくつだったかな。多分、17,8だと思うんだけど――
「クエイドはどのシーンが一番印象に残った?」
「――え?」
思索の途中で割り込んできたその言葉にクエイドは思わず声を挙げた。それが失策だったと気付いた時にはすでにサリーナの表情は少し翳り始めていた。
「もしかして、あんまり面白くなかった?」
彼女の言葉が終わる前に急いで首を振っている自分に気付く。そんな自分が情けなく思える前に、日常生活では鈍いクエイドの頭脳がフル回転していた。
(こんな事なら、ちゃんと見とけばよかったな。)
後悔ばかりが浮かんできて二時間以上その場で見ていたはずのシーンが一向に思い出せない。ようやく、まともに返せそうな答えが見つかるまでクエイドは心底嫌な汗を掻いた。
「ラストシーン……かな?」
冷静になって考えてみたら信じられないような不手際だ。
サリーナと同じと言っているような物だ。ただ、幸運だったのはサリーナがそれで納得してくれた事だ。
「やっぱりそうだよね!!あー、なんかもう一回見に行きたくなっちゃった。」
サリーナが再び、上機嫌になった事に安堵して、クエイドは小さく息を吐いた。
サリーナの脅迫めいた視線――実際は自分がそう感じているだけで、彼女にそんなつもりは少しもないのだが――から外れてしまえばなんて事はない。いくらでも思い出せた。
(都合のいいときにしか役に立たないなんて、どっかのじいさんと一緒だな。)
自分よりも遥かに力があるくせに、無理難題を問答無用で押し付けてくる獣魔術士の顔が脳裏に過ぎさった。
「でも、何であの主人公は約束しなかったんだろ。約束してあげれば、恋人の不安を少しでも和らげてあげられたのに。」
それを振り払うために呟いた何気ない一言だった。
視界の片隅で見ていた今更なシーンを思い出して呟いた。
その言葉にサリーナが笑ったのに気が付いて、クエイドは視線をサリーナの方へ向けた。
「約束――出来なかった訳じゃないんだよ。約束する必要もないくらいにその恋人の所に戻ってくるのが当たり前だったし、約束する程『特別』な事じゃなかったんだよ。そう主人公が想っている事が嬉しくて、切なくてラストシーンで二人は抱き合ったんじゃないかな。」
彼女は微笑んで、クエイドにそう呟いた。
クエイドは彼女のその笑みがどこか、幼い子供を諭すような笑顔だったので思わず視線を逸らした。気恥ずかしさを感じるよりも少し怒りにも似た感情を抱いていた。
(本当にコロコロ表情が変わるよな。)
怒り――というよりも羞恥だった。
彼女に子供扱いされた様に感じたこと。
それと――自分がまだ知らない彼女の側面を見たことに対して。
どこか夢見心地な彼女の瞳にやはり幼さを感じつつ、クエイドはぼんやりとサリーナの解説を胸中で反芻していた。
クエイドは彼女の映画解説家の様な説明にもいまいち納得出来ていなかった。理解出来ない訳じゃなかったけど、本当に好きならやっぱり約束するべきじゃなかったのかと思わずにはいられなかったからだ。
「――でも、やっぱり約束した方がいいんじゃないのかな?」
そんなクエイドに、サリーナは笑顔を向けて優しく忠告した。
「クエイド君、勉強が足りないね。」
彼女のその言葉にクエイドは苦笑するしかなかった。そんなクエイドの様子に笑いを抑えきれないサリーナ。彼女の笑い声がどこかバツが悪く、そして、何処か心地よかった。
「……こんなにのんびりしていていいのかしら?」
リーサは青い空と流れる雲を見ながら、そう呟いた。
広い草原――まるで緑の絨毯を敷いたように、流れる風が草を波打たせる。その風にリーサの長い金髪が揺れる。
鼻腔を擽る新緑の香りが甘い気だるさを誘ってくる。
心地よい日和ではある。心地よすぎて、罪悪感を覚えてしまうほどに。
「仕方ないですよ。クエイドさんから連絡もありませんし。」
声の方を向くと、ラッグスは草原に仰向けに倒れ、日差しを遮るように本を読んでいた。
「……目、悪くなるよ?」
リーサの忠告にラッグスは短く答えてから、ゆっくりと上半身だけ起こした。その時、ラッグスの手から零れ落ちた本が草の上に転がった。風がその本のページをペラペラと捲っていく。
「クエイドさん、大丈夫かしら……」
あえて、この心地よい空間に水を差した。
そうでもしないとクエイドに対しての罪悪感で胸が押しつぶされてしまいそうだったからだ。
ため息と一緒に吐き出されたその言葉に、ラッグスの本へと伸ばしていた手が止まる。
「……大丈夫ですよ、きっと。」
何の根拠もないその言葉に我ながら陰鬱になる。本を手に取り、それを開く事もなく、手持ち無沙汰を紛らせるように、手の中で遊ばせる。
ラッグス自身、クエイドへの罪悪感を持っていない訳ではなかった。だが、心配した所でどうしようもない事も十分分かっていた。割り切ろうと努力していた時点で、リーサよりも大人だった。だが、完全に割り切れない所が大人――いや、そこまで冷徹になりきれないという表現が正しいだろうか。
クエイドと別れた後――
瓦礫と煤と埃でむせ返るローグィン市市街から脱出し、郊外に停めてあったネロのガンシップによって、リーサ達はレイキャンベルを脱出し、ルドラン連邦ヴァージニア地区へと来る事が出来た。メジルビア洋に面している地区としては決して発展しているわけではない。メジルビア洋から吹き込む偏西風と、暖流の影響で温暖な気候を保っている。ルドラン連邦の南部や中央に広がる砂漠化の影響も少なく、また大都市に付き纏う騒音や公害にも無縁な土地柄である。
その自然の穏やかさは最初、リーサとラッグスの心を穏やかにした。癒しもした。しかし、時間が経つにつれ、残してきたクエイドの事が気になって仕方がなくなってきた。穏やかさが怠慢に、癒しが罪悪に感じるようになっていた。
空気を叩く音にリーサの思索が途切れた。立ち上がると上空に赤いプロペラ機がクルクルと旋回している。
「……ネロですね。」
ラッグスは手を翳して日差しを遮りながら、プロペラ機を見ている。時々、良く磨かれた赤いボディに陽光が反射して指の隙間から瞳の奥へと突き刺さってくる。
「もう!!少しはクエイドさんの事を心配してくれないかしら。」
リーサも同じようにプロペラ機を見ながら、眉を吊り上げて不満を漏らす。その事にラッグスは笑いを留める事が出来ず、声をかみ殺して笑った。それに気付いたリーサが怪訝な表情をすると、ラッグスは一つ咳払いをした。
「ネロは僕達よりも不器用なんですよ。」
ラッグスの言葉の意味が分からずにリーサは不機嫌そうにラッグスを睨む。ラッグスはその視線に耐え切れずに、肩をすくめて見せてから笑みを零して呟く。
「――彼なりの気の紛らわせ方って事ですよ。」
リーサは息を一つ吐いて、視線をプロペラ機から地平へと変えた。草原には風力発電だろう風車がいくつもその羽を回している。そして、小さな赤い屋根の家が見える。ネロの実家という事だ。その隣りにはその家よりも数倍は大きい倉庫のような建物がある。ネロの話ではあの中には未完成の飛空艇があるという事だがまだ見せてもらっていない。
(――気を張っていてもしょうがないか。ネロさんに未完成の飛空艇でも後で見せてもらおうかな。)
リーサは肩から力を抜いて、空に向かって微笑んでみた。
――心配なんていらない。クエイドさんの強さは知ってるでしょ?大丈夫。きっと――大丈夫。
リーサは気分を切り替えてこの平穏を楽しむ事にした。次に来るのはいつか分からない。
クエイドとの再会がまた騒動を巻き起こすと、知らず知らずのうち感じていたせいかもしれない。
クエイドは欠伸をかみ殺して、口元を手で隠した。
暇じゃないと言えば嘘になるんだろうな。
内心でそう呟いて、試着室にいるサリーナをただひたすら待った。
正直、こんなにも時間のかかるものだとは思いもしなかった。クエイドには色違いなだけで、どれもこれも似たような印象しか感じなかったが、サリーナにとっては違うようだった。目を輝かせてあれこれと手にとって見ていた。
それから試着室へ入っていった。
手持ち無沙汰を覚えながら、視線は隈なく周りを見渡している。時々、鋭く光るその視線に気付くものは全く居なかったが。
(……諜報員らしい人間はいない……か。)
そう内心で思いながらも、緊張は一向に途切れない。それはクエイドが諜報員と言うものの本質を理解していないという自覚から来ているのだろう。
一般的に考えられている背広にネクタイなどという諜報員の姿は現在の諜報機関では当てはまらない。ギルド情報部の正社員ならともかく、カードという非正規情報提供者などはほとんど一般市民と変らない。諜報機関の最高峰に位置するIIA、国家公安調査庁に至ってはどのような情報収集を行っているのか全く分からなかった。
クエイドとしては見つからない事を祈るより他に手がなかった。後は、サリーナの側を離れない。これしかなかった。
吐息が漏れる。
必要のないかもしれない緊張感を鬱陶しくも思う。だが、その緊張感を無視出来る程楽観視も出来ない。結局はこの緊張を続けなくてはならなかった。
必要すらない時間が考えたくもない事をクエイドの脳裏を過ぎる。
俺はサリーナの側にいるべきなのか?
何度も考え続けた事だ。
何をいまさらとは思っても……正直、答えは出ていない。いや……無理やり一つの答えにしようとしている。
『俺はサリーナの側にいるべきなんだ』と、その答えに無理やりしようとしている。
その答えにするのに都合の良い状況だってある。
それでもどうしても心の底から彼女の側にいられる事を喜べない。
その理由は俺とサリーナの気持ちなんか、まるで無視して状況が移り変わっていくからなのかもしれない。
そして……サリーナの真意が分からなかった。
(……サリーナ……あんたは……俺の側にいたいのか……?)
聞きたい言葉はいつだって言葉になりはしない。
口に出るのはいつだってどうでもいい言葉だけだ。
「俺は……」
「……クエイド?お前、クエイド・ラグナイトか?」
あまりに突然呼びかけられた事に動揺しながら声をかけてきた人物に振り向いた。
そこに立っていたのは20歳後半の長身の男だった。その顔には見覚えがあった。
「……青葉?」
思わず口に出た言葉に目の前の男――青葉は笑顔で答えた。
「久しぶりだな、クエイド。いつカイデリカ市に?」
刑事とは思えない人懐っこい笑顔で話しかけてくる所は変っていない。
まるで少年のようだが、確か年齢は30歳に近いはず……
しかも180cmを越えるガタイだから、妙な違和感を覚えてしまう。
「最近、な。」
説明すると長くなるし、サリーナや今の自分の状況について話す事は避けたかったので適当に答えた。
「しかし、あんたがここにいる方が変じゃないか?あんたの管轄はフォートコーポルだろ?なんでここに?」
話題を変えたくて聞いた事だったが、青葉はああ、と短くと呟いて苦笑を向ける。その事に眉をひそめていると青葉は頭を掻きながら答えた。
「左遷って奴さ。まぁ、ここも悪くないけどな。首都みたいに殺伐としてないし。」
「……そうか。」
「お前はまだギルド派遣員を続けてんだろ?お前の噂は色々と聞いてるからな。」
その言葉にクエイドは内心苦笑をかみ殺すの必死だった。
ギルド派遣員を辞めようと思っている事。
ろくな噂ではないだろう事。
自分の性格がサリーナと出会ったおかげで変ったとはいっても『殺人人形』なんて陰口を叩かれていたのは最近だ。
……色々な事があった、といまさらながら痛感する。
そんな感傷が青葉にあの事を聞いてしまったのかもしれない。
「青葉……ソフィア……アザゼルは……」
「ゴメン。クエイド、待たせちゃって。」
振り返らなくても、その声がサリーナの声だって分かって自分を叱責した。
よりよって最悪のタイミングだった。
サリーナにアザゼルの事を聞かれたら……?
……聞かれてもいいんじゃないのか?どうして、隠す必要があるんだ?
クエイドはゆっくりとサリーナの方へ向き直った。そして、サリーナの表情に視点が知らず知らず注視していた。
――彼女の表情はいつも変わっていない。そう見えた。
サリーナが青葉の方へ視線を向けた。それに気付いた青葉は肩を竦めるようにして、サインをクエイドに出していた。
「サリーナ。こいつは青葉和哉。こう見えても刑事だ。」
「はじめまして。サリーナ・レイフォンスです。」
サリーナは笑顔でちょこんと頭を下げた。どこか子供っぽい所がサリーナらしいと言えば、らしかった。
「よろしく、サリーナさん。」
青葉はまるで子供を相手にするように笑顔で答えた。二人共どこか子供っぽい所があるので、この二人のちょっとしたやり取りが妙に可笑しかった。
「一緒にお茶でも飲みたい所なんだけど、仕事がまだ残ってるし、クエイドにも悪いから俺はこれで。」
「……変な気を回すなよ。」
クエイドは呆れて呟くが、青葉は含み笑いを零して、そっとクエイドに近寄ってくる。
にやにやと緩んだ表情に嫌な予感めいたものを覚える。
――なんだよ。
訝るクエイドの耳元で青葉が小さく囁く。
「……可愛いじゃん。お前、実は面食いだったんだな。」
声にすら出来ないクエイドの動揺を楽しむようにくつくつと笑いを噛み締めながら、青葉は足早にクエイドから去っていった。去り際にサリーナに向かって手を振っていた。
サリーナは困ったように小さく手を振り返していた。
「青葉さんって、楽しい人だね。」
サリーナが苦笑しながら呟いた。
「ただのお調子者だよ。」
クエイドはどっと疲れが出てきた事を実感した。
(それよりも……)
クエイドはちらりとサリーナの方へ気付かれないように視線を向けた。
サリーナが着ていたのは黒のキャミソールだった。
華奢な彼女が着ると、すごく細く見える。だけど、クエイドには他に気になった事があった。
「サリーナの好きな色って黒?」
「え?何で?」
理由を問われるとクエイドも困ってしまうが、とにかく思った事を口にすることにした。
「それも黒だし……さっき着てたのも黒っぽい色だったし。」
「あ……そうだね。うん……好きなのかな……」
歯切れの悪い答えとどこか憂いを秘めているサリーナの表情が気になった。もう一つ、彼女が好んで黒を選んでいるのも気になった。
気にし過ぎかもしれないが、『黒』という色はある種、負の感情に関する事が多い。
戦闘服に黒が多く取り入れられるのも夜間戦闘に都合良いという理由だけではない。いわゆるマインドセット――精神制御の一種なのだ。黒は唯一、何の色にも惑わされず黒は黒であり続ける。鋼の意思を体現している色なのだ。任務という二文字のために人を殺す――それを割り切るための精神制御。それに黒が相応しいという事を聞いた事がある。
彼女の中の『何か』が黒を好んでいるのではないか。
この明るい少女の片鱗にどす黒い不安めいた物を感じてしまう自分がいた。
(似合ってるとは思うけどな。)
それも正直な感想だった。
「似合わないかな?やっぱり、なんか私にはちょっと大人っぽすぎるかな?」
そう言えば、サリーナは自分が子供っぽい事にコンプレックスを感じてるんだっけ。だから、黒に惹かれるのか。
クエイドは考え過ぎだと割り切る事にした。それに考えてもどうしようもない事だった。
「気に入ったんだろ?似合ってるし、いいと思うよ。」
「うん。ありがとう。クエイドは何か買わないの?」
クエイドは首を振って答えた。
「え〜。クエイドも買おうよ。せっかくだし。ね?」
「でも、俺、あまりそういうの分からないし。いつも、適当に買ってるから……」
クエイドの困った顔にサリーナは笑顔でぽんと手を合わせた。
「だったら、私が選んであげる。クエイド、結構かっこいいから大概の服、似合うと思うよ?」
クエイドは苦笑しながら、分かったというしかなかった。
ルークは苛立っていた。
それもこれもあの突如現われたクエイドとかいう男のせいだった。
あの得体の知れない男に対してサリーナが警戒心を抱いている様子が全く見て取れなかったからだ。今だって、自分に対してサリーナは一つ壁を作っている。でも、あの男にはその壁が全くない。それが意味することに腹が立った。悔しかった。
ルークは軽く――のつもりが思わず強く扉を叩いてしまう。
内心で叱責したが、構わず声を上げた。
「ルークです。入ります。」
ドアを開けるといつものように本が散らかっているその部屋でいつものように店長が本を見ている姿があった。もう日も落ちてきていて、西日も窓から僅かにしか入ってきていない。そんな暗いなかで灯りも付けずに本を読んでいるのだから、目が悪くなるんじゃないかといらない心配をしてしまう程だった。
「……何の用ですか、店長。」
いささかぶっきらぼうな言い方だったかと思うが、媚を売る気も今は起きなかった。
「……君の望むものは何だったかな?」
「は?」
突然、意味不明の事を話し始めたのでルークは思わずすっとんきょうな声をあげてしまった。それでも構わずにサンクスは世間話でもするように語り続けた。
「そうだったな。確か、それがお前の望みだったな。だが、それは望んでも手に入らないな。だったらどうする?」
「あの、何の話ですか?」
ルークは恐る恐る尋ねるが、サンクスはその問いに答えないばかりか視線さえ本から話そうとはしなかった。独り言だけがその暗い部屋を支配していく。
「奪うしかない……そうは思わないか?生来人はその欲望に忠実に生きてきた。自らの食欲を満たすために肉ある物を殺し、それを糧にしてきた。物欲を満たすために盗みを働く物もいる。それさえまだ可愛いものだ。金銭欲のために人が人を殺すことなど毎日のようにある。そして、肉欲。愛が幻想だと気付く瞬間だな。結局は己が欲望を満たしたいだけだ。肉欲、支配欲、性欲……実に人間らしいとは思わないか?」
「……」
ルークはもう言葉を発する気もなくなっていた。思わず、後ずさりそうになっていた。足ががくがくと震え始めている。
「欲しいんだろう?サリーナが?だったら手に入れたらいい。その手段はここにある。彼女を蹂躙すればいい。欲望の赴くままに彼女を弄べ。その力を授けよう。」
「あんた……何、言ってるんだ?」
確かに俺はサリーナの事が好きだ。付き合いたいと本気で思っている。でも、それは無理矢理とか、そういうのじゃない。
「否定するのか?だったら、強い力を持つ者に奪われるだけだ。そう……例えば、クエイド・ラグナイトに。」
クエイド・ラグナイト
その名前は憎むべき名前。憎悪。嫉妬。嫌悪。劣等感。羨望。羞恥。
様々な感情を揺り動かす名前。
「お前が手に入れないのなら、クエイドに奪われるだけだ。サリーナの心も体も。あいつに汚される前にお前が汚せばいい。あの娘の肉体を貪ればいい。罪悪を感じる必要など、どこにもない。クエイドよりも早くお前がやるだけだ。ただ、それだけだ。」
内心、実に上手い勧誘だとカイラス――白竜は思っていた。
この男はクエイド・ラグナイトを憎んでいる。疎ましく思っている。妬ましく思っている。
クエイド・ラグナイトの名前を出せばこの男はその嫉妬の炎を憎悪で猛々しく燃やすことを。
「サリーナを……手に入れる……」
今までのように恐怖のみに支配されていたルークの瞳に別の何かが浮き上がってくる。それが何かを確かめる必要もない事を内心でほくそ笑みながら白竜はさらに手を詰めていく。
「罪悪を感じる必要などない。お前の知っているサリーナは、もういない。心はすでに奪われている。だったら、体を奪え、そして、殺せ。殺せばサリーナは永遠にお前のものだ。」
自分の手に入れている物よりも他人が持っている物の方に興味が移る。それが自分が心の底から欲しているのなら尚更だ。
「殺せばサリーナは俺の物」
その言葉に狂気を含み始めている。
怯えるだけだったその震える口元は、知らず知らずのうちに笑みを形作っていく。人が人であるために必要な理性をかなぐり捨てて、修羅へと変わろうとしている。
「さぁ。力を授けよう。お前はすでに人を超えている。サリーナを殺せ。」
最後の手は詰められた。
ルークは欲望を満たす手段を手に入れた。
白竜はルークという手駒を手に入れた。
二人の口元の引きつった微笑がその事実を満足そうに受け入れている。
それを『満足』と感じる時点で、人が当たり前のように従っている倫理を逸脱している事を認めるように。
「俺は……俺は……サリーナを……サリーナを……」
内側から潰れた音がした。
何かと思ってみてみたら、腹部が不気味な音を立てながら蠢いていた。皮膚が破け、筋肉が隆起し、耐え切れず破れた血管からは血が溢れていた。それが腹部から全身へと広がっていく。
作り変えられている。人を超える何かに。
そう……これは儀式だ。サリーナを手に入れるに相応しい存在になるための。
あいつに……クエイドに手に入れられるくらいなら殺してでも俺が手に入れてやる。
そうだ。そうだ。そうだ。
殺せばいい。殺せばいい。殺せばいい。
笑みが顔に張り付いて離れなかった。
俺は全ての不満・不安から解放された。
結論は一つだ。
サリーナを殺します
「……そう言えば、さっき言ってた『ソフィア』って誰?」
口に含んでいたコーラを噴出しそうになるのを堪えるので必死だった。
炭酸が喉の粘膜をビリビリと痛めつけるその痛みよりも、どう答えたらいいかを考える方が重要だと、勝手に順番を決めていた。
「……あ、それは……うん、と……」
彼女の視線に晒されるのがこんなにも苦痛に思えたのは初めてだった。
彼女の細い指がくるくるとオレンジジュースのストローを回している。その回転と同じくらいに忙しく心が答えをはじき出そうと難解な方程式を解いている。
いつもは明快に言葉を紡ぎ出す口が今は、しどろもどろにどうでもいい言葉にもならない声をあげている。多分、これを狼狽っていうんだろう。
クエイドにも、これが答え方一つで破局的な結末をもたらす事が容易に想像出来たからだ。
(……ソフィア……あんたはいつだって、俺に面倒しかかけないんだな)
失望が限界を超えるとただの喜劇になる事が始めて分かった。
彼女について語るのにもっとも相応しい形容を考え続けた。その間、サリーナの瞳は出来るだけ見なかった。
もしも、彼女の瞳に疑いや悲哀の類が見えたら……見えたとしたら、またどうでもいい事しか言えなくなりそうだったからだ。
「……姉……みたいなもんかな?」
「……お姉さん?」
ストローを回す指が止まった。小さく氷が軋む音が響いた。俺の心の呻き声だ。
「それが一番適切な表現だと思う。」
ようやくサリーナの顔を見る事が出来た。正視した彼女の表情は訝しさで一杯だった。
それで自分の答えが破局に一歩近づいていた事を理解した。
「……本当のお姉さんじゃないの?」
どっと汗が噴出してきた。
まるで昔の彼女の話を蒸し返されている様な……いや、むしろそれと全く同じ状況にクエイドは陥っていた。
「……ああ。でも、どうしてそんな事聞くんだ……?」
サリーナは少し思案したように目を伏せてから、小さく呟いた。
「………から。」
「え?ごめん。聞こえなかった。」
サリーナは瞳をクエイドに向け、少しむっとしてからぶっきらぼうに声を大きくして答えた。
「気になるから。」
……正直、嬉しかった。
どうして、嬉しいって思ったのかはよく分からなかったけど……
自分がサリーナに必要と思われている。
錯覚かもしれないけど、その時はそう思えた。そう聞こえた。
「……私、クエイドの事、全然知らないよね。」
彼女のその声が少し淋しそうだったのが、浮かれていた心を急速に冷めさせる。
上気していた頬からは熱が奪われ、緩んでいた口元が自然と引き締まっていくのを感じた。
「……ちょっと愚痴っていい?」
少し淋しそうに微笑んで聞いてくるサリーナにクエイドは頷いた。ただ、黙って首を立てに振ることしか出来なかった。
「クエイドの事も知らないし、自分の事も分かんないんだ。時々、自分が怖くなる。本当の私はどんな人なんだろうって。」
喧騒の中でも彼女の小さな声はその一文字一文字すら聞き分けられる程、クエイドの心に響いてくる。
「私って、臆病なんだ。誰かと話しててもどうしても心の底から笑えない。相手が心の中に入ってくるの、怖いんだ。何か、その人が思っている私と本当の私があまりに違って、失望されるんじゃないかって。」
「……でも、俺と話してる時は、俺はそんな風には感じない。」
サリーナは短く「うん」と呟いて、肯定した。そして、沈黙。
周りの喧騒がどんどん遠くへいくように妙な孤独感に苛まれていく。瞳を閉じて、開いたら目の前の彼女はいなくなるんじゃないかって不安が襲ってきた。だから、瞬きも出来なかった。彼女の声が聞こえるまで、瞳が彼女を捉えて放さなかった。
「……クエイドが私に似ているから、かな?」
「似ている……俺達が?」
思わず反芻してしまった。一番対照的だと思っていたから予想もしていない言葉だった。
サリーナの視線がクエイドから外れた。その意味を考えるよりも先に彼女の口が動く。
「クエイドも、私以外の人と話す時、なんかぎこちないっていうか……冷たい感じでしょ?似ていない?私達……」
頷く事も、首を振る事も出来なかった。
その通りだった。言われてみれば似ている。
他人を拒絶する所。人に知られたくない分からない自分を抱えている所。臆病な所。
そして……たった一人だけ、心の中に入ってくるのを許す所。
サリーナはくすっと微笑を見せる。
「クエイドの事、何か、初めて会った人とは思えないんだ。だから、こんな話しちゃうのかも。こんな事話したの、クエイドが初めてなんだよ?」
彼女の孤独の片鱗が見えた気がした。
彼女に笑顔の仮面を付けさせた孤独が、形を変えてまた彼女に降りかかっているように思えた。
彼女に家族いたなら、家族と呼べる人がいたなら、彼女は彼女本来の明朗な人でいられたのではないのか?普通の少女でいられたんじゃないのか?
「もしかしたら、私の無くしちゃった過去でクエイドと知り合ってたのかもね。あ、でも、それならクエイドは私の事知ってるから、変かな?」
彼女の冗談めかして笑うその声すら、助けを乞う声に聞こえた。
誰に助けを乞う声なのか?神なのか、彼女の愛している、今は忘れている本当の母親なのか、父親なのか、そして……俺なのか?
ただ、俺は救いたいと思った。どうしようもなく、彼女を救いたいと思った。
だから……口走ってしまった。
「俺は……サリーナを知っていた。」
彼女の微笑みが消えていくのがまるでスローモーションのように見えた。
禁断の扉に手を掛けてしまった事には気付いている。それでも、今のクエイドにはその握った扉のノブを力強く回す事しか選択肢はなかった。
決断した。
俺はサリーナの側でサリーナを愛す。彼女を守り抜く。
だから、彼女の真意を知る必要があった。
「俺はサリーナの過去を知っている。あんたの無くした過去は俺が全て持っている。」
クエイドの瞳に揺ぎ無い決意があると分かっていても、サリーナは混乱していた。
「……冗談だよね、クエイド……?」
彼女の震える声に罪悪感を覚えない訳じゃない。それでも……クエイドは扉を閉めようとはもう思えない。
たとえ、『あいつ』の掌で踊る事になったとしても、カイラスの手駒としてイカサマゲームを演じる事になったとしても……
そう。今、自分の役割を決めた。
俺は……サリーナを守る騎士になる。彼女を守る唯一人の騎士に。
それが俺の役割だ。
彼女と繋いだ手をもう二度と離したくない。彼女が俺に力をくれる。俺が彼女を支える。
「サリーナが今の生活を選ぶんなら、俺は……必要ないよ。でも、サリーナが今の生活が苦痛で、自分の過去を知りたいのなら……俺はサリーナを守る。ずっと側にいる。」
喧騒の中なのに、なにか神聖な誓いを立てているようだった。
「……ひどいよ。」
彼女の震える声で彼女が泣き出しそうな事が分かった。それでも、クエイドは尚もサリーナを見続けた。
「……最初から選択肢なんてないよ……」
サリーナの瞳から涙が零れた。
何度、サリーナを泣かせただろう。俺はいつも、彼女を悲しませる。泣かせてしまう。
「……ごめん。」
「私、クエイドの事、まだ全然知ってないんだよ?」
「……ごめん。」
「過去を知ってしまったら、今の私は私じゃなくなるかもしれないんだよ?」
「……ごめん。」
「……勝手すぎるよ。」
「……ごめん。」
謝るしか出来なかった。馬鹿みたいに謝り続けた。
それしか、贖罪の方法を知らなかったから無心で謝り続けた。
彼女の次の言葉は今までより一呼吸置いてからだった。
「……でも……好きなの。クエイドが好きなの。どうしようもないくらいにクエイドの事が好きなんだよ。……クエイドの側に……いたいよ。」
彼女の震える声に涙腺が緩んだ。彼女の頬を伝う涙と一緒で、俺の瞳からも涙が溢れ出してきていた。
涙で言葉が詰まって、上手く声が出せそうもなかった。
それでも言わなければならなかった。だから、声を振り絞った。
「……サリーナ……」
それを最初に口に出した時はもう二度と彼女には会わないと覚悟した。
それが自分を苦しませる事はよく分かっていた。
「……今まで本当にありがとう……」
どうしようもない暗闇で足掻き続けた。
『あいつ』の魔手に捕まりそうに何度もなった。捕まった事もあった。
「……俺には君との想い出だけで十分だから……」
その想い出がいつも寸前で助けてくれた。
完全に闇に囚われずにすんだ。サリーナがいつも助けてくれた。
「……サリーナは自分の幸せを掴んでくれ……」
二人じゃなきゃ幸せは掴めないんだと、サリーナと再び出会って思い知った。
俺は自分が幸せになれるなんて信じてなかった。幸せになんてなるべきじゃないと思い込んでいた。
でも……サリーナを幸せにしたいと本気で願った。それが矛盾してるって事、ようやく分かったんだ。
「……さよなら……」
他の誰かじゃなく、自分の手でサリーナを幸せにしたかったんだ。
だから、悲しみに別れを告げて、また最初から始めようよ。
そして、これだけは今も、これからも変わらない。
絶対なんて、本当はないのかもしれないけど、今なら信じられるような気がするんだ。
だから、もう一度君に告げるよ。大切な君へ。
終わりを告げたこの言葉がまた始まりを告げる事になるなんて思わなかった。
あと一言……この言葉だけを伝えるだけだった。
だけど、その言葉はサリーナに告げられる事はなかった。
突然、轟音と共に一斉に窓ガラスが砕け散り、悲鳴が木霊した。
(Continue)
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